腹式呼吸とは|意味・読み方・英語と仕組み

腹式呼吸(ふくしきこきゅう)とは、横隔膜を下げることで肺に空気を取り込み、そのときにお腹が膨らむ呼吸のことです。胸や肩を持ち上げずに、みぞおちからへその周りが前・横・後ろへふくらむのが見た目の特徴です。歌・ボイトレ・吹奏楽のほか、リラックス法やリハビリの呼吸訓練でも使われます。

腹式呼吸の意味と定義をわかりやすく

簡単にいうと、腹式呼吸とは「お腹が動く呼吸」です。わかりやすく定義すると、次のように整理できます。

定義
横隔膜の上下運動を主に使って行う呼吸。吸うとお腹が膨らみ、吐くとお腹がもとに戻る
読み方
ふくしきこきゅう
別名・別の言い方
横隔膜呼吸。お腹が動くことから「お腹の呼吸」と言われることもあります
英語
diaphragmatic breathing(横隔膜呼吸)、abdominal breathing、belly breathing

「腹式呼吸って何?」と聞かれたら、「横隔膜を使って深く吸う呼吸」と答えるのがいちばん正確です。お腹はあくまで、横隔膜が動いた結果としてふくらむ場所です。

仕組み・メカニズム|横隔膜の動きで肺がふくらむ原理

横隔膜は、胸(肺や心臓が入っている胸腔)とお腹(胃や腸が入っている腹腔)を仕切っている、ドーム状の筋肉です。腹式呼吸の原理はこの横隔膜の動きにあります。

  1. 吸うとき: 横隔膜が縮んで下がり、ドームが平らに近づく。胸腔が縦に広がって肺がふくらみ、空気が入る
  2. 下がった横隔膜に押されて、胃や腸などの内臓が前・横・後ろへ移動する。これがお腹が膨らむ理由
  3. 吐くとき: 横隔膜がゆるんでドームの形に戻り、肺から空気が出ていく。お腹は内臓が戻る分だけへこむ
吸うと横隔膜が下がり、吐くと上がる 吸うとき 吐くとき 肺 横隔膜が下がる お腹がふくらむ 肺 横隔膜が上がる お腹がもとに戻る
横隔膜が縮んで下がると肺に空気が入り、押された内臓の分だけお腹がふくらむ

空気はどこに入る?「腹式呼吸は嘘」「存在しない」と言われる理由

腹式呼吸でも、空気が入るのは肺だけです。お腹に空気が入るわけではありません。そのため「腹式呼吸は嘘」「腹式呼吸なんて存在しない」という意見を見かけることがあります。これは名前の付け方への指摘で、「お腹が動く呼吸」という意味で理解すれば矛盾はありません。

また、肺で酸素と二酸化炭素を交換すること全体を外呼吸といいますが、腹式呼吸・胸式呼吸はその外呼吸のうち「肺をどう広げるか」という換気の方法の違いです。安静にしているときの呼吸では、誰でも横隔膜が主役として働いています。つまり腹式呼吸は特別な技というより、横隔膜の動きを意識して大きく・ゆっくり行えるようにした呼吸だと考えるとわかりやすいでしょう。横隔膜そのものの使い方は歌うときの横隔膜の使い方でも詳しく解説しています。

腹式呼吸と胸式呼吸の違い|どっちがいい?

腹式呼吸と対になるのが胸式呼吸です。腹式呼吸の対義語・反対の呼吸として紹介されることが多く、呼吸の種類を2種類に分けるときの「もう1つ」がこの胸式呼吸です。どちらも肺に空気を入れる肺呼吸で、違いは肺を広げるときに主に動かす場所にあります。

腹式呼吸vs胸式呼吸|違いを比較

項目腹式呼吸胸式呼吸
動く場所お腹・脇腹・背中の下のほう胸・肋骨の周り(胸が膨らむ)
主な筋肉横隔膜肋骨の間にある外肋間筋など
呼吸の深さ深く、ゆっくりになりやすい浅く、速くなりやすい
起きやすい場面寝ているとき、リラックスしているとき運動中、緊張しているとき

胸式呼吸(胸呼吸とも言います)では、肋骨を持ち上げて胸を前と横に広げます。深く吸おうとして肩まで上がるようになると、首や喉まわりに力が入りやすくなります。一方の腹式呼吸は横隔膜が下へ動くので、肩や胸は大きく動きません。

腹式呼吸はお腹、胸式呼吸は胸が広がる 腹式呼吸 胸式呼吸 動くのは お腹が前・横へ 主役の筋肉 横隔膜 動くのは 胸が前・上へ 主役の筋肉 外肋間筋
腹式呼吸は横隔膜が下がってお腹が、胸式呼吸は肋骨が持ち上がって胸が広がる

どっちがいい?場面で使い分けるのが正解

「腹式呼吸と胸式呼吸、どっちがいいのか」という疑問への答えは、目的によって変わるです。歌・発声・リラックスが目的なら、深くゆっくり吸える腹式呼吸が向いています。一方で、ランニングなど激しい運動中は胸式呼吸も総動員して素早く吸うのが自然です。ピラティスのように、お腹を締めたまま胸式呼吸を使う運動もあります。胸式呼吸は悪い呼吸ではなく、腹式呼吸と役割が違うと考えてください。

実際の歌では、お腹だけを膨らませるより、お腹・脇腹・背中・肋骨の下のほうまでぐるりと広げる「胸腹式呼吸」が使われます。ヨガでは両方を組み合わせた呼吸を完全呼吸(全呼吸)と呼ぶこともあります。

普段はどっちが多い?男女差・年齢による違い

普段の呼吸では、多くの人が腹式と胸式を混ぜて使っています。一般に男性は腹式呼吸寄り、女性は胸式呼吸寄りになりやすいと言われます。妊娠中はお腹が大きくなって横隔膜が下がりにくくなるため、胸式呼吸の割合が増えるのが理由の一つとされています。ただし男女差には個人差が大きく、女性でも練習すれば問題なく腹式呼吸ができます。

年齢による違いもあります。赤ちゃんは腹式呼吸が中心で、成長するにつれて胸式呼吸の割合が増えていきます(詳しくは後半の「子供・赤ちゃんの腹式呼吸」で解説)。大人になってデスクワークやストレスが増えると、普段の呼吸が浅い胸式呼吸に偏りがちです。

肺呼吸・逆腹式呼吸・鼻呼吸との違い

  • 腹式呼吸と肺呼吸の違い: 肺呼吸は「肺で呼吸すること」全体を指す言葉(えら呼吸・皮膚呼吸に対する分類)です。腹式呼吸も胸式呼吸も肺呼吸の一種なので、どちらかを選ぶ関係ではありません
  • 逆腹式呼吸との違い: 逆腹式呼吸は、吸うときにお腹をへこませ、吐くときに膨らませる呼吸です。腹式呼吸の逆の動きで、気功や武術で使われます。歌や日常でどっちを使うかと聞かれれば、まずは通常の腹式呼吸です
  • 腹式呼吸と鼻呼吸の違い: 鼻呼吸・口呼吸は「空気の通り道」の話で、腹式・胸式は「体のどこを動かすか」の話です。鼻呼吸をしながら腹式呼吸をすることも、口呼吸で腹式呼吸をすることもできます

腹式呼吸のやり方|寝ながら・座って・立ったままの手順

腹式呼吸のやり方は、いちばん簡単な仰向けから始めて、座る→立つの順に姿勢を変えていくのが近道です。寝た姿勢は重力で胸が持ち上がりにくく、自然とお腹が動くため、初めての人でも感覚をつかみやすいからです。どの姿勢でも正しいやり方のポイントは同じで、「吐き切ってから、お腹をゆるめて吸う」ことです。

ステップ1: 寝ながら(仰向け)で感覚をつかむ

  1. 仰向けに横になり、膝を曲げて足の裏を床につける(膝を曲げると腰が反らず、お腹がゆるみやすい)
  2. 手の形・指の形に決まりはなく、片手を胸、もう片方の手をおへその上あたりに置くだけ。指は軽く開いて添える
  3. 口から細く長く息を吐き切る。お腹が自然にへこんでいくのを手で感じる
  4. お腹の力をふっとゆるめると、勝手に空気が入ってくる。鼻からゆっくり吸い、お腹の手が持ち上がり、胸の手はほとんど動かない状態を目指す
  5. これを5〜10回くり返す

寝たまま行うやり方は、布団に横になるだけでできるので、寝る前のリラックスにもそのまま使えます。臥位(寝た姿勢)でお腹が動かない人は、お腹の上に本を1冊のせて、吸うと本が上がり、吐くと下がるのを目で確認してみてください。

ステップ2: 座ってできるようにする

座ったまま行う腹式呼吸は、椅子に浅めに座り、背もたれに寄りかからずに骨盤を立てて行います。前かがみや猫背のままだとお腹が圧迫されて膨らみにくくなります。座位でも手を胸とお腹に置き、胸の手が動かないかを確認しましょう。デスクワークの合間に座りながらできるので、日常の練習に取り入れやすい姿勢です。

ステップ3: 立ったままでもできるようにする

立ちながらの腹式呼吸は、足を肩幅に開き、膝を軽くゆるめて立ちます。歌うときはこの姿勢が基本になります。立つとできないと感じる人は、壁に背中をつけて立つと、肩が上がったり胸を張りすぎたりするのを防げます。慣れてきたら、歩きながらでもお腹がゆるんで吸えるかを試してみましょう。

寝る→座る→立つの順に姿勢を変えて練習する ① 寝ながら 感覚をつかむ ② 座って 骨盤を立てる ③ 立ったまま 歌う姿勢へ どの姿勢でも「吐き切る→ゆるめて吸う」
重力で胸が上がりにくい仰向けから始め、座位・立位へと難しい姿勢に移していく

何秒吸って何秒吐く?秒数の目安

最初の秒数の目安は、4秒で吸って、8秒で吐くくらいです。吐く時間を吸う時間の2倍ほどにすると、ゆっくりした呼吸になりやすくなります。慣れてきたら10秒、20秒、30秒と吐く時間を延ばしていきます。1回の練習は1分〜数分で十分です。苦しくなるまで秒数を延ばす必要はありません。

鼻から吸う?口から吸う?どこから吸うかのコツ

練習のときは鼻から吸って口から吐くのが基本です。鼻で吸うと空気が温められ、ほこりが取り除かれ、ゆっくり吸いやすくなります。これが鼻から吸うことが勧められる理由です。リラックス目的なら鼻から吸って鼻から吐く(鼻だけで呼吸する)方法もあります。

ただし歌の場合は、曲の途中で短い時間に吸う必要があるため、口から吸う・鼻と口の両方から吸う場面も多くなります。口から吸ったらダメということはありません。どこから吸っても、お腹がゆるんで横隔膜が下がっていれば腹式呼吸です。歌での吸い方は後の「歌での腹式呼吸」の章で解説します。

腹式呼吸の効果・メリットとデメリット

腹式呼吸の効果は、大きく「声・歌」「体」「心」の3つに分けられます。腹式呼吸は何がいいのか、なぜいいのか、なんのためにするのか。目的をはっきりさせておくと練習の仕方も決まります。ここではメリットと、あまり語られないデメリットの両方を整理します。

腹式呼吸のメリット・利点

分野主なメリット理由
声・歌息が長く続く、声が安定する、声量が出しやすい一度に多くの空気を吸え、吐く量も調整しやすい
声・歌喉や肩に力が入りにくい胸や肩を持ち上げないので首まわりが固まらない
心リラックスしやすい、寝る前に落ち着くゆっくり長く吐く呼吸は副交感神経が働きやすいとされる
体体幹のインナーマッスルを使う吐くときに腹横筋などお腹の深い筋肉が働く

声や歌への効果は、腹式呼吸そのものよりも「吸った息を少しずつ吐く」コントロールから生まれます。腹式呼吸をすると声が変わる・声が大きくなると言われるのは、息の量と流れが安定するからです。一方で、腹式呼吸をしただけで音程やリズムがよくなるわけではありません。

腹式呼吸の効果は声・体・心の3つに分かれる 声・歌 息が長く続く 声が安定する 喉が力まない 体 深い筋肉を使う 姿勢を意識する 呼吸が深くなる 心 落ち着く 寝つきを助ける 緊張をほぐす
歌の上達に直接つながるのは「声・歌」の効果で、体と心の効果は個人差が大きい

自律神経・リラックス・睡眠への効果

腹式呼吸がリラックスに役立つ理由は、呼吸がゆっくりになり、吐く時間が長くなることにあります。自律神経には、体を活動モードにする交感神経と、休息モードにする副交感神経があり、ゆっくり長く吐く呼吸は副交感神経が優位になりやすいとされています。「自律神経が整う」と表現されるのはこのためです。緊張する本番前や、寝る前の安眠のための習慣として取り入れる人も多くいます。

ただし、効果の感じ方には個人差があり、腹式呼吸で人生が変わるといった大きな効果を期待しすぎるのは禁物です。不眠や強い不安が続く場合は、呼吸法だけで解決しようとせず医療機関に相談してください。疲労回復や血流改善といった効果も語られますが、はっきりした根拠がそろっているとは言えません。

デメリットと「やりすぎ」に注意

腹式呼吸のデメリットは、やり方を間違えたときに出てきます。

  • やりすぎると頭がクラクラする: 深い呼吸を速いペースで何度もくり返すと、息を吐きすぎて過呼吸に近い状態になります(詳しくは「不調」の章)
  • お腹に力を入れすぎると喉まで固まる: お腹を固めて押し出すと、かえって声が詰まります
  • 疲れる: 慣れないうちは使っていない筋肉を使うので疲れることがあります。数分で区切りましょう
  • 常に腹式呼吸である必要はない: 運動中は胸式呼吸も必要です。一日中お腹だけで呼吸しようとすると、かえって不自然になります

効果が出るのはいつからか、という点は目的によって違います。リラックス目的ならその場で落ち着きを感じる人もいますが、歌で使えるようになるには毎日の練習で数週間〜数か月かかるのが一般的です。

歌での腹式呼吸|歌い方・発声への活かし方

歌で腹式呼吸が大切だと言われるのは、歌は「吸った息を、声にしながら少しずつ吐いていく」作業だからです。歌う時の腹式呼吸とは、深く吸うことだけでなく、吐く息の量と勢いをお腹まわりでコントロールすることまでを含みます。歌のメリットは、息が長く続き、声が揺れにくく、喉に頼らずに声量を出せることです。

歌う時の腹式呼吸は「吸う→支える→声にする」の流れ

  1. 吸う: お腹・脇腹・背中をゆるめて、横隔膜を下げて吸う。肩は上げない
  2. 支える: 吸ったあと、お腹や脇腹が一気にしぼまないよう、膨らんだ状態をゆるやかに保つ。これが「息の支え」と呼ばれる感覚です
  3. 声にする: 支えを保ったまま、必要な分だけ息を声帯に送って発声する。フレーズの終わりに向けてお腹が少しずつ戻っていく
歌の腹式呼吸は吸う・支える・声にするの3段階 吸う お腹をゆるめる 支える 膨らみを保つ 声にする 少しずつ吐く お腹で押し出さず、しぼむ速さをゆっくりにする
歌では吸った後の「支える」が要で、息を押し出すのではなく、しぼむ速さを抑えて声にする

よくある間違いは、歌いながらお腹に思い切り力を入れて息を押し出すことです。これをすると息が一度に出すぎて、声が荒れたり喉が締まったりします。支えは「押す力」ではなく「しぼむのを遅らせる力」だと考えてください。ブレスのタイミングや位置は歌のブレス(息継ぎ)で詳しく解説しています。

歌での吸い方|口から吸う?鼻から吸う?

歌では、前奏や間奏のようにゆとりがあるときは鼻から吸い、フレーズの間の短いブレスは口から(または鼻と口の両方から)素早く吸うのが一般的です。歌で口から吸うと喉が乾きやすいので、口の形を少し開けたまま、「あくびの始まり」のように喉の奥を広げて吸うとよいでしょう。吸う時に「スーッ」と音がするときは、喉や口のどこかが狭くなっているサインです。

高音・低音・声量・小さい声への活かし方

  • 高音・高い声: 高音で息を強く押すと喉が締まりがちです。支えを保ったまま息の量を増やしすぎないことが、ミックスボイスなど高い声の安定につながります。詳しくはミックスボイスとはで解説しています
  • 低音・低い声: 低い声はお腹をゆるめたまま、息をたっぷり、ゆっくり流すと響きが出やすくなります
  • 声量: 声量は息の勢いだけでなく、共鳴(喉を開く・鼻腔共鳴など)と組み合わせて生まれます。腹式呼吸で息が安定すると、響きを作る余裕が生まれます
  • 小さい声: ささやくような小さい声ほど息のコントロールが難しくなります。支えが抜けると音程がふらつくので、小さい声でもお腹の膨らみを保ちます
  • ビブラート: 息の流れが安定していることがビブラートの前提です。腹式呼吸でロングトーンが安定してから練習すると身につきやすくなります

カラオケで腹式呼吸を使うコツ

カラオケでは、立って歌うだけでも腹式呼吸がしやすくなります。座って歌う場合は、背もたれから離れて浅く座り、お腹が圧迫されないようにしましょう。息が続かない・声が安定しないと感じる曲は、ブレスの位置を歌詞カードに書き込んで、テンポに遅れない範囲で早めに吸うのがコツです。カラオケ練習の最初の1曲の前に、1〜2分ほど腹式呼吸で声出しをしておくと、歌い出しから声が安定しやすくなります。

歌のための腹式呼吸トレーニング|練習メニューと期間

歌のための腹式呼吸の練習法は、「吸う」「長く吐く」「声にする」の順に難しくしていくのが基本です。ボイトレ教室でも、呼吸だけのブレストレーニングから始めて、声を出す練習へとつなげていく方法がよく使われます。ここでは自宅でできる練習メニューを、簡単な順に紹介します。

基本のトレーニング方法5つ

練習やり方ねらい
ロングブレス4秒で吸い、「スー」と歯の間から細く長く吐く。20〜30秒を目標に吐く息を一定に保つ
ドッグブレス犬が息をするように「ハッハッハッ」と短く吐く。お腹がポンポン動くお腹と息の連動を覚える
ストロー呼吸ストローをくわえて細く長く吐く。ストローで吸う練習も効果的吐く量を一定にする
ロングトーン「あー」を同じ高さ・同じ大きさで伸ばす息と声をつなぐ
リップロール唇をブルブル震わせながら音階を上下する一定の息で声を出す

ロングトーンは歌のロングトーン、リップロールはリップロールのやり方でそれぞれ詳しく解説しています。発声のトレーニングに移ったら、息の支えが途中で抜けていないかを意識しましょう。

ペットボトルを使ったトレーニング

ペットボトルは、自宅にあるもので腹式呼吸を鍛えられる手軽な道具です。代表的なやり方は2つあります。

  • 空のペットボトルを吸ってへこませる: 空のペットボトルの口をくわえ、息を吸ってボトルをへこませ、そのまま数秒キープしてから口を離す。強く吸う力が必要なので、吸う筋肉のトレーニングになります
  • 水を入れたペットボトルにストローで吹く: ペットボトルに水を数センチ入れ、ストローで「ぶくぶく」と一定の泡が続くように吹く。慣れたらストローを通して「うー」と声を出す。息の量を一定に保つ練習になり、喉への負担も少ない方法です

ペットボトルのトレーニングは効果を実感しやすい一方で、強く吸いすぎるとクラクラすることがあります。1回数セットにとどめ、無理はしないでください。

1日何回・何分やる?頻度の目安

1日どのくらい練習すればいいかの目安は、1回5〜10分を1日1〜3回、毎日続けることです。1日何分という合計でいえば、10〜30分ほどになります。1時間まとめてやるより、短い時間を毎日続けたほうが身につきやすいです。1回の練習で呼吸をくり返す回数は、ロングブレスなら5〜10回程度で十分です。毎日続けると、1週間ほどで仰向けでの感覚がつかめてくる人が多いです。

腹式呼吸を歌で使えるまでの練習の段階 仰向けで感覚 立って長く吐く 声と合わせる 最初の1週間 2週目〜1か月 1か月〜数か月 期間は目安。できたら次の段階へ進む
仰向けで感覚をつかみ、立って長く吐けるようになってから、声や歌と組み合わせる

いつまで続ける?マスターまでの期間

腹式呼吸のマスターまでの期間は、人によって大きく違います。仰向けでお腹が動くようになるのは数日〜1週間、立って歌いながら腹式呼吸を保てるようになるまでは数か月かかることもあります。「いつまでやれば終わり」というものではなく、歌うときに意識しなくてもできるようになれば、身についたと考えてよいでしょう。練習曲は、テンポがゆっくりでフレーズが長めのバラードが向いています。1曲の中でブレスの位置を決めて、毎回同じ場所で吸う練習をしてみてください。やり方を目で確かめたいときは、ボイトレ講師の動画を参考にするのもおすすめです。

腹式呼吸ができているか確認する方法

「腹式呼吸ができてるかわからない」「自分では腹式呼吸ができているかわからない」という悩みはとても多いです。お腹の中は見えないので、膨らむ場所と、動かないはずの場所を手と目で確認するのがいちばん確実な見分け方です。

どこが膨らむ?お腹膨らむのは前だけではない

腹式呼吸でお腹が膨らむのは、おへその上から下にかけて、みぞおちの下あたりです。ただし膨らむのは前だけではありません。横隔膜は胴体をぐるりと囲むようについているので、上手な人は脇腹や背中の下のほうまで360度に広がります。肋骨も下のほうが横に広がるように動きます。吸うときは前・横・後ろの360度をぐるりと広げる意識を持つのがコツです。腹式呼吸で膨らむ場所をイラスト(図解)で表すと、次のようになります。

吸ったときに膨らむ場所と動かない場所 肩・胸 ほとんど動かない 下の肋骨・脇腹 横に広がる おへその上下 前に膨らむ 腰・背中の下 うしろに広がる
腹式呼吸では肩や胸はほとんど動かず、お腹の前・脇腹・背中へ広がる

昔から「丹田(おへその下あたり)に息を入れる」と言われることがありますが、これも空気が入るわけではなく、へその下まで力みなくゆるんでいる状態をイメージさせる表現です。お腹が膨らまない人は、この後の「できない原因」の章をチェックしてください。

できているか確認するチェック方法

  1. 手を当てる: 片手を胸、片手をお腹に当てて吸う。お腹の手だけが前に動けばOK
  2. 脇腹をつかむ: 両手の指で左右の脇腹をつかむように当てて吸う。指が外に押し広げられればOK
  3. 背中を確かめる: 椅子に座って上半身を前に倒し、腰に手を当てて吸う。前かがみになるとお腹が膨らみにくいぶん背中が膨らむので、背中を膨らませる感覚がわかります
  4. 鏡で肩を見る: 鏡の前で吸い、肩が上がる・首がすくむようなら胸式呼吸になっています

「できてない」と判断するサイン

  • 吸うと肩が上がる、鎖骨の周りが持ち上がる
  • 吸うとお腹がへこむ(逆の動きになっている)
  • 吸うたびに「スーッ」と大きな音がする、苦しい
  • お腹を膨らませようとして、お腹に力を入れて前に突き出している

最後のサインは見落としやすい点です。お腹の膨らみは「力を入れて出す」ものではなく、「ゆるめると勝手に出る」ものです。わからないときは、一度大きくため息をついて吐き切り、力を抜いた瞬間に入ってくる息の感覚を確かめてみてください。よくわからないまま続けるより、ボイトレ教室の体験レッスンで一度見てもらうのも近道です。

腹式呼吸ができない原因と対処法

腹式呼吸ができない・難しいと感じる原因の多くは、「吸おうとがんばりすぎること」と「姿勢」です。腹式呼吸が苦手な人ほど、たくさん吸おうとして胸や肩に力が入り、結果として浅い胸式呼吸になっています。原因ごとに対処法を見ていきましょう。

できない原因ごとの対処法 吸う前に吐いていない 先に吐き切る お腹を固めている お腹をゆるめる 猫背・反り腰 骨盤を立てる 立つと力む 仰向けからやり直す
できない原因の多くは力みと姿勢で、対処法は「吐き切る」「ゆるめる」「姿勢を直す」に集約される

原因1: 吐く前に吸おうとしている

肺に空気が残ったまま吸おうとしても、入る余地がないので苦しくなります。腹式呼吸をすると苦しい・息苦しい・なぜか吸えないという人は、まずしっかり吐き切ってから吸ってください。吐き切ってお腹の力をゆるめれば、息は自然に入ってきます。全然吸えないと感じるときほど、吸うことより吐くことに意識を向けるのがコツです。

原因2: お腹に力を入れている・へこませている

腹式呼吸という名前から、お腹に力を入れるものだと思い込んでいる人は少なくありません。しかし吸うときにお腹を固めると、横隔膜が下がれず膨らみません。反対に、ダイエットのために普段からお腹をへこませる癖がある人も、吸うときにお腹がゆるまずに苦戦しがちです。吸うときはお腹をへこませない、吐くときは自然にへこむ、が正しい力の入れ方です。歌の支えで使う腹圧も、吸う瞬間ではなく吐く途中で使います。

原因3: 姿勢(猫背・反り腰)

猫背でお腹が折れ曲がっていると、内臓の逃げ場がなくお腹が膨らみません。反り腰で胸を張りすぎると、今度は肋骨が上がって胸式呼吸になります。頭のてっぺんを上から引っ張られるように立ち、骨盤をまっすぐ立てた姿勢に直してから練習しましょう。

原因4: 立つとできない・逆になる

仰向けではできるのに、立つとできないのはよくあることです。立つと姿勢を保つためにお腹や腰の筋肉が働き、緊張しやすいからです。また、吸うとお腹がへこんで吐くと膨らむ「逆」の動きになってしまう人もいます。どちらの場合も、一度仰向けに戻ってお腹の動きを確認し、座る→立つの順にやり直してください。喉に力が入る人は、首や肩を回してほぐしてから始めると改善しやすくなります。

そのほかの原因

  • 鼻から吸えない: 鼻炎などで鼻が詰まっている場合は、口から吸っても構いません。鼻の不調が続く場合は耳鼻科で相談しましょう
  • 呼吸が浅い・続かない: 緊張やストレスで呼吸が浅くなっている可能性があります。吐く時間を長くする練習から始めてみてください
  • 以前はできたのにできなくなった: 疲れや体調、姿勢の変化で一時的にできなくなることはあります。焦らず仰向けからやり直しましょう

元から呼吸が浅いタイプの人や、下手だと感じている人でも、段階を踏めば腹式呼吸はできるようになります。辛いと感じたら休み、無理に続けないことも大切です。

腹式呼吸で使う筋肉と鍛え方

腹式呼吸で使う筋肉は、吸うときの主役である横隔膜と、吐くときに働くお腹の深い筋肉(インナーマッスル)です。必要な筋肉を知っておくと、どこの筋肉を意識すればよいかがわかり、筋トレやストレッチの選び方も変わります。

吸うとき・吐くときに使う筋肉

場面筋肉部位と働き
吸う横隔膜胸とお腹の境目。縮んで下がり肺を広げる
吸う外肋間筋肋骨の間。肋骨を持ち上げ横に広げる
吐く腹横筋お腹を腹巻きのように包む最も深い腹筋。お腹を締めて息を押し出す
吐く内腹斜筋・外腹斜筋・腹直筋脇腹や前面の腹筋。強く吐くときに加わる
支える骨盤底筋骨盤の底。横隔膜が下がったときに内臓を下から受け止める

お腹の中は、天井が横隔膜、周りの壁が腹横筋、底が骨盤底筋に囲まれた筒のような空間です。この筒の中の圧力が腹圧で、歌の「支え」や体幹の安定はこの腹圧のコントロールから生まれます。腹筋が割れていなくても腹式呼吸はできます。大切なのは表面の腹直筋より、深いところにある腹横筋や横隔膜を思いどおりに動かせることです。

お腹は横隔膜・腹横筋・骨盤底筋に囲まれた筒 腹圧 天井: 横隔膜 壁: 腹横筋 壁: 腹横筋 底: 骨盤底筋
横隔膜が下がると筒の中の圧力(腹圧)が高まり、周りの筋肉がそれを受け止めて息と姿勢を支える

横隔膜を鍛える方法

横隔膜は自分で直接見たり触ったりできませんが、呼吸の練習で鍛えることができます。前の章のロングブレスやドッグブレス、ペットボトルを吸う練習がそのまま横隔膜を鍛えるトレーニングです。吸うときに少し抵抗をかける呼吸トレーニング器具を使う方法もあります(次章のグッズで紹介)。横隔膜の働きについては横隔膜の使い方・鍛え方も参考にしてください。

腹横筋・体幹を鍛える筋トレ

  • ドローイン: 仰向けで膝を立て、息を吐きながらお腹をへこませ、へこませたまま浅い呼吸を10〜30秒続ける。腹横筋を鍛える基本の体幹トレーニングです
  • プランク: うつ伏せで肘とつま先で体を支え、一直線の姿勢を保つ。息を止めずに腹式呼吸を続けるのがポイントです
  • ボールを使う: 仰向けで膝の間にボールを挟み、軽く押しながら吐く。骨盤底筋やお腹の深い筋肉を意識しやすくなります

腹筋を鍛えるというと上体起こしを思い浮かべがちですが、腹式呼吸のための筋トレは、ダンベルのような重い負荷よりも「呼吸を止めずに姿勢を保つ」種目のほうが向いています。股関節の奥にある腸腰筋は横隔膜の付け根の近くから始まる筋肉で、ここが固いと腰が反りやすくなるため、ストレッチでほぐしておくと呼吸がしやすくなります。

筋肉痛になるのは正常?

腹式呼吸の練習を始めたばかりの頃に、お腹や脇腹、背中が筋肉痛になることがあります。普段使っていない筋肉を使った証拠なので、軽い筋肉痛なら心配はいりません。痛みが強い、数日たっても引かない場合は練習を休み、必要なら医療機関に相談してください。

腹式呼吸のトレーニンググッズ・器具・アプリ

腹式呼吸は道具なしでも練習できますが、グッズを使うと「吐く息の量」や「吸う力」が目に見えるので、感覚をつかみやすくなります。ここでは練習に使える道具を、手軽なものから順に紹介します。商品の価格や仕様は変わるため、購入前に販売元の公式サイトで最新情報を確認してください。

手軽に使えるおすすめグッズ

グッズ使い方入手先の例
吹き戻し(ピロピロ笛)吹くと巻いた紙が伸びる笛。伸ばしたまま数秒キープすると、一定の息を吐く練習になる100均、おもちゃ売り場
ストロー細く長く吐く・強く吸う練習。水を入れたコップやペットボトルと組み合わせる100均、家にあるもの
風船ゆっくり一定の息で膨らませる。お腹から吐く感覚がつかみやすい100均
ペットボトル空のボトルを吸ってへこませる、水の入ったボトルにストローで吹く家にあるもの

ピロピロ笛は、口の周りや呼吸の力を鍛える道具としても使われています。長く伸びるロングタイプ(ロングピロピロなどの名前で売られているもの)は、伸ばし切るのにより長い息が必要です。子供と一緒に遊びながら練習できるのもピロピロ笛の効果の一つです。

呼吸トレーニング器具・マシン

本格的に鍛えたい人向けに、息を吸うときや吐くときに抵抗をかける呼吸トレーニング器具もあります。マウスピースをくわえて呼吸すると、弁やバネの抵抗で吸うのに力が必要になる仕組みの機械です。代表的な製品にパワーブリーズがあり、スポーツ選手や管楽器奏者のトレーニング器具として使われています。負荷の段階を選べるものが多いので、最初はいちばん軽い負荷から始めましょう。

こうした装置は通販(楽天など)や、ロフトのような雑貨店の健康グッズ売り場で見かけることがあります。ダイエット用として売られている器具もありますが、器具を使っただけで痩せるわけではない点には注意が必要です(ダイエットについては後の章で解説します)。

ベルト・アプリ・本・動画

  • ベルトやゴムバンド: 肋骨の下からお腹の周りに軽く巻き、吸ったときにベルトを押し広げる感覚で練習する。脇腹や背中まで広がっているかがわかりやすいアイテムです
  • アプリ: 呼吸のペース(吸う・止める・吐くの秒数)を音や画面の動きで示してくれるアプリがあります。スマートウォッチの呼吸ガイド機能も同じように使えます
  • 本: ボイトレの本や呼吸法の本には、図解つきの練習メニューが載っているものが多く、体の仕組みを理解するのに役立ちます
  • 動画・画像: ボイトレ講師や理学療法士がユーチューブなどで発信しているやり方動画は、お腹の動きを目で見られるのが利点です

どのグッズも「道具を使うこと」が目的にならないよう、使ったあとは道具なしで同じ呼吸ができるかを確かめてください。

腹式呼吸で痛い・お腹が鳴る・めまいがするときは

腹式呼吸の練習中に、痛みやお腹の音、めまいなど、思わぬ体の変化が起きることがあります。多くは練習のやり方で防げるものですが、強い痛みや、しびれ・動悸が続く場合は練習を中止して医療機関を受診してください。ここでは、よくある不調の原因と対処の目安をまとめます。

めまい・クラクラする・手が痺れる(酸欠ではなく過呼吸)

腹式呼吸をやりすぎて頭がクラクラしたり、めまいがしたり、手が痺れるのは、多くの場合「酸欠」ではなく吐きすぎによる過呼吸に近い状態です。「酸欠になるのでは」と心配する人が多いのですが、実際は逆です。深い呼吸を速いペースで何度もくり返すと、体に必要な二酸化炭素まで吐き出してしまい、血液のバランスが崩れて、めまいや吐き気、手足・口の周りのしびれが起こります。

深呼吸のくり返しでめまいが起きる流れ 深い呼吸を 速くくり返す 二酸化炭素を 吐きすぎる めまい 手のしびれ 対処: ゆっくりに戻し、普通の呼吸で休む
めまいは酸素不足ではなく吐きすぎが原因のことが多く、呼吸のペースを落とせば治まることがほとんど

対処法は、練習をいったんやめて普段の呼吸に戻し、座って休むことです。予防には、1回の練習を数回〜数分で区切り、速さではなくゆっくりさを重視することが大切です。なぜめまいが起きるのかを知っておけば、慌てずに対処できます。症状が治まらない、動悸や頭痛、偏頭痛のような強い頭の痛みを伴う場合は医師に相談してください。

お腹が鳴る・ゴロゴロする・ガスがたまる

腹式呼吸をするとお腹が鳴る、ゴロゴロ・ボコボコ・グルグルと変な音がする、お腹がポコポコ鳴る、というのはよくあることです。横隔膜が上下に大きく動くことで、胃や腸が刺激されて中のガスや内容物が動くためと考えられています。お腹がぐるぐる鳴る、腸が鳴るのは異常ではないことがほとんどです。

ただし、口から勢いよく空気を吸い込むと、空気を飲み込んでしまってゲップが増えたり、お腹にガスがたまったりすることがあります(空気を飲み込みやすい状態は呑気症と呼ばれます)。鼻からゆっくり吸うようにすると防ぎやすくなります。逆に、ゆっくりした腹式呼吸でお腹が動くことが、たまったガスのガス抜きにつながると感じる人もいます。お腹が刺激されて便意や尿意を感じる人もいます。練習すると下痢になる、腹痛が続くといった場合は、呼吸以外の原因も考えられるので医療機関で相談しましょう。

みぞおち・背中・肋骨・脇腹が痛い

痛む場所考えられる原因対処
みぞおち横隔膜や腹筋の使いすぎ、お腹を固めて吸っている力を抜いて回数を減らす
肋骨・脇腹肋骨の間の筋肉の筋肉痛数日休む。ストレッチ
背中・腰反り腰で吸っている、腰に負担骨盤を立てた姿勢に直す
鎖骨・胸胸式呼吸になり首や胸の筋肉が力んでいる肩を下ろし、仰向けでやり直す

胸が痛い、息苦しさを伴う痛みがある場合は、呼吸法とは関係のない病気のこともあります。自己判断で練習を続けず、医療機関を受診してください。「腹式呼吸をすると腰痛い」と感じる人は、反り腰になっていないかを確認しましょう。腰痛がある人は、腹横筋を使う腹式呼吸で腰痛改善を目指すこともありますが、痛みがあるうちは医師や理学療法士の指導を優先しましょう。

あくびが出る・眠くなる・咳が出る・喉が痛い

  • あくびが出る・眠くなる: リラックスして副交感神経が働いているサインと考えられます。寝る前の練習なら、そのまま眠ってしまって問題ありません
  • 咳が出る: 冷たい空気や乾いた空気を深く吸い込むと、気道が刺激されて咳が出ることがあります。鼻から吸う、部屋を加湿するなどで対策しましょう
  • 喉が痛い・練習後に喉枯れる感じがする: 口から強く吸っている、吐くときに喉を締めているのが原因です。喉の力を抜き、声を出す練習はしっかり水分をとりながら行いましょう

いつもと違う異常を感じたときや、疲れが強いときは無理をせず休むことも練習の一部です。

腹式呼吸のダイエット・健康効果は本当?

「腹式呼吸で痩せる」「便秘が治る」といった情報をよく見かけます。芸能人や俳優などの有名人が呼吸を使ったダイエットを紹介して話題になったこともあります。結論からいうと、腹式呼吸だけで脂肪が大きく減ることは期待しにくいものの、姿勢やお腹の深い筋肉を意識するきっかけとしては役に立ちます。ここでは、よく言われる効果を冷静に整理します。

腹式呼吸で痩せるのか?ダイエット効果の正体

呼吸そのものの消費カロリーはごくわずかで、腹式呼吸をしたからといってカロリー消費が大きく増えるわけではありません。内臓脂肪や皮下脂肪を減らす脂肪燃焼には、食事の見直しとウォーキングなどの有酸素運動が欠かせません。

それでも腹式呼吸がダイエットに効果があると言われるのは、次のような理由からです。

  • ウエストが引き締まって見える: 吐くときに腹横筋を使うので、お腹を内側から締める力がつき、ぽっこりお腹が目立ちにくくなることがあります。「腹式呼吸でお腹痩せるのか」という疑問への答えは、この見た目の変化が中心です
  • 姿勢がよくなる: 猫背が直ると、内臓下垂による下腹の出っ張りが目立ちにくくなります
  • 食べすぎを防ぐ: ストレスで食べすぎる人は、呼吸で気持ちを落ち着けることが間食の予防につながる場合があります

つまり、なぜ痩せると言われるのかといえば「代謝が大きく上がるから」ではなく「筋肉と姿勢と生活習慣」によるものです。胸式呼吸と比べてどちらが痩せるかという比較も、呼吸法単体での差は小さいと考えてください。寝る前に腹式呼吸をすれば痩せるという情報もありますが、期待できるのはリラックスして眠りやすくなる効果までです。反対に、腹式呼吸をすると太るという根拠もありません。

ダイエットに取り入れるやり方

ダイエットに取り入れるなら、前の章で紹介したドローインのように「お腹をへこませたまま呼吸を続ける」練習が向いています。ダイエットグッズとして売られている呼吸器具も、使い方は基本的に同じです。ただし、ドローインは歌の腹式呼吸(吸うときにお腹をゆるめる)とは目的が違う練習です。歌の練習をしている人は、2つを混同しないように注意してください。

便秘・血圧・冷え性など健康効果の見方

よく言われる効果考えられる理由注意点
便秘解消・便秘改善・便通横隔膜の上下がポンプのように腸を刺激し、腸蠕動(腸が内容物を送る蠕動運動)を助けるとされる腸活の補助程度に考える。便秘が続くなら受診を
血圧が下がるゆっくりした呼吸でリラックスし、血圧が下がる方向に働くという研究がある治療の代わりにはならない。息を止めていきむと血圧が上がるので注意
冷え性・血流改善リラックスで手足の血流が変わることがある効果には個人差が大きい
美容・美肌・若返り睡眠やストレスの改善を通じた間接的な効果直接の効果を示す根拠は乏しい

このほか、免疫力やホルモンバランス、リンパの流れ、血糖値、貧血、消化への効果がうたわれることもありますが、はっきりした根拠があるとは言えません。健康のために取り入れるのは良いことですが、持病がある人や治療中の人は、効果効能をうのみにせず、主治医に相談したうえで行いましょう。

腹式呼吸を常に・無意識にできるようにするには

「腹式呼吸を常にやるべき?」「普段から無意識にできるようになりたい」という声は多くあります。まず知っておきたいのは、寝てるときの呼吸は、もともと多くの人が自然に腹式寄りになっているということです。問題になるのは、緊張やデスクワークで日中の呼吸が浅くなっていることです。日頃から少しずつ意識する時間を作ると、腹式呼吸を癖にすることができ、歌うときにも自然に出るようになります。

常に腹式呼吸をする必要はある?

1日中・24時間ずっと腹式呼吸を意識する必要はありません。運動中は胸式呼吸も使うのが自然ですし、意識しすぎると呼吸がかえってぎこちなくなります。目指したいのは「常に腹式呼吸をする」ことではなく、必要なときにすぐ切り替えられる状態です。常にしてると感じる人も、実際は場面によって腹式と胸式を混ぜて使っています。

日常に取り入れるタイミング

腹式呼吸をいつやるか迷ったら、毎日必ずある行動とセットにすると忘れる心配がなくなります。

1日の中で腹式呼吸を取り入れるタイミング 朝 移動 仕事中 お風呂 寝る前 寝たまま 歩きながら 座ったまま 湯船で 仰向け 1回1〜3分。毎日の行動とセットにする
朝起きたとき・移動中・仕事中・お風呂・寝る前など、毎日の行動に1〜3分ずつ組み込む
  • 朝: 目が覚めたら、布団の中で仰向けのまま5回だけ腹式呼吸をする
  • 移動中: 歩きながら、4歩で吸って8歩で吐くなど、歩数で呼吸のリズムをとる
  • 仕事・勉強中: 1時間に1回、座ったまま姿勢を直して3回深く呼吸する
  • お風呂: 湯船につかっている間にゆっくり吐く練習をする。水圧でお腹の動きを感じやすくなります
  • 寝る前: 仰向けで膝を立て、吐く時間を長くした腹式呼吸で体をゆるめる

無意識にできるように定着させるコツ

腹式呼吸を無意識にできるようにするには、正しい姿勢と、ゆるんだお腹を体に覚えさせることが近道です。背中を丸めた姿勢では腹式呼吸がしにくいので、普段の姿勢を見直すだけでも呼吸は変わります。思い切り笑うと、お腹がひくひく動いて横隔膜が使われる感覚がわかるので、これも身につけ方のヒントになります。

意識することは「お腹をゆるめる」「吐いてから吸う」の2つだけで十分です。日常的に続けて、歌う前に意識しなくても肩が上がらなくなってきたら、腹式呼吸が定着してきた証拠です。こうした変化は数週間〜数か月かけて少しずつ表れます。

腹式呼吸を使った呼吸法|4-7-8呼吸法・丹田呼吸・ヨガ

腹式呼吸は、リラックスや集中のための他のさまざまな呼吸法の土台になっています。ここでは代表的な呼吸法と、深呼吸・ヨガ・瞑想との関係を紹介します。どれも腹式呼吸がゆっくりできることが前提なので、基本のやり方に慣れてから試してみてください。

4-7-8呼吸法(478呼吸法)

4-7-8呼吸法は、アメリカの医師アンドルー・ワイル博士が紹介したことで知られるリラックスのための呼吸法です。「4、7、8」の数字は秒数(カウント)を表しています。

  1. 口から息を吐き切る
  2. 口を閉じ、鼻から4カウントで吸う
  3. 7カウント息を止める
  4. 口から「フーッ」と音を立てながら8カウントで吐く
  5. これを4回ほどくり返す
4-7-8呼吸法の吸う・止める・吐くの時間配分 吸う 4 止める 7 吐く 8 鼻から 口から 吐く時間が吸う時間の2倍になるのがポイント
4-7-8呼吸法は吸う4・止める7・吐く8の配分で、吐く時間を長くとる

カウントの速さは自分に合わせて構いません。息を止めるのが苦しい場合は、止める時間を短くした4-4-8(448呼吸法。4で吸い、4止めて、8で吐く)のような形で紹介されることもあります。どちらも大切なのは吐く時間を長くとることです。息を止めると苦しくなる人、持病のある人は、止める時間を省いて、ゆっくり吐くだけにしてください。寝る前や、3分間ほどリラックスしたいときに向いています。

丹田呼吸・逆腹式呼吸

丹田とは、おへその少し下あたりを指す東洋の考え方の言葉です。丹田呼吸は、この丹田を意識しながら行うゆっくりした腹式呼吸のことで、坐禅や武道で重視されてきました。坐禅では、自分の呼吸を数えながら心を落ち着ける方法が伝えられています。禅の呼吸は、鼻から吸って鼻から吐くのが一般的です。

逆腹式呼吸は、吸うときにお腹をへこませ、吐くときにお腹を膨らませる呼吸で、気功や一部の武術で使われます。通常の腹式呼吸とは動きが反対なので、歌の練習とは分けて考えてください。

深呼吸・ヨガ・瞑想・90/90呼吸との関係

  • 深呼吸: 腕を大きく上げる深呼吸は、胸が大きく動く胸式呼吸になりやすい動きです。腹式呼吸で深呼吸をするなら、腕は下ろしたまま、お腹と脇腹を広げるように吸います
  • ヨガ: ヨガでは腹式呼吸、胸式呼吸、両方を合わせた完全呼吸などを使い分けます。ヨガの腹式呼吸のやり方は、鼻から吸って鼻から吐くのが基本です
  • 瞑想: 瞑想では呼吸をコントロールするより、自然な腹式呼吸を「観察する」ことが多いです
  • 90/90呼吸: 仰向けで両足を椅子や壁にのせ、股関節と膝を90度に曲げた姿勢で行う呼吸練習です。腰が反りにくく、お腹と背中が広がる感覚をつかみやすい姿勢として、リハビリやトレーニングの現場で使われています

スポーツ・楽器・話し方での腹式呼吸

腹式呼吸は歌以外にも、スポーツ、吹奏楽などの楽器、声優や演劇、プレゼンの話し方など、息と声を使うあらゆる場面で役に立ちます。場面によって腹式呼吸の使い方は少しずつ違うので、目的別に整理しておきましょう。

スポーツ・運動での使い方

運動腹式呼吸の使い方
ランニング・マラソンゆっくり走るときは腹式呼吸で深く吸い、2歩で吸って2歩で吐くなど歩数とリズムを合わせる。ペースが上がったら胸式呼吸も使って素早く吸う
水泳・プール水中で鼻からゆっくり吐き、息継ぎの一瞬で口から吸う。吐き切っておくと短い時間で吸える
登山・歩行登りで息が上がる前に、歩くペースに合わせて長く吐く
ゴルフ・武道・武術動作の前に吐いて力みを抜く。武術では逆腹式呼吸を使う流派もある
ピラティスお腹を締めたまま肋骨を横に広げる胸式呼吸(ラテラル呼吸)を使うのが一般的

ランニングの効果を高めるために腹式呼吸を取り入れる人も多いですが、ランニング中に腹式呼吸だけにこだわると、かえって苦しくなることがあります。運動の強さに応じて胸式呼吸も使う、と覚えておきましょう。

吹奏楽・サックスなどの楽器

吹奏楽でサックスやトランペット、フルートなどの管楽器を吹く人にとって、腹式呼吸は歌と同じく基本の技術です。吹奏楽の練習では、ロングトーンや、メトロノームに合わせて4拍で吸い8拍で吐くようなトレーニングがよく行われます。楽器のコツは、吸った息を楽器の抵抗に合わせて一定の圧力で送り続けることです。ピアノのように息を使わない楽器でも、フレーズの切れ目で息を吐き、演奏中に息を止めないようにすると肩の力みが抜けやすくなります。

声優・演劇・合唱・話し方

  • 声優・演劇・舞台: 長いセリフを一息で言い切る、客席の後ろまで声を届けるために腹式呼吸を使います。舞台では、動きながらでも呼吸を保つ練習をします
  • 合唱・声楽・ゴスペル: 合唱や声楽は長いフレーズと響きのある声が求められるため、腹式呼吸で肋骨の下まで広げる呼吸が特に重視されます。ゴスペルのように大きな声量で歌うジャンルでも同じです
  • ボーカル・ラップ: バンドのボーカルやラップでは、言葉を詰め込んだフレーズの間で素早く吸う必要があります。短いブレスでもお腹がゆるむように練習しておきましょう
  • 話し方・喋り方・プレゼン: 腹式呼吸で話すと声が落ち着いて聞こえ、早口になりにくくなります。プレゼンの前に長く吐く呼吸をすると緊張がほぐれます
  • 英語の発音: 英語はp・t・kのように息を強く吐き出す子音が多いので、息の量を安定させる腹式呼吸が発音の助けになります

話し声を鍛える場合も、歌と同じく「吸う→支える→声にする」の流れは変わりません。プロの歌手が話し声でもよく通る声をしているのは、この呼吸が身についているからです。

看護・リハビリ・出産での腹式呼吸

腹式呼吸は、病院の看護やリハビリ、出産の場面でも使われています。ただし、この章で紹介する場面はいずれも医師・看護師・理学療法士・助産師などの指導のもとで行うものです。病気やけががある人、妊娠中の人は、自己流で始めず、必ず担当の医療者に相談してください。ここでは「どんな目的で使われているか」を知るための概要をまとめます。

看護での腹式呼吸|術前・術後の呼吸訓練の目的

看護の現場では、手術の前に腹式呼吸の練習をする「術前の呼吸訓練」がよく行われます。目的は、術後の肺の合併症を防ぐことです。手術の後は、傷の痛みや麻酔の影響で呼吸が浅くなり、痰を出しにくくなります。そのままだと肺の一部がしぼんだり(無気肺)、肺炎を起こしたりするおそれがあるため、術前から深い呼吸と咳の出し方を練習しておき、術後に再開できるようにするのです。

看護での腹式呼吸と胸式呼吸の違いは、歌の場合と基本的に同じです。お腹の手術の後は腹式呼吸で傷が痛むことがあるため、胸式呼吸を中心にするなど、状態に合わせて方法が変わります。病院では、やり方を図で説明したパンフレットを使って看護師が指導し、声かけで呼吸のペースを誘導することもあります。

リハビリ・理学療法での腹式呼吸

場面腹式呼吸の使われ方注意
COPD(慢性閉塞性肺疾患)呼吸リハビリで、口すぼめ呼吸と組み合わせて息切れが楽になるよう指導されることがある病状によっては腹式呼吸がかえって苦しくなる場合もある
喘息喘息は気管支が狭くなって息が吐きにくくなる病気。なぜ呼吸法が使われるかといえば、呼吸を落ち着ける補助になるため薬による治療の代わりにはならない
頸髄損傷・脊髄損傷(頸椎損傷に伴うものを含む)損傷の位置によっては、肋骨まわりや腹部の筋肉が働きにくくなり、横隔膜による呼吸が中心になる呼吸の評価と訓練は専門職が行う
高齢者・嚥下のリハビリ咳の力や、飲み込みと呼吸のタイミングを整える訓練の一部として使われることがあるむせや誤嚥がある場合は医療者の指導で

理学療法でのリハビリの方法や効果は、病気の種類や重さによって大きく変わります。インターネットの情報や文献だけで判断せず、担当の医師や理学療法士に確認してください。逆流性食道炎について、横隔膜を意識した呼吸訓練で症状が軽くなったという研究報告もありますが、治療は消化器内科の医師の判断が優先です。

妊婦・出産・産後の腹式呼吸

出産の場面では、陣痛の痛みを逃がし、体の力を抜くために呼吸法が使われます。「ひっひっふー」の掛け声で知られるラマーズ法や、ゆっくり長く吐く呼吸で陣痛の波を受け止めるソフロロジー法などがあり、分娩に向けて妊娠中から母親学級などで練習するのが一般的です。どの呼吸法を使うかは、出産する病院や助産院の方針に従ってください。

妊婦さんが腹式呼吸をするときは、妊娠中期以降に長い時間仰向けになると気分が悪くなることがあるため、座った姿勢や横向きで行うのが安心です。妊娠が進むとお腹が大きくなり、腹式呼吸がしにくくなるのは自然なことです。産後は、体の回復の一環として呼吸と骨盤底筋の運動が指導されることもあります。いずれも医療者の指示を優先してください。

パニック・不安が強いとき

不安やパニック発作のときに、ゆっくり吐く呼吸で落ち着くという方法は広く知られています。ただし、パニック障害などで症状がくり返す場合は、呼吸法だけで対処しようとせず、心療内科や精神科などの専門医に相談してください。発作中に無理に深く吸おうとすると、かえって過呼吸が強まることもあります。

子供・赤ちゃんの腹式呼吸と教え方

実は、赤ちゃんは最初から腹式呼吸をしています。年齢とともに呼吸の仕方は変わっていき、大人になるにつれて胸式呼吸の割合が増えていきます。ここでは年齢による呼吸の変化と、子供に腹式呼吸を教えるときのやり方を紹介します。

赤ちゃん・新生児は腹式呼吸が中心

新生児や乳児は、肋骨が水平に近い形をしていて胸を広げにくく、胸の筋肉もまだ発達していないため、横隔膜を使う腹式呼吸が中心です。赤ちゃんが寝ているとき、お腹が上下に大きく動いているのはこのためです。生まれた瞬間から肺で酸素を取り込む外呼吸が始まりますが、新生児の外呼吸はほぼ横隔膜の動きに頼っています。

成長とともに肋骨が斜めに傾いて胸郭が広がりやすくなり、胸式呼吸も使えるようになります。一般的な目安は次のとおりです。

年齢の目安呼吸の中心
新生児・乳児(0〜1歳ごろ)腹式呼吸
幼児(2歳・3歳ごろ〜)腹式と胸式を合わせた胸腹式呼吸へ移っていく
4歳・5歳・6歳ごろ胸腹式呼吸。胸の動きが少しずつ増える
学童期(7歳ごろ〜)大人に近い呼吸になる
成長とともに腹式から胸腹式の呼吸へ移る 腹式 胸腹式 大人に近い 0〜1歳 2〜6歳 7歳ごろ〜
乳児期は腹式呼吸が中心で、幼児期に胸腹式へ移り、学童期に大人に近い呼吸になる(年齢は目安)

年齢はあくまで目安で、個人差があります。何歳までに腹式呼吸ができるようになる、という決まりもありません。大人になって胸式呼吸に偏っていても、練習すれば何歳からでも腹式呼吸は身につけられます。

子供に腹式呼吸を教えるやり方

子供に「横隔膜を下げて」と言っても伝わりません。遊びの中で自然にお腹を使えるようにするのがコツです。

  • ティッシュを吹く: ティッシュを1枚顔の前にたらし、細く長く吹いて、ティッシュがずっとなびいているようにする
  • ピンポン玉を吹く: 机の上のピンポン玉を、ストローで吹いてゴールまで転がす
  • 風船をふくらませる: 一気に吹かず、何回かに分けてゆっくり膨らませる。練習用には小さめの風船が向いています
  • お腹にぬいぐるみをのせる: 仰向けになってお腹にぬいぐるみをのせ、吸うと上がり、吐くと下がるのを見て遊ぶ

子供がやり方を理解しやすいのは、「お腹に風船があって、吸うとふくらむ」というイメージです。本当は空気は肺に入るので、少し大きくなったら理科の実験で作る肺の模型(底を切ったペットボトルに風船を入れ、底に張ったゴム膜を引くと中の風船がふくらむもの)を見せると、横隔膜の働きが目で見てわかります。合唱や音楽の授業、スポーツの前に、親子で一緒に練習してみてください。

よくある質問

腹式呼吸って何ですか?ってどうやるの?分かりやすく教えてください
腹式呼吸は、横隔膜を下げて肺に空気を入れる呼吸で、吸うとお腹が膨らみます。やり方は、仰向けで膝を立て、口から息を吐き切ってからお腹の力をゆるめ、鼻からゆっくり吸うだけです。お腹に置いた手が上がり、胸に置いた手が動かなければできています。
吸ってもお腹膨らまない・うまくできないときはどうすればいい?
まず息を吐き切ってから吸っているか、お腹に力を入れていないかを確認してください。座っていたり立っていたりしてできない場合は、仰向けで膝を立てた姿勢に戻ると、多くの人がお腹の動きを感じられます。それでもわからない場合は、ボイトレ教室の講師に一度見てもらうと原因がはっきりします。
腹式呼吸のために腹筋鍛える必要はある?
上体起こしのような腹筋運動で表面の腹筋を鍛える必要はありません。大切なのは、横隔膜と、お腹の深いところにある腹横筋を思いどおりに動かせることです。ロングブレスやドローインなど、呼吸を止めずに行うトレーニングのほうが役立ちます。
腹式呼吸をすれば声大きくなる?
息の量と流れが安定するので、喉を締めずに大きな声を出しやすくなります。ただし声量は、息だけでなく声帯の使い方や共鳴とも関係しています。腹式呼吸は声量アップの土台と考え、発声の練習と組み合わせてください。
1日どれくらい練習すれば身につく?
1回5〜10分を1日1〜3回、毎日続けるのが目安です。仰向けでできるようになるまで数日〜1週間、歌いながら保てるようになるまでは数か月かかることもあります。長時間まとめて行うより、短い時間を毎日続けたほうが身につきやすくなります。

まとめ

腹式呼吸とは、横隔膜を下げて肺に空気を入れ、その結果お腹が膨らむ呼吸です。空気がお腹に入るわけではありませんが、深くゆっくりした呼吸ができるため、歌・話し方・リラックスなど多くの場面で役立ちます。この記事の要点を振り返ります。

  • 腹式呼吸は横隔膜、胸式呼吸は肋骨まわりの筋肉が主役。どっちがいいかは目的しだいで、歌では両方を合わせた胸腹式呼吸が使われる
  • やり方は「吐き切る→お腹をゆるめて吸う」。仰向け→座る→立つの順に練習する
  • できない原因の多くは、吸いすぎ・お腹の力み・姿勢。できているかは手を胸とお腹に当てて確認する
  • 歌では「吸う→支える→声にする」。支えは息を押し出す力ではなく、お腹がしぼむ速さを抑える力
  • めまいやしびれは吐きすぎのサイン。痛みや体調の異常が続くときは医療機関へ
  • ダイエットや健康への効果は補助的なもの。医療の場面では医療者の指導に従う

腹式呼吸は、自分ひとりでは「できているつもり」になりやすい技術です。独学でうまくいかないときは、講師にお腹や肩の動きを直接見てもらうのがいちばんの近道です。ボイトレ教室検索では、全国のボイストレーニング教室をエリアや駅から探せます。体験レッスンで呼吸のチェックから始めてみてはいかがでしょうか。呼吸の次のステップとして、歌のブレス(息継ぎ)や歌と肺活量の関係もあわせて読んでみてください。