リップロールとは?意味・仕組み・別名
リップロールとは、軽く閉じた唇に息を当てて「ブルルル」と震わせながら、声や息を出し続ける発声練習です。唇のブルブルという振動と一緒に「ウー」と声を乗せるのが基本形で、ボイトレ教室でもレッスン冒頭のウォームアップとして定番になっています。見た目は子どもの遊びのようですが、歌うときに邪魔になる喉の力みを抜き、息と声のバランスを整えるという、はっきりした目的のある練習です。
リップロールの意味と別名(リップトリル・英語での言い方)
リップロールは英語の lip roll をそのままカタカナにした言葉で、「唇(lip)を転がす(roll)」という意味です。同じ練習を指す別名としてリップトリル(lip trill)がよく使われ、ボイトレの現場ではほぼ同じ意味で使われています。「トリル」は音を細かく交互に鳴らすことを指す音楽用語で、唇が細かく開閉する様子から来ています。英語圏では lip trill のほかに lip bubble(リップバブル)、lip buzz と呼ばれることもあります。中文(中国語)では「唇颤音」と書かれるのが一般的です。日本語の会話では「唇ブルブル」「ブルブル練習」と呼ぶ人も多く、どれも同じ練習を指しています。
なお、ビートボックスの世界にも「リップロール」という名前の技がありますが、こちらは低音の効果音として唇を鳴らすテクニックで、発声練習とは目的が違います(楽器やビートボックスとの関係は後半の章で扱います)。
リップロールの仕組みと原理:なぜ喉がラクになるのか
リップロールの原理は、口の出口を唇で半分ふさぐことで、口の中にわずかな圧力(空気の押し返し)をつくることにあります。声は、肺から送られた息が声帯を振動させることで生まれ、その音が喉と口の中で響いてから外に出ていきます。唇を閉じ気味にして震わせると、出口が狭くなった分だけ口の中の空気圧が少し上がり、その圧力が声帯の上側からも支えるように働きます。
その結果、声帯は少ない力で効率よく振動できるようになり、喉を締めつけて声を押し出す必要がなくなります。発声の研究ではこのような練習を「SOVT(半閉鎖声道)エクササイズ」と呼び、ストロー発声やハミングも同じ仲間に入ります。リップロールはその中でも、唇が震えているかどうかで息の流れが目に見えて分かるのが特徴です。息が弱すぎたり、喉や唇に力が入りすぎたりすると唇の振動が止まるので、「一定の息で、力まずに声を出せているか」を自分で確認できる、よくできた練習なのです。
リップロールの種類:声あり・息だけ・音程つき
リップロールにはいくつかの種類(バリエーション)があり、目的に応じて使い分けます。
- 息だけのリップロール:声を出さず、息だけで唇を震わせる形。無音に近く、唇の脱力と息の量を一定に保つ練習になります。
- 声ありのリップロール:ブルブルに「ウー」と声を乗せる基本形。一定の高さで伸ばすロングトーンから始めます。
- 音程つきのリップロール:音階(ドレミファソ)やサイレンのように音程を上下させる形。音域を広げる練習や、地声と裏声のつなぎ目を整える練習に使います。
- リップロールで歌う:歌詞の代わりにリップロールで曲のメロディーをなぞる形。曲の難所を喉に負担をかけずに練習できます。
どの種類でも、なんのためにやるのかという目的は共通していて、「喉を締めずに、息の流れで声を出す感覚をつかむこと」です。次の章では、その目的から生まれる具体的な効果を見ていきます。
リップロールの効果・メリット|なぜボイトレで必ずやるのか
リップロールの効果は、大きく分けて「喉の脱力」「息のコントロール」「声区のつながり」の3つです。ボイストレーニングの効果を高める土台づくりの練習なので、どの教室でもレッスンの最初に取り入れられています。なぜボイトレでリップロールをやるのか、なぜ効果があるのかを、この3つに沿って説明します。
効果1:喉の力みが抜けて、喉締めを防げる
高い声を出そうとして喉仏がぐっと上がり、首まわりが固くなる状態を「喉締め」と呼びます。リップロールでは唇が震え続けるだけの息を安定して流す必要があるため、喉で息をせき止めるような力みがあると、すぐに振動が止まってしまいます。つまり、ブルブルが続いている間は、喉が脱力できているというサインになります。この「喉を開く」感覚、つまり喉の奥に余計な力を入れずに声を出す感覚をつかめることが、リップロールがなぜ良いのかと言われる一番の理由です。リラックスした状態で声を出す経験を繰り返すことで、歌うときにも喉が固まりにくくなります。
効果2:息の量が一定になり、息が続かない悩みの改善につながる
リップロールは、息が多すぎても少なすぎても唇の振動が乱れます。そのため、一定の量の息をまっすぐ吐き続ける練習になり、腹式呼吸で息を支える感覚を身につけるのに役立ちます。腹筋や横隔膜まわりを使って息をゆっくり送り出す意識で行うと、ロングトーンで息が続かない、フレーズの途中で息が足りなくなるといった悩みの改善につながります。
ただし、リップロールで肺活量そのもの(肺に入る空気の量)が大きく増えるわけではありません。変わるのは「同じ量の息を、ムダなく声に変える効率」です。息漏れの多いかすれた声の人は、唇の抵抗があることで声帯が自然と閉じやすくなり、声帯閉鎖の感覚をつかむきっかけにもなります(詳しくは声帯閉鎖の解説、呼吸の基本は腹式呼吸の解説を参照してください)。
効果3:高い声が出しやすくなり、音域が広がる
音程をつけたリップロールで低い音から高い音へなめらかに上がると、声が裏返りやすい喚声点(地声と裏声の切り替わり)を、喉に負担をかけずに何度も通過する練習ができます。声帯を引き伸ばして高い声を出すときに働く輪状甲状筋も、力みが少ない状態で使う感覚をつかみやすくなります。これを繰り返すことで、高い声が出しやすくなり、結果として使える音域が広がっていきます。喚声点の仕組みは喚声点(ブリッジ)の解説にまとめています。
歌やカラオケでの効果:リップロールで歌上手くなるのか
「リップロールをすれば歌上手くなるの?」という疑問に正直に答えると、リップロールだけで歌がうまくなるわけではありません。リップロールは、喉の脱力・息・声区の3つを整えて本番の声を出しやすい状態をつくる準備運動です。発声の効果が出やすいのは、リップロールで作った感覚をそのまま歌声に持ち込めたときです。
たとえばカラオケの前に1〜2分リップロールをしておくと、いきなり歌い始めるよりも喉が温まり、1曲目から高音がつかえにくくなるという効果を感じる人は多いです。歌の効果を実感しやすい使い方は次の3つです。
- 歌う前のウォームアップとして、喉をいきなり酷使しないようにする
- 苦手なフレーズをリップロールでなぞり、喉を締めずに歌える通り道を覚える
- 練習の合間にはさみ、力んできた喉をリセットする
「リップロールはやる意味がない」という声もありますが、その多くは、やり方が間違っていて唇だけが震えていたり、リップロールの感覚を歌に移す練習をしていなかったりするケースです。効果を実感できないときの見直し方は、後半の「やりすぎのデメリット・逆効果」の章で説明します。
リップロールの正しいやり方|簡単な4ステップ
リップロールのやり方はシンプルで、道具も場所もいりません。ただし、口の形や息の量が少しずれるだけで唇が震えなかったり、喉に力が入ったりします。ここでは、ボイトレで使う正しいやり方を、はじめての人でも簡単に試せる4つのステップに分けて説明します。
ステップ1〜4:リップロールの基本の仕方
- 姿勢と口の形を整える:背すじを軽く伸ばして立つか座り、肩と首の力を抜きます。上唇と下唇を軽く触れ合う程度に閉じます。唇を前に突き出したり、きつく結んだりせず、「ム」と言う直前くらいのゆるい口の形にします。歯は上下を噛み合わせず、口の中に少し空間を残します。
- 息だけで唇を震わせる:鼻から息を吸い、閉じた唇のすき間から「プー」と息を吐き出します。唇が息に押されて「ブルルル」と震えれば成功です。最初は声を出さず、息だけ・無音に近い状態で5秒ほど続けてみましょう。
- 声を乗せる:唇が震える状態のまま、軽く「ウー」と声を出します。話し声くらいの楽な高さで、声とブルブルが一緒に続くようにします。
- 一定の長さで伸ばす:息の量と声の大きさを変えずに、5〜10秒伸ばします。唇の振動が途中で止まらなければ、基本のリップロールはできています。
リップロールの練習方法として大事なのは、上手にできた1回よりも、「毎回同じ状態で再現できること」です。ステップ4ができるようになったら、次の章以降で紹介する音程つきの練習に進みます。
うまくいくコツ:唇・舌の位置・口の中
リップロールのコツは、力を入れる場所ではなく「力を抜く場所」を意識することです。特に次の3か所を確認してください。
- 唇(上唇・下唇)
- 上唇と下唇が同じくらいの力で軽く触れていると、両方がそろって震えます。下唇だけ、上唇だけが震える場合は、震えていない側に力が入っているか、唇の合わせ方がずれています。唇が乾いていると振動しにくいので、軽く湿らせてから始めるのも有効なこつです。
- 舌の位置(ベロ)
- 舌は下の前歯の裏に舌先を軽く触れさせ、口の中で平らに寝かせておきます。舌の奥が盛り上がると息の通り道が狭くなり、喉に力が入りやすくなります。ベロを奥に引き込まないよう注意しましょう。
- 口の中とあご
- 奥歯を噛みしめず、口の中に卵を軽く含んでいるくらいの空間をつくります。あごが固まると唇まで固くなるので、あごは下に落とす意識で脱力します。
動画・イラストで確認するときのポイント
リップロールは文章だけでは感覚がつかみにくいため、やり方動画やイラストで口元の動きを確認するのも役立ちます。YouTube(ユーチューブ)にはボイストレーナーによるリップロールのやり方の解説動画や、一緒に声を出せる練習用の音源が多く公開されています。見るときは、次の点に注目すると上手い人との違いが分かりやすくなります。
- 唇を前に突き出しすぎていないか(上手い人ほど口元はゆるく、表情が落ち着いています)
- 肩や首が動いていないか(息を吐くときに体がこわばっていないか)
- 音程を上げたときに、あごや首に力が入っていないか
なお、YouTube などで見かける「リップロールASMR」は、唇の音を心地よく聞かせることを目的とした作品で、発声練習とは目的が違います。練習の参考にするなら、ボイトレの解説を目的にした動画を選びましょう。自分の練習をスマートフォンで録画して、口元と首まわりを見比べるのもおすすめです。
リップロールができない原因と対策
リップロールができない人は珍しくありません。はじめて試して全くできない、唇がブルッと1瞬しかできない、という人は大勢います。できる人割合(できる人とできない人の比率)を示した統計は見当たりませんが、ボイトレ教室でも最初は苦手な人や「自分は下手だ」と感じる人が多く、難しいと感じるのはあなただけではありません。できない原因はほぼ「力み」「息の量」「唇の状態」のどれかに分けられるので、当てはまるものから順に対策していきましょう。
原因1:唇やあごに力が入っている(力む・食いしばり)
リップロールができない原因でいちばん多いのが、唇に力が入りすぎていることです。唇をぎゅっと結ぶと、息が当たっても震えずに「プッ」と破裂するだけになります。普段から奥歯を食いしばる癖がある人や、緊張しやすい人はあごと口輪筋(口のまわりを囲む筋肉)が固まりやすく、特に力が入る傾向があります。
- 唇を「閉じる」のではなく「触れさせるだけ」にする
- 口を大きく開けて閉じる、頬をふくらませてしぼませる、を数回繰り返して唇を柔らかくしてから始める
- あごを軽く左右に揺らして、奥歯の食いしばりをほどく
原因2:息が弱い・一定でない(すぐ止まる・途切れる)
唇が震えない、音が出ないという場合は、息の量が足りていないことがよくあります。唇を震わせるには、ろうそくの火を遠くから吹き消すくらいの、しっかりした息が必要です。反対に、最初だけ強く吹いて後から弱くなると、振動がすぐ止まる、途中で止まる、途切れるといった状態になります。長くできない、続かない、短い時間しかもたない人は、息の強さを「最初から最後まで同じ」に保つ意識を持ちましょう。
息が続かないときは、吸う量を増やすよりも、吐く息を細く一定にする方が効果的です。お腹を少しずつへこませながら吐くと、息の量が安定します。
原因3:唇が乾燥している・唇の形や歯並びの影響
唇が乾燥していると、上下の唇が張り付いて振動しにくくなります。リップクリームや水で軽く湿らせるだけで、できない状態から一気にできるようになる人もいます。
また、出っ歯(上の前歯が前に出ている歯並び)の人や、歯列矯正の装置をつけている人は、唇が歯に押されて上下のバランスが崩れ、リップロールができないと感じやすくなります。できない原因が出っ歯や矯正にありそうな場合は、次の章で紹介する「指で頬を支える方法」が特に有効です。唇の前に少し空間ができて、振動しやすくなります。矯正中に唇や口の中が痛む場合は無理をせず、担当の歯科医に相談してください。
声を乗せるとできない・高音でできない・裏声になる
息だけならできるのに、声を出すと止まる、声出ない・声が出ないという人は、声を出した瞬間に喉が締まり、息の流れがせき止められています。声は小さめ・低めから始め、息だけのリップロールに「少しだけ声を混ぜる」くらいの感覚で乗せてみましょう。
低い音ではできるのに高音でできない場合も、原因は同じく喉の力みです。高い声を出そうとすると喉仏が上がり、息が詰まって振動が止まります。高音で止まるところまで行ったら、少し手前の音に戻って同じ息の量で何度か往復し、止まらない範囲を少しずつ広げます。
リップロールで高い音に上がると勝手に裏声になるのは、失敗ではありません。音が高くなると声は自然に裏声寄りの響きに切り替わっていくので、途中で裏返っても、ブルブルが止まらずにつながっていれば問題ありません。地声と裏声の切り替わりをなめらかにするのが、音程つきリップロールの目的の一つです。
鼻をつまむと分かる「息が鼻に抜けている」状態
声を乗せたときに振動が弱くなる人は、息の一部が鼻に抜けていることがあります。確認するには、リップロールをしながら鼻を軽くつまんでみてください。鼻をつまんでも音や振動が変わらなければ、息はきちんと口から出ています。鼻をつまむと振動が強くなる、または音が変わる場合は、鼻に息が漏れているサインです。舌の奥と上あごの奥(軟口蓋)を軽く持ち上げるように意識すると、口から出る息が増えて唇が震えやすくなります。
前はできたのに、できなくなったとき
以前はできたのに急にできなくなった場合は、疲れや緊張で唇とあごが固くなっている、唇が乾燥している、風邪などで鼻や喉の調子が悪い、といった一時的な原因がほとんどです。唇を湿らせ、首や肩をほぐしてから息だけのリップロールに戻りましょう。どうしてもできない状態が数日続き、唇のしびれや顔の動かしにくさなど、ほかの違和感もある場合は、自己判断せずに医療機関で相談してください。
指で頬を支えるやり方と、手を使わずにできるまでの練習
リップロールが上手くできない人に最もよく効くのが、手を使う方法です。両手の指で頬を軽く支えるだけで、唇にかかる余計な重さや緊張が減り、はじめての人でもブルブルが続きやすくなります。ボイトレのレッスンでも、苦手な人にはまずこのやり方をすすめることが多い、定番の補助テクニックです。
頬を指で押さえるやり方
- 両手の人差し指を、左右の口角の少し外側(えくぼができるあたり)の頬に当てます。
- 頬の肉を軽く上へ、少し前へ持ち上げます。押し込むのではなく、たるみを支えるくらいの弱い力です。
- 唇が少し前にふっくら出て、上下の唇が軽く触れている状態になったら、そのまま息を吐いてリップロールをします。
頬を支えると、唇のまわりの筋肉が頬の重さを支える必要がなくなり、唇だけが自由に震えられるようになります。口角の横を押さえる位置が内側すぎると唇をつぶしてしまうので、口角から指1本分ほど外側を目安にしてください。
押さえないとできないのは問題ない?
「頬を押さえないとできない」「手を使わないとできない」という状態は、まったく問題ありません。リップロールの目的は喉の脱力と息のコントロールであり、手を使っても使わなくても、その効果は同じように得られます。特に頬のやわらかい人や、出っ歯・歯列矯正などで唇が前に押し出されにくい人は、指で支えた方が安定します。手を使う方法は、上級者でも音程を大きく動かす練習のときに使うことがあります。
手を使わないでできるようになるまでのステップ
とはいえ、人前や歌う直前にさっとリップロールをしたいときは、手を使わないでできると便利です。次の順番で、指の補助を少しずつ減らしていきましょう。
- 指で頬を支えた状態で、10秒続けられるようにする
- 支える力を半分にし、指を「触れているだけ」にしても続くか試す
- 片手だけ離して、片側の頬だけ支えた状態で続ける
- 両手を離し、頬を支えていたときの口の形を思い出しながら行う
途中で止まったら1つ前のステップに戻ります。手を離すと止まる人の多くは、指で支えていた分だけ唇に力を入れてしまっています。手を離した瞬間こそ、唇とあごの力を抜くことを意識してください。
リップロールは何秒・1日何分やる?練習時間と回数の目安
リップロールは「何秒できれば合格」という決まった基準がある練習ではありません。大事なのは長さそのものより、同じ息の量で途切れずに続けられるかどうかです。そのうえで、練習の目安になる秒数と、1日の練習時間・回数の考え方を紹介します。
1回で何秒できればいい?秒数の目安
リップロールを何秒できるかは、肺の大きさや息の使い方によって個人差が大きく、平均値として示されたデータは見当たりません。練習の段階ごとの目安としては、次のように考えると分かりやすいでしょう。
| 1回の長さ | 段階の目安 | 次にやること |
|---|---|---|
| 3秒・5秒 | 唇が震える感覚をつかんだ段階 | 息の強さを一定にして10秒を目指す |
| 10秒・15秒 | 基本のリップロールができている | 声を乗せて同じ長さを保つ |
| 20秒前後 | 息のコントロールが安定している | 音程つき・音階の練習に進む |
| 30秒・1分 | かなり息が長く使えている | 長さより音程の正確さを磨く |
歌の1フレーズはおおむね数秒〜10秒程度なので、声を乗せたリップロールを10〜15秒安定して続けられれば、練習としては十分です。30秒や1分を目指して無理に息を絞り出すと、最後に喉が締まって逆効果になりやすいので、長さを競う必要はありません。
世界記録やギネス記録はある?最長は何秒?
「リップロールの最長記録」「世界記録」「日本1」などを調べる人もいますが、2026年9月時点で、ギネス世界記録の公式サイトなどで確認できるリップロールの公式記録は見当たりません。SNS上で長時間続ける動画が話題になることはありますが、測定方法がそろっていないため、何秒が最長なのかを比べることはできません。ギネス記録のような長さを目指すよりも、歌に使える10〜15秒を安定させることを目標にしましょう。
1日何分・何回やる?毎日の練習時間
リップロールの練習時間は、1日5分前後を目安にするのがおすすめです。1回10〜15秒を、休みをはさみながら10〜20回程度行えば、5分ほどになります。1日何回という決まりはありませんが、「朝に1回・歌う前に1回」のように、1日の中で短い時間を何回かに分けてもかまいません。
長時間続けたからといって効果が比例して上がるわけではありません。むしろ、唇や口のまわりが疲れて力が入り、フォームが崩れやすくなります。1日の練習の中では「歌う前の準備運動」と位置づけ、残りの時間は実際の歌の練習にあてるのが効率的です。
効果が出るまでの期間と、毎日続けるコツ
リップロールそのものは、早い人なら数日〜1週間ほどで安定してできるようになります。一方で、喉の力みが抜けて歌声が変わったと感じるまでの期間は、練習量や元の癖によって大きく異なり、数週間〜数か月単位で見ておくのが現実的です。毎日の効果は少しずつなので、どのくらいで変わるかを気にしすぎず、毎日続けることを優先しましょう。
リップロールを長く続けるコツ、そして1回を長くする方法は次のとおりです。
- 歯みがきや入浴など、毎日必ずする行動の直後にリップロールを組み込む
- 1回を長くするには、吸う量よりも「吐く息を細く一定にする」ことを優先する
- できた秒数をメモして、10秒→15秒と少しずつ伸ばす
なお、続けているうちに頭がくらくらする、めまいがするときは、強い呼吸を続けたことで呼吸のリズムが乱れ、いわゆる「酸欠」のような感覚が出ている可能性があります。すぐに中断して普通の呼吸に戻し、1回あたりの長さを短くしてください。
リップロールのやりすぎのデメリット・逆効果と注意点
リップロールは喉にやさしい練習ですが、やりすぎると逆効果になることもあります。また、「効果ない」「意味ない」と感じる人の多くは、間違ったやり方が癖になっているケースです。ここでは、リップロールのデメリットと、つまずきやすい注意点をまとめます。
やりすぎるとどうなる?主なデメリット
- 唇や口のまわりが疲れる:長時間続けると口輪筋が疲れて力が入り、かえって唇が震えにくくなります。
- 喉が痛い・乾く:強い息を吐き続けることで喉や口の中が乾燥し、ヒリヒリすることがあります。
- リップロールだけで満足してしまう:準備運動に時間を使いすぎて、実際の歌の練習時間が減ってしまいます。
リップロールをやりすぎると、せっかくの脱力効果が薄れ、疲れた状態で歌の練習に入ることになります。前の章で紹介したとおり、1日5分前後を目安にし、疲れたと感じたらその日は切り上げましょう。練習中に喉が痛い、声がかすれる状態が数日続く場合は、練習を休み、耳鼻咽喉科で相談してください。
効果ない・意味ないと感じるときの間違い
リップロールがボイトレで意味を持つのは、「喉を締めずに声を出す感覚」を歌に持ち込めたときです。効果がないと感じるときは、次の間違いがないか確認してみてください。
| よくある間違い | 起きていること | 直し方 |
|---|---|---|
| 唇だけ震わせて声が乗っていない | 息の練習だけで終わっている | 小さくてよいので声を乗せる |
| 大きな声で強く吹いている | 喉に力が入り喉締めの癖がつく | 話し声くらいの音量に下げる |
| 高音で首に力が入る | 喉仏が上がり、脱力できていない | 止まらない高さまでに留める |
| リップロール後すぐ普段通りに歌う | 感覚が歌に引き継がれていない | 直後に同じ音を「ウー」で歌う |
特に最後の点が重要です。リップロールで出した音と同じ高さを、すぐに口を開けて「ウー」「アー」で歌ってみてください。喉の感覚が変わらないまま声を出せれば、リップロールの効果が歌に移っています。
唇や鼻がかゆい・くすぐったいのはなぜ?
リップロールをすると、唇がかゆい、鼻かゆい、くすぐったいと感じる人は多いです。これは唇の細かい振動が、唇や鼻のまわりの皮膚・粘膜を刺激するためで、異常ではありません。振動が鼻の奥まで響いている証拠でもあり、続けるうちに慣れて痒くなることは減っていきます。気になる場合は、息の量を少し弱めて振動を小さくしてみましょう。ただし、かゆみに加えて赤みや腫れが出る場合は、リップクリームや食べ物などによる肌荒れの可能性もあるので、その日は中止してください。
唾が飛ぶ・汚いのが気になるときの対策
唇を震わせる練習なので、唾が飛ぶのはある程度避けられません。唾飛ぶのが気になって練習しにくい、人前だと汚いと思われそうで気が引ける、という人は次の方法を試してください。
- 鏡や人のいない方向、壁に向かって行う
- ティッシュやハンカチを口元の少し前にかざして行う
- 練習前に水を飲んで口の中の唾液を落ち着かせる
- 息の量を少し減らし、振動を小さめにする
唾が大量に飛ぶ場合は、息が強すぎることが多いので、息の強さを見直すきっかけにもなります。
リップロールで歌う・音階練習|高音と音域を広げるメニュー
基本のリップロールができるようになったら、音程をつけた練習に進みます。リップロールで歌う練習は、喉に負担をかけずに高音や音域の端まで声を動かせるのが最大の効果で、音域広げるための練習として定番です。ここでは、歌う前の発声練習として使える代表的なメニューを、易しい順に紹介します。
メニュー1:ロングトーン
楽な高さの1音をリップロールで10秒ほど伸ばします。音程が揺れず、ブルブルの速さも変わらないことを確認します。慣れたら半音ずつ高さを変えて、低い音から中くらいの音まで同じ状態で伸ばせるようにします。ロングトーンそのものの練習法はロングトーンの解説も参考にしてください。
メニュー2:5トーンの音階(スケール)練習
「ドレミファソファミレド」の5音の音階を、リップロールで上がって下ります。1回終わるごとに半音ずつ始まりの音を上げ、高音で唇が止まる手前まで進んだら、今度は半音ずつ下げて低音まで戻ります。ピアノアプリやボイトレ用の音源に合わせて行うと、音程のずれにも気づきやすくなります。音階練習のポイントは、上の音に行くときに息を強くしすぎないことです。息の量はそのままで、音程だけを変える感覚をつかみます。
メニュー3:サイレン(低音から高音へのスライド)
救急車のサイレンのように、低い音から高い音へ、なめらかにスライドさせてから戻ってきます。途中に喚声点(地声と裏声の切り替わり)があり、声が裏返りやすいポイントを通過します。リップロールでは唇の抵抗が声帯を助けてくれるため、地声から裏声へ段差なくつながる感覚を安全に練習できます。この地声と裏声のつながりは、ミックスボイスやヘッドボイスを身につける土台になります(詳しくはミックスボイスの解説とヘッドボイスの解説を参照)。
メニュー4:リップロールで曲を歌う
最後は、歌詞の代わりにリップロールで曲のメロディーを歌います。リップロールで歌う効果は、曲の中の高音や跳躍など、喉が締まりやすい箇所を「力まずに通る道筋」として体に覚えさせられることです。練習のしかたは次の3段階です。
- 練習したい曲のサビなど、苦手な部分だけをリップロールで歌う
- 同じ部分をすぐに「ウー」や「ア」の母音で歌う
- 最後に歌詞で歌い、リップロールのときの喉のラクさを保てているか確かめる
カラオケの前に、その日歌う曲のサビをリップロールでなぞっておくのもおすすめです。曲の選び方に決まりはありませんが、最初はゆっくりしたテンポで、音の上下がなだらかな曲から始めると続けやすいでしょう。
音程・音痴の改善や、ほかの練習との組み合わせ
リップロールは音程の練習にも使えます。息の量が一定だと声の高さも安定しやすいので、音程がふらつきやすい人や、音痴だと感じている人は、ピアノの音と同じ高さをリップロールで出し、耳で合わせる練習から始めてみてください。
リップロールで整えた状態は、ほかのテクニックの練習にもつなげられます。リップロールのロングトーンの途中で息の量をわずかに揺らせばビブラートの感覚をつかむ準備になり、ブルブルの響きを鼻の奥に感じられれば鼻腔共鳴の入り口になります。また、声帯を軽く閉じた状態で出す低いガラガラ声(エッジボイス)でウォームアップしてからリップロールに移ると、声帯閉鎖と脱力を両方意識しやすくなります。それぞれの詳しい練習はビブラート、鼻腔共鳴、エッジボイスの各記事で解説しています。
リップロールとタングトリル(巻き舌)の違い|どっちをやるべき?
リップロールとよく一緒に紹介されるのが、舌先を震わせる「タングトリル」です。どちらも息で体の一部を震わせながら声を出す練習ですが、震わせる場所と、主に整えられるポイントが違います。どっちをやればいいのか迷う人のために、違いと使い分け、同時にやる方法を整理します。
震わせる場所の違い:唇か、舌先か
リップロールは唇を、タングトリルは舌先を震わせます。タングトリルは、舌先を上の前歯の裏の少し後ろ(上あごのふくらみ)に軽く当て、息で「ルルルル」と震わせる練習で、いわゆる巻き舌と同じ動きです。タングロールと呼ばれることもあります。巻き舌との違いを聞かれることがありますが、動き自体は同じで、発声練習として声を乗せて行うものをタングトリルと呼んでいると考えればよいでしょう。
なお、リップトリルとの違いを気にする人もいますが、リップトリルはリップロールの別名で、同じ練習です。
効果の違いと、どっちから始めるか
| 比べる点 | リップロール | タングトリル |
|---|---|---|
| 震わせる場所 | 唇 | 舌先 |
| 主な効果 | 喉と唇の脱力・息を一定にする | 舌の脱力・舌の奥の力みを取る |
| 向いている人 | 喉や首に力が入りやすい人 | 舌に力が入り、声がこもる人 |
| 難しさ | 比較的できる人が多い | 巻き舌が苦手だとできない |
タングトリルの効果は、舌の力みを取ることにあります。舌の奥が盛り上がって声がこもる人や、滑舌が硬くなりがちな人には特に役立ちます。一方、リップロールは喉と息全体を整える練習なので、どっちから始めるか迷ったらリップロールからで問題ありません。両方できる人は、リップロールで息と喉を整えてから、タングトリルで舌の脱力を確認する順番がおすすめです。タングトリルのやり方やできないときの対策はタングトリル(巻き舌)の解説で詳しく紹介しています。
リップロールとタングトリルを同時にやる方法
リップロールとタングトリル(巻き舌)を同時に行う練習もあります。唇と舌先を一緒に震わせるため、息の量がかなり安定していないと両方は続きません。やり方は、まずタングトリルで「ルルル」と舌先を震わせ、その状態のまま唇を軽く閉じてリップロールを重ねます。唇と舌の両方の脱力が同時にできているかを確かめる上級者向けの確認方法なので、どちらか一方が安定してから試してください。できなくても、それぞれを別々に練習すれば十分な効果があります。
ハミング・ストロー発声・バジングとの違い
リップロールと同じように、口の出口を狭めて喉の負担を減らす練習には、口を閉じて鼻に響かせるハミングや、ストローをくわえて声を出すストロー発声があります。ハミングは響き(共鳴)の位置をつかむのに向いていて、ストロー発声は唇が震えない人でも同じ原理の効果を得やすいのが特徴です。リップロールができない期間は、ストロー発声で代わりに練習するのも一つの方法です。
また、金管楽器の練習の「バジング」もリップロールと混同されやすいですが、バジングは唇を張って高い音程の振動をつくる奏法の基礎で、唇をゆるめるリップロールとは唇の使い方が逆です(次の章で詳しく扱います)。ハミングの詳しいやり方はハミングの解説を参照してください。
楽器・ビートボックス・スポーツでのリップロール
唇を震わせる動きは、歌の練習以外の場面にも登場します。吹奏楽の金管楽器の練習、ビートボックスやボイパの音、スポーツ選手のしぐさなど、同じ「唇ブルブル」でも目的や唇の使い方はさまざまです。歌のリップロールとの違いを知っておくと、練習の目的を取り違えずにすみます。
金管楽器のバジング(バズィング)との違い
トランペットやトロンボーン、ホルンなどの金管楽器は、唇を振動させて音を出す楽器です。吹奏楽部などでは、楽器やマウスピースだけを使って唇を「ブー」と鳴らす「バジング(バズィング)」という基礎練習を行います。
バジングとリップロールは、どちらも唇を震わせる点は同じですが、唇の張り方が正反対です。バジングは唇の中央を適度に張り、振動の速さを変えて音程をつくります。一方、歌のリップロールは唇の力を抜き、息に揺らされるままにします。管楽器を演奏する人がリップロールをするときは、楽器のときのように唇を張らないよう注意しましょう。逆に、金管楽器の練習の前後に唇の脱力としてリップロールを取り入れる人もいます。
フルートのように唇を振動させない管楽器や、口笛の練習でも、演奏前に唇の緊張をほぐす目的でリップロールをする人がいます。楽器ごとの唇の使い方(アンブシュア)は指導者によって考え方が異なるので、楽器の練習として取り入れる場合は、担当の先生の方針を確認するのが確実です。
ビートボックス・ボイパの「リップロール」
ビートボックスやボイパ(ボイスパーカッション)では、唇を震わせて低いうなりのような音を出す技が「リップロール」と呼ばれています。息を吐きながら鳴らす方法のほか、息を吸うときに唇を震わせる「インワード・リップロール」という技もあり、ベース音のような重い響きをつくるのに使われます。
名前は同じでも、ビートボックスのリップロールは「音として聞かせる」ための技で、声帯の負担を減らす発声練習とは目的が違います。ボイトレのリップロールは、息を吸うときではなく吐くときに、力を抜いて行うものと覚えておきましょう。
サッカー選手などスポーツでのリップロール
スポーツの場面でも、唇をブルブルさせるしぐさが見られることがあります。サッカーでは、マンチェスター・シティのアーリング・ハーランド選手が試合中に唇を高速で震わせる様子が中継に映り、SNSで話題になったことがスポーツメディアで報じられています。サッカー選手をはじめ、試合前やプレーの合間に息を吐きながら唇を震わせる選手の姿は珍しくありません。
息を長く吐き出す動作には、呼吸を整えて体の力みを抜く働きがあるため、緊張をほぐすしぐさとして自然に行われていると考えられます。ただし、選手一人ひとりがどんな目的でしているかは本人にしか分からないので、ここでは「リラックスのために息を吐く動作と共通している」という程度に受け止めておきましょう。
声優・声楽・合唱での使われ方
リップロールは、ポップスのボーカルだけでなく、声優の発声練習や、声楽・合唱のウォームアップでも広く使われています。合唱団では全員でリップロールをしながら音階を上下させ、声を温めてから本番の練習に入ることがよくあります。声優の発声練習では、滑舌練習の前に口のまわりの力みを取る準備として取り入れられることもあります。ジャンルが違っても「喉を締めずに声を出す準備」という目的は共通しています。
リップロールの顔・美容への効果は?ほうれい線・小顔・唇が厚くなる説
リップロールは口のまわりを動かす練習なので、「ほうれい線が消える」「小顔になる」「顔痩せする」といった美容効果を期待して調べる人もいます。反対に「唇が厚くなる」「たらこ唇になる」と心配する声もあります。ここでは、分かっていることと、根拠がはっきりしないことを分けて整理します。
ほうれい線・小顔・顔痩せへの効果
リップロールをすると、唇のまわりを囲む口輪筋や、頬の表情筋がやわらかく動きます。口元の力みが取れて表情がやわらかくなる、顔の血行がよくなって温かく感じる、といった変化を感じる人はいます。
しかし、リップロールでほうれい線が薄くなる、小顔になる、顔が痩せるといった効果は、きちんとした研究で確かめられたものではありません。リップロールは筋肉を鍛える筋トレというより、筋肉をゆるめる運動です。顔の筋肉の衰えやたるみを筋トレで改善したい場合は、美容の専門家に相談する方が確実です。リップロールの効果を美容目的で期待しすぎず、「表情がほぐれるおまけ」程度に考えておきましょう。
ダイエット効果はある?
リップロールで体が痩せる、ダイエットになるという効果も期待できません。数分間唇を震わせても、消費されるエネルギーはごくわずかです。ただし、ゆっくり長く息を吐く動作には体の力みをほどく働きがあるので、気分を落ち着けるリラックス法として取り入れるのは問題ありません。
唇が厚くなる・たらこ唇になるって本当?
リップロールで唇が厚くなる、たらこ唇になるという心配はほぼ不要です。練習の直後は、振動の刺激で血行がよくなり、唇が少しふっくら赤く見えることがありますが、これは一時的なもので、しばらくすると元に戻ります。リップロールで唇の形そのものが変わるという根拠は見当たりません。ただし、唇が荒れているときに強い息で何度も続けると、乾燥やひび割れが悪化することがあるので、唇のケアをしてから行いましょう。
ボトックスなど口元の施術を受けている場合
ボトックス注射やヒアルロン酸注入など、唇や口元に美容施術を受けた直後は、筋肉の動きや感覚が一時的に変わり、リップロールがやりにくくなることがあります。施術後に口元を動かす運動をしてよいかどうかは施術内容によって異なるため、必ず施術を受けたクリニックの医師に確認してから再開してください。
赤ちゃんのリップロールと、リラックス・緊張対策としての使い方
リップロールは、ボイトレを知らない赤ちゃんが自然にやり始めることもある、とても原始的な動きです。また、息をゆっくり吐く動作なので、緊張をほぐしたいときのリラックス法としても使われます。この章では、歌以外の場面でリップロールが話題になるケースをまとめます。
赤ちゃんがリップロールをするのはなぜ?いつから?
赤ちゃんが唇を震わせて「ブーブー」「ブルルル」と音を出すのは、よく見られるしぐさです。いつから始まるかには個人差がありますが、生後数か月ごろから見られることが多く、1歳、2歳になっても遊びの一つとして続ける子もいます。
赤ちゃんがなぜリップロールをするのかについては、唇や舌を動かして自分で音を出すことを楽しんでいる、口のまわりの動かし方を覚えている途中である、と説明されることが一般的です。言葉を話す前の段階で、声や口の動きを試している遊びの一つと考えてよいでしょう。発達の様子で気になることがあれば、乳幼児健診などで専門家に相談してください。
リップロールで赤ちゃんが泣き止むことがある理由
大人が赤ちゃんの前でリップロールをしてみせると、泣き止む、笑う、じっと見つめるといった反応をすることがあります。聞き慣れない面白い音や、口元の動きに注意が向くためと考えられますが、すべての赤ちゃんに効くわけではありません。唾が飛ぶことがあるので、顔に近づけすぎないようにしましょう。なお、リップロールそのものは何歳からでもでき、子どもから大人まで年齢制限のある練習ではありません。
自律神経・ストレス・緊張をやわらげる使い方
リップロールは、吸う息よりも吐く息を長くする呼吸になります。ゆっくり息を吐く呼吸は、体をリラックスさせる方向に自律神経を整える助けになると言われています。そのため、本番前の緊張や、ストレスで体がこわばったときに、気持ちを落ち着ける方法として使う人もいます。唇がブルブル震える感覚そのものが少しこっけいで、心理的に肩の力が抜けやすいという面もあるでしょう。
ただし、リップロールは病気の治療法ではありません。パニック障害や強い不安、吃音などで悩んでいる場合は、リップロールで治そうとせず、医師や言語聴覚士などの専門家に相談してください。専門家の指導のもとで、呼吸法の一つとして取り入れるのは問題ありません。
寝ながらの練習と、寝てる時に唇が震える場合
リップロールは寝ながら(あお向けの姿勢で)練習することもできます。あお向けになると肩や首の力が抜けやすく、お腹の動きも感じやすいので、力んでしまう人には良い練習姿勢です。
一方で、寝てる時に口から息が漏れて唇がブルブル震えている、と家族に言われる人もいます。これは口呼吸やいびきに近い状態で、発声練習のリップロールとは別のものです。いびきが大きい、日中に強い眠気があるなど気になる症状がある場合は、医療機関で相談してください。
よくある質問
- リップロールは毎日やった方がいいですか?
- 毎日やるのがおすすめですが、長時間は必要ありません。1日5分前後を、歌う前のウォームアップとして続けるのが効率的です。喉が痛い日や声がかすれる日は休みましょう。
- リップロールがどうしてもできない場合、代わりの練習はありますか?
- まずは指で頬を軽く持ち上げて支える方法を試してください。それでも難しい場合は、ストローをくわえて声を出すストロー発声や、ハミングでも、喉の負担を減らすという同じ仕組みの効果が得られます。
- リップロールで高い声を出すと裏声になってしまいます。失敗ですか?
- 失敗ではありません。音が高くなると声は自然に裏声寄りに切り替わります。唇の振動が止まらずに低い音から高い音までつながっていれば、正しく練習できています。
- リップロールとタングトリルはどちらが効果的ですか?
- 目的によって違います。喉や首の力みを取りたいならリップロール、舌の力みで声がこもるならタングトリルが向いています。迷ったら、できる人が多いリップロールから始めましょう。
- リップロールを続けると唇が厚くなりませんか?
- 練習直後に血行がよくなって一時的にふっくら見えることはありますが、唇の形そのものが変わるという根拠は見当たりません。唇が荒れているときは、ケアしてから行いましょう。
まとめ
リップロール(リップトリル)は、唇を息でブルブル震わせながら声を出す、ボイトレの基本の準備運動です。この記事の要点を振り返ります。
- 唇で口の出口を半分ふさぐことで、声帯が少ない力で振動でき、喉の力みが抜ける
- 効果は「喉の脱力」「息のコントロール」「声区のつながり」の3つ
- できない原因は、唇の力み・息の弱さ・乾燥や歯並びのどれかが多く、指で頬を支えると成功しやすい
- 1回10〜15秒、1日5分前後が目安。やりすぎると唇の疲れや喉の乾燥につながる
- 音階やサイレン、曲をリップロールで歌う練習に進み、その感覚を歌声に移すことが大切
リップロールは一人でも練習できますが、「息だけならできるのに声を乗せると止まる」「高音に行くと首に力が入る」といった細かなつまずきは、自分では原因が分かりにくいものです。プロのボイストレーナーに口元や喉の状態を見てもらえば、自分に合った直し方がすぐに分かります。体験レッスンを行っている教室も多いので、ボイトレ教室検索でお住まいの地域の教室を探してみてください。

