エッジボイスとは?意味・英語・語源をわかりやすく解説
エッジボイスの意味|簡単に言うとどんな声?
エッジボイスとは、声帯を軽く閉じたまま、ごく少ない息でゆっくり振動させて出す「ア゛ア゛ア゛…」というブツブツ・ジリジリした低い声のことです。簡単に言えば、寝起きのかすれた声や、ため息の最後に喉が「カラカラ」と鳴るときの音をわざと出し続けている状態です。1回1回の振動が耳で聞き分けられるほどゆっくりなので、なめらかな声ではなく、細かい粒がつながったような音に聴こえます。
発声の分類では、エッジボイスは地声(チェストボイス)よりもさらに下にあるいちばん低い声区として扱われます。ボイストレーニングでは「声帯を閉じる感覚をつかむ練習」として使われ、歌では歌い出しや語頭に短く入れて、ささやくような色気や切なさを出す表現として使われます。つまりエッジボイスには「練習のための声」と「表現のための声」という2つの顔があります。
エッジボイスは英語で何という?スペル・別名・言い換え
エッジボイスをそのまま英語のスペルにすると「edge voice」ですが、英語圏でこの発声を指す一般的な言い方はvocal fry(ボーカルフライ)です。ほかに creaky voice(クリーキーボイス=きしむ声)、glottal fry(グロッタルフライ)、pulse register(パルス音区)とも呼ばれ、音声学では creak(クリーク)と書かれることもあります。日本語の言い換えとしては「ボーカルフライ」「フライ」「パルス声区」「ボーカルフライ・レジスター」あたりが同じものを指します。
注意したいのは、英語圏のボイトレ理論の一つである CVT(Complete Vocal Technique)には「Edge」という発声モードがあり、こちらは明るく鋭い、大音量寄りの声を指す別の用語だという点です。海外の教材で「edge」と出てきたときは、日本でいうエッジボイス(ボーカルフライ)とは別物の可能性があるので、文脈で見分けましょう。
「エッジ」の由来・語源と中国語での呼び方
「エッジ(edge)」は英語で「ふち・きわ・ギリギリ」という意味です。日本で「エッジボイス」と呼ばれるようになった由来ははっきりした記録がありませんが、声帯が閉じるか閉じないかのギリギリのところで鳴らす声だから、あるいは声にギザギザした角(エッジ)が立つから、という説明がよくされます。英語の vocal fry の語源は、揚げ物(fry)をするときの「パチパチ」という油の音に似ていることです。
中国語(中文)では、エッジボイスを「气泡音(チーパオイン)」と呼ぶのが一般的です。「泡がはじけるような音」という意味で、こちらも1回1回の振動が粒のように聴こえる特徴から名付けられています。日本語・英語・中国語のどれも「粒」「パチパチ」という音のイメージから名前が付いているのが面白いところです。
エッジボイスの身近な例え|呪怨・貞子・ゾンビ・猫・いびき
実際の音のサンプルとしていちばん有名なのは、ホラー映画『呪怨』で伽椰子(かやこ)が出す「ア゛ア゛ア゛ア゛…」という喉を鳴らす音です。この音は清水崇監督自身が声をあてたものとして知られ、ボイトレの現場でも「呪怨の声」と説明されるほどエッジボイスそのものの音です。『リング』の貞子や、ゾンビ映画でゾンビが出すうめき声のイメージで説明されることもあります。
ホラー以外の例では、次のような音がエッジボイスに近い音として挙げられます。
- いびき:喉がゆるんだ状態で、息が通るたびにゴロゴロ鳴る音
- ゲップを我慢したときの音:喉の奥で「グ…」と小さく途切れる感覚
- 猫がのどを鳴らす音:ゴロゴロと一定のリズムで粒が続く感じ(仕組みは人の声とは別物です)
- 寝起きの声や、ため息の終わり:息が尽きかけたときに「ア゛…」と鳴る声
どれも「力まずに」「少ない息で」出ている音だという点が共通しています。怖い声や汚い音のイメージが強いかもしれませんが、歌の中では音量をしぼって短く使うので、実際にはやわらかく色っぽい響きとして聴こえます。
エッジボイスの仕組み|声帯・声帯閉鎖・周波数の関係
声帯はどこでどうなっている?エッジボイスのときの声帯の状態
声帯は喉仏(甲状軟骨)の内側にある、左右一対のひだです。息を吐くと左右の声帯が近づいて振動し、その振動が声の元の音になります。エッジボイスのときの声帯の状態をひと言でいうと、「短く・厚く・ゆるんだまま、しっかり閉じている」状態です。
声帯のまわりの筋肉で見ると、声帯を閉じる側の筋肉(閉鎖筋と呼ばれる外側輪状披裂筋・披裂筋など)は働いて声帯を中央に寄せている一方、声帯を前後に引き伸ばして声を高くする輪状甲状筋はほとんど休んでいます。声帯そのものである甲状披裂筋も力を抜いたままなので、声帯は分厚くたるんだ状態になります。そこへごく少量の息が通ると、閉じていた声帯が「パッ」と一瞬だけ開いてはまた閉じる、という動きを繰り返します。これがエッジボイスの原理です。
普通の地声と比べると、エッジボイスは声帯が閉じている時間が長く、開いている時間が一瞬です。声帯閉鎖(声門閉鎖)がしっかり起きていないと出ない声なので、ボイトレでは「声帯がきちんと閉じているか」を確かめる目安として使われます。喉仏は下がりも上がりもしない楽な位置にあり、喉の外側の筋肉に力が入っていないのが正しい状態です。
周波数と倍音|なぜブツブツした粒の音になるのか
声の高さは、声帯が1秒間に何回振動するか(周波数)で決まります。話し声の平均は成人男性でおよそ100〜150Hz、成人女性でおよそ200〜250Hzですが、エッジボイスはおおむね20〜70Hz前後という非常に低い周波数で鳴ります。1秒に数十回しか振動しないため、人の耳には1つの音程としてではなく、1回1回の「ブツッ」という粒が連なった音として聞こえます。これがエッジボイス独特の粒感の正体です。
音の中身(倍音)も特徴的です。振動が不規則になりやすく、基本の音よりも低い成分(サブハーモニクス)や雑音成分が混ざるため、澄んだ響きではなくザラッとした音色になります。一方で、声帯がしっかり閉じてから開くので、1粒ごとの立ち上がりははっきりしています。この「閉じてから鳴る」感覚を身体で覚えることが、後で説明するエッジボイスの練習効果につながります。
なお、エッジボイスはその人の最低音よりもさらに下で鳴らせることがあります。音域表でいう最低音は「音程として聴こえるいちばん低い音」なので、エッジボイスの粒は音域には含めないのが一般的です。低音を伸ばしたい人がエッジから地声へつなぐ練習をするのはこのためです。
エッジボイスに仮声帯は関係する?
声帯(真声帯)のすぐ上には、仮声帯(室ひだ)というもう一対のひだがあります。通常のエッジボイスで振動しているのは真声帯の方で、仮声帯は開いたままが基本です。仮声帯まで寄ってきて一緒に振動すると、がなり声やデスボイスのような、より荒々しく音量の大きい歪みになります。
喉を締めて出したエッジボイスは、仮声帯が寄ってきて「ギュッ」と詰まった苦しい音になりがちです。練習では、力を抜いてため息のように鳴らせているかを確認しましょう。仮声帯の位置や役割、分離の考え方は仮声帯とはの記事で詳しく解説しています。
エッジボイスの効果・メリット|なんのために練習する?
エッジボイスを何に使うのか、その使い道は大きく分けて「練習としての効果」と「歌の表現」の2つです。ボイトレの先生がエッジボイスを練習メニューに入れるのは、主に前者のためです。
効果1:声帯を閉じる感覚(声帯閉鎖)がつかめる
エッジボイスは、声帯が閉じていないと鳴りません。逆にいえば、エッジの粒が鳴っている=声帯が閉じているという、目に見えない声帯の状態を耳で確認できる数少ない方法です。「声帯閉鎖」と言われてもピンと来ない人でも、エッジボイスを鳴らしてから普通の声に移ると、閉じた状態から声を出す感覚がつかみやすくなります。声帯閉鎖の考え方そのものは声帯閉鎖とはの記事でくわしく説明しています。
効果2:息漏れが減り、声に芯が出る
声がスカスカする、息っぽい、マイクに乗らないという悩みの多くは、声帯が閉じきらずに息漏れしていることが原因です。エッジボイスの練習で閉じる感覚が身につくと、同じ息の量でもしっかり鳴る、芯のある声に変わっていきます。声量を無理に上げなくても声が前に出るようになるのがメリットです。
効果3:ミックスボイスや高音の土台になる
ミックスボイスは、高い音でも声帯の閉鎖を保ったまま、地声と裏声の中間の響きで歌う発声です。高音になると声帯が引き伸ばされて閉じにくくなるため、裏声に抜けてしまったり、逆に喉を締めて押し上げてしまったりします。そこで、エッジで閉じた感覚を保ったまま音を上げていく練習が、ミックスボイスや高音を楽に出す土台として使われます。具体的なつなげ方は後半の「歌での使い方」の章で紹介します。
効果4:喉のウォーミングアップとリラックス
エッジボイスは小さな音量と少ない息で出す声なので、喉に強い負担をかけずに声帯を動かし始められます。歌う前のウォーミングアップとして、リップロールやハミングと並べて取り入れる人が多い練習です。また、力んでいると鳴らない声なので、喉の力が抜けているかどうかのチェックにもなります。その意味では、正しく出せば喉にいい練習と言えます。
効果5:歌の表現が広がる
練習以外のメリットとしては、歌の表現の幅が広がることが挙げられます。歌い出しの一音目に短くエッジを入れると、ささやくような色気や、切なさ・ため息のようなニュアンスを出せます。バラードでは感情の揺れ、ロックでは荒々しさを表現するのに応用されます。話し声では、低く落ち着いた「イケボ」の印象をつくる要素にもなります。
「エッジボイスは意味ない」と言われるのはなぜ?
ネット上では「エッジボイスの練習は意味ない」という声も見かけます。これは、エッジを鳴らすこと自体が目的になってしまうと、歌はうまくならないという意味で言われることがほとんどです。エッジボイスはあくまで「閉じる感覚」を覚えるための道具で、その感覚を地声やミックスボイスに持ち込んではじめて効果が出ます。また、すでに声帯閉鎖が強すぎて喉を締めがちな人にとっては、エッジの練習より息を流す練習のほうが優先になることもあります。自分の課題に合っているかを確かめながら取り入れましょう。
エッジボイスのデメリット|喉に悪い?痛めるって本当?
正しく出せば喉への負担は小さい
エッジボイスは「喉に悪い」「喉を痛める」と言われることがありますが、力まずに小さな音量で出すエッジボイスそのものは、喉への負担が小さい発声です。息の量も声帯を打ち合わせる強さも小さいため、大声で歌うよりずっと穏やかな動きで済みます。問題になるのは、次のような「間違った出し方」をしたときです。
- 喉締め:首や喉の外側に力を入れて、絞り出すように鳴らしている
- 押しつけすぎ:粒を大きくしようとして声帯を強く押しつけ、ギリギリと鳴らしている
- やりすぎ・多用:何十分も続けて練習する、歌の全フレーズにエッジを入れる
- 喉の状態が悪いときに無理をする:風邪・声枯れ・乾燥のときにも練習を続ける
喉締めで出したエッジは、喉声(喉だけで鳴らした詰まった声)の癖を強めてしまうこともあります。エッジボイスのデメリットは「声そのもの」よりも「出し方と量」の問題だと考えてください。
喉が痛い・疲れる・苦しいときは中止のサイン
練習中や練習後に喉が痛い、ヒリヒリする、喉が疲れる、息が苦しいと感じたら、出し方が間違っているか量が多すぎるサインです。すぐに練習をやめて喉を休めましょう。特に次の症状が出たときは要注意です。
- 咳が出る・咳き込む・むせる:喉を締めすぎているか、喉が乾燥しています。水を飲んで休みましょう。
- 痰がからむ:練習で喉の粘膜が刺激されると痰が出やすくなります。強い咳払いで出そうとせず、水分をとって自然に流れるのを待ちます。
- 吐きそうになる:舌の付け根や喉の奥に力が入り、嘔吐反射を刺激していることがあります。口を軽く開け、舌を前歯の裏に置いて力を抜きます。
- 声枯れ・かすれが翌日まで続く:練習量が多すぎます。数日は練習を休みましょう。
声帯ポリープの心配と病院に行く目安
エッジボイスの練習だけで声帯ポリープができるとは言えませんが、喉締めで強く押しつけた発声を長時間くり返すと、声帯に負担が積み重なるのは確かです。ポリープや声帯結節は、声の使いすぎや無理な発声が続いたときに起こりやすいとされています。
声がれが2週間以上続く、話すだけで喉が痛い、声が出しにくいといった症状があるときは、自己判断で練習を続けず、耳鼻咽喉科を受診してください。歌う人の喉を専門に診る音声外来のある病院もあります。喉の状態が戻るまでは、エッジボイスを含むすべての発声練習を休むのが基本です。
エッジボイスと地声・裏声・ミックスボイスの違い
エッジボイスと他の声区の違いは、声帯がどれくらい伸びているかとどれくらいしっかり閉じているかの2つで整理するとわかりやすくなります。
| 声の種類 | 声帯の伸び | 閉じ方 | 聴こえ方 |
|---|---|---|---|
| エッジボイス | 最もゆるむ | 強い | ブツブツした粒・音程は曖昧 |
| 地声(チェストボイス) | ゆるめ・厚い | 強い | 太く力強い |
| ミックスボイス | 伸びる | 中〜強 | 高くても芯がある |
| 裏声(ファルセット・ヘッドボイス) | よく伸びる | 弱〜中 | やわらかく高い |
| ホイッスルボイス | 一部だけ鳴る | 部分的 | 笛のように極端に高い |
エッジボイスと地声(チェストボイス)の違い
地声とエッジボイスは、どちらも声帯が厚く、しっかり閉じている点で近い仲間です。違いは息の量と振動の速さです。地声は息をしっかり流して声帯を速く規則的に振動させるので、はっきりした音程のある声になります。エッジボイスは息をほとんど流さず、ゆっくり不規則に振動させるので粒に聴こえます。エッジボイスに息を少しずつ足していくと、そのまま地声に変わるので、この2つは練習で行き来しやすい組み合わせです。地声の仕組みはチェストボイスとはで解説しています。
エッジボイスと裏声(ファルセット・ヘッドボイス)の違い
裏声はエッジボイスのほぼ逆です。声帯を薄く引き伸ばし、閉じ方もゆるめにして、息を多めに流して出します。そのため、エッジボイスが「閉じる練習」なら、裏声は「伸ばす練習」と言えます。裏声のうち、息が多くやわらかいのがファルセット、閉鎖を強めて芯を持たせたのがヘッドボイスです(詳しくはファルセットとは・ヘッドボイスとは)。裏声でエッジボイスを出すことや、エッジと裏声を混ぜる練習については、後の章で説明します。
エッジボイスとミックスボイスの違い
ミックスボイスは、地声と裏声の中間の響きで高音を歌う発声で、エッジボイスとは目的も音域もまったく違います。関係としては、エッジボイスで覚えた「閉じる感覚」を高音でも保てるようになったものがミックスボイス、と考えるとわかりやすいでしょう。つまりエッジボイスはミックスボイスの材料であり、エッジが出せたからといってミックスが完成するわけではありません。ミックスボイス全体の出し方はミックスボイスとはの記事にまとめています。
エッジボイスとホイッスルボイスの違い
ホイッスルボイスは声区のいちばん上にある、笛のような超高音です。エッジボイスがいちばん下の声区なので、声区の両端にある正反対の声と言えます。ただし、どちらも「普通の歌声とは違う特殊な振動」で、少ない息で出すという点は共通しています。ホイッスルボイスの練習の入口としてエッジボイスの感覚を使う指導者もいます。
エッジボイスとがなり・シャウト・ハスキーボイスなどの違い
エッジボイスは「ザラついた声」の仲間として、がなりやシャウト、ハスキーボイスと混同されやすい声です。違いはどこが振動しているかと音量の大きさで整理できます。
エッジボイスとがなり(がなり声)の違い
エッジボイスとがなりの違いは、検索でもいちばん多い疑問の一つです。結論から言うと、エッジボイスは小さな音量で声帯だけをゆっくり鳴らす声、がなり声は大きな音量の声に仮声帯などの振動を足して歪ませる声です。エッジボイスは単体で出せますが、がなりは地声やミックスボイスの上に「ザラつき」を重ねるもので、しっかりした声量と息の支えが必要です。
ただし、がなりの入り口としてエッジボイスが使われることはよくあります。エッジで粒を鳴らしながら息を強めていくと、ザラつきを保ったまま音量が上がり、がなりに近づいていきます。がなりの出し方や喉を痛めないコツはがなり声とはの記事で解説しています。
エッジボイスとシャウト・グロウル・デスボイスの違い
シャウトは叫ぶような大音量の声、グロウルは喉の奥でうなるように低く歪ませた声、デスボイスはメタルなどで使われる極端に歪んだ声の総称です。どれも大きな息と仮声帯・喉頭まわりの振動を使うため、エッジボイスよりはるかに強い歪みになります。ただし「エッジから入って歪みを足す」という練習の流れは共通していて、エッジボイスはこれらの声の基礎練習としても使われます。デスボイスやグロウルは喉への負担が大きいので、独学で無理をせず、指導者のもとで練習するのが安全です。
エッジボイスとハスキーボイスの違い
ハスキーボイスは、息が混ざったようなかすれた声質のことで、多くはその人の生まれ持った声の特徴を指します。声帯が完全には閉じきらずに息が漏れていることが多く、その点でしっかり閉じて鳴らすエッジボイスとは逆の状態です。ハスキーは「声質」、エッジボイスは「発声のテクニック」という違いもあります。ハスキーな声の人がエッジボイスを練習すると、息漏れが減って声に芯が出る効果が期待できます。
エッジボイスとウィスパーボイス・こぶしの違い
ウィスパーボイスは、息を多く混ぜてささやくように出す声で、声帯はあまり閉じていません。エッジボイスとは「閉じる・閉じない」が逆ですが、どちらも音量の小さい繊細な表現に使われるため、歌い出しで「エッジ→ウィスパー」と続けて使うテクニックもあります(ウィスパーボイスとは)。
こぶしは、音程を細かく上下させて節を回す技法で、エッジボイスのような声質の変化ではなく音程の動きによる表現です。演歌や民謡で多く使われ、エッジとは別物ですが、こぶしの回し始めにエッジを添える歌い方もあります(こぶしとは)。
エッジボイスの出し方|初心者でもできる5ステップ
エッジボイスの正しいやり方は、「力を抜く」「息を減らす」「低く・小さく鳴らす」の3つに尽きます。大きな声や高い声で出そうとすると失敗しやすいので、まずは話し声よりも低く小さい音から始めましょう。
ステップ1:首・肩・喉の力を抜く
椅子に座るか楽に立ち、肩を一度すくめてストンと落とします。首をゆっくり回し、あくびをするように口を軽く開けて、喉まわりをリラックスさせます。エッジボイスは力を込めないと出ないと感じる人ほど、実は力みが邪魔をしている声です。舌は前歯の裏に軽く触れる位置に置き、あごは落とすだけにします。
ステップ2:ため息の終わりを小さく鳴らす
口を半開きにして、「はぁ〜」と力の抜けたため息をつきます。ため息の最後、息がほとんど残っていないところで、声を少しだけ混ぜて「あ〜…」と小さく鳴らしてみましょう。息が尽きかけたときに「ア゛…」と途切れるように鳴る音が出たら、それがエッジボイスの入り口です。
ステップ3:低い声で「あ゛」の粒を出す
次は、話し声よりも低い声で「え〜っと…」と考えごとをしているときのように、「あ゛あ゛あ゛」と鳴らします。ポイントは音量を極限まで小さくすることと息をほとんど吐かないことです。息を強く吐くと普通の声になり、喉を締めると詰まった音になります。口の前にティッシュをかざしても揺れないくらいの息の量が目安です。
ステップ4:粒を揃えて長く伸ばす
「あ゛あ゛あ゛」が出たら、そのまま5〜10秒ほど伸ばしてみます。最初は粒がバラバラでも構いません。慣れてきたら、粒の間隔が一定になるように、息の量をほんの少しずつ調整します。粒が途切れる人は息が足りず、粒が消えて普通の声になる人は息が多すぎます。
ステップ5:いろいろな母音でエッジを出す
「あ」で安定したら、「え・い・お・う」の母音でも同じようにエッジを鳴らします。母音によって舌やあごの位置が変わるので、どの母音でも力まずに鳴らせるかを確認しましょう。最後に、エッジから声を出して「あ゛あ゛あ〜」と普通の声につなげる練習をすると、実際の歌で使える形になっていきます。
エッジボイスを出すコツと注意点
- 小さい音から始める:音量を上げたい気持ちは後回し。最初は自分にだけ聞こえる程度で十分です。
- 低い声で出す:エッジボイスは低い声のほうが出しやすく、高くなるほど難しくなります。
- 息漏れを気にしない:最初は息っぽい音が混ざっても構いません。粒が出る範囲で息を少しずつ減らします。
- 鏡で首と肩を見る:首の筋が浮き出ていたら力みすぎです。
- 短く区切る:1回10秒程度、数回ずつ。長時間続けないのが正しい発声のコツです。
高音・低音・裏声でのエッジボイスと男女別の出し方
エッジボイスの音域|低音ほど出しやすく、高くなるほど難しい
エッジボイスは本来、声区のいちばん下にある低い声なので、話し声より低い高さでいちばん楽に出ます。音の高さを上げていくと、声帯が引き伸ばされて閉じにくくなるため、粒が消えて普通の地声に変わってしまいます。つまり「エッジボイスの音域」は人それぞれの最低音あたりから話し声の高さくらいまでが中心で、それより上はエッジ単体ではなく地声やミックスボイスにエッジの成分を添える形になります。
音程についても同じで、エッジボイスそのものは粒の音なので、はっきりした音程を持ちません。歌でエッジを使うときは、エッジの粒から入ってすぐに正しい音程の声に移ることで、音程を外さずにニュアンスだけを足します。
高音でエッジボイスを出す方法
高い声・高い音でエッジを出したいときは、いきなり高音でエッジを鳴らそうとせず、次の順番で高さを上げていきます。
- 低い音でエッジを鳴らし、粒を安定させる
- エッジを鳴らしたまま、サイレンのようにゆっくり音を高くしていく
- 粒が消えそうになったところで止め、その高さで「エッジ→声」を短くくり返す
- 慣れてきたら、目標の高さで語頭だけに一瞬エッジを入れる
高くなるほど粒が消えやすいのは正常な反応です。無理に粒を残そうと喉を締めると、喉声や喉を痛める原因になります。「高温でエッジが出ない」と表記されることもありますが、高音でエッジが出にくいのは誰でも同じなので、焦らず低い音から高さを広げていきましょう。
裏声でエッジボイスを出す方法
裏声でのエッジは「できない」と感じる人が多い発声です。裏声は声帯が薄く伸びて閉じ方も弱いため、エッジの粒が起きにくいのです。出し方としては、まず地声でエッジを鳴らし、そのまま「ア゛ア゛ア〜↑」と裏声へひっくり返すように音を上げます。裏声に切り替わった直後に一瞬だけ粒が残る感覚があれば成功です。この練習は、裏声にも閉鎖を持たせて芯のあるヘッドボイスに近づける効果があります。
男性・女性のエッジボイスの出し方の違い
エッジボイスの仕組み自体は男女で同じですが、声の高さが違うため感じ方に差があります。男性は話し声が低いので、普段の声のまま少し低くするだけでエッジに入りやすい傾向があります。女性は話し声が高めなので、意識的に話し声より1〜2段低いところまで下げると出しやすくなります。
- 男性の出し方のポイント:低音を押しつけて太く鳴らしがちなので、音量を小さくして粒を細かくするのがコツ。「ゴロゴロ」ではなく「ジリジリ」を目指します。
- 女性の出し方のポイント:低い音に下げるとき、あごを引いて喉を押し下げないように注意します。女声の場合は、ため息の最後に鳴る「ア゛…」をそのまま伸ばす方法が合いやすいです。
女性だからエッジボイスが出せない、ということはありません。女性歌手でもエッジを効果的に使う人は多く、後半の歌手一覧でも紹介しています。
吸いながら出すエッジボイス(吸気のエッジ)とは
息を吸うときにもエッジボイスは鳴る
エッジボイスは息を吐きながら出すのが基本ですが、息を吸いながら鳴らすこともできます。これを吸気のエッジ(インヘイルのエッジ、吸気発声)と呼びます。息を吸う方向に空気が流れるときも、声帯が軽く閉じていれば同じように粒が鳴ります。吸いながら「ア゛ア゛ア゛」と鳴らすと、ホラー映画のような不気味で引きつった音になるのが特徴です。
インターネット上では「エッジボイスは吸いながら出すもの」と説明されていることもありますが、ボイストレーニングで基本として練習するのは吐く息で出すエッジボイスです。歌の中で使うのも吐くエッジで、吸うエッジは効果音的な特殊な使い方だと考えてください。
吸気のエッジボイスの使い道|ビートボックス・デスボイス・効果音
吸いながら鳴らすエッジは、次のような場面で使われます。
- ビートボックス:吸う息で鳴らす音は、吐く音と組み合わせて息継ぎなしでリズムを続けるのに便利です。吸気のエッジでベースのような低いうなり音をつくる奏者もいます。
- デスボイス・スクリーム:メタルなどで、息を吸いながら出す歪んだ叫び(インヘイル・スクリーム)の入口として使われます。
- ホラー・ゾンビの声まね、声優の効果音:うめき声や息を呑む音など、キャラクターの呼吸音を演じるときに使われます。
吸いながら出すときの注意点
吸気の発声は、吐く発声よりも声帯や喉の粘膜が乾きやすく、むせたり咳き込んだりしやすい発声です。練習するなら1回数秒・数回までにとどめ、喉が乾いたらすぐに水を飲みましょう。特に吸気のデスボイスは喉への負担が大きいため、独学で長時間練習するのは避けてください。歌のためのエッジボイスを身につけたいだけなら、吸気の練習は必須ではありません。
エッジボイスの練習方法・鍛え方|毎日のトレーニングメニュー
エッジボイスが出せるようになったら、次は「安定させる」「地声につなげる」「歌に使う」の順でトレーニングしていきます。ここでは、ボイトレでよく使われる練習方法を目的別に紹介します。
練習1:ウォーミングアップ(リップロール・ハミング)
エッジボイスの前に、リップロールやハミングで唇と喉をほぐしておきます。リップロールは唇を「プルルル」と震わせながら声を出す練習で、息を一定に流す感覚と喉の脱力が同時に身につきます。ハミングは口を閉じて「ん〜」と響かせる練習で、力まずに声を出す準備になります。それぞれのやり方はリップロールとは・ハミングとはで解説しています。
練習2:エッジのロングトーン
「あ゛あ゛あ゛」を1回10秒程度、粒の間隔が揃うように伸ばします。粒が途中で途切れたり、急に普通の声に変わったりしないように、息の量を一定に保つのが目標です。これはエッジボイス版のロングトーンで、声帯を閉じたまま息を少しずつ送る、細やかな息のコントロールが身につきます。腹式呼吸でお腹から息を支えると、息の量が安定しやすくなります(腹式呼吸とは)。
練習3:エッジから地声へつなぐ(エッジ→声)
エッジボイスの練習でいちばん効果が大きいのがこのメニューです。「あ゛あ゛あ゛ああああ〜」と、エッジの粒から始めて、息を少し足しながら普通の声に移ります。エッジで閉じた感覚を保ったまま声になるのがポイントで、これができると息漏れの少ない、芯のある声の出し始めが身につきます。慣れたら「ド・レ・ミ」と音階を上げながら同じことをくり返します。
練習4:エッジのスタッカートと短い発声
「ア゛ッ・ア゛ッ・ア゛ッ」と、エッジを短く区切って鳴らします。1回ごとに声帯を閉じて開く動きをくり返すので、閉じる動作をすばやくする練習になります。歌い出しで一瞬だけエッジを入れる表現の基礎にもなります。
エッジボイスを強く・大きくするには?声帯の筋トレは必要?
エッジボイスの音量や声量を大きくしたい、粒を強くしたいという人は多いですが、エッジボイスそのものを大きく強くする必要はありません。エッジは小さく鳴らしてこそ喉に優しく、練習効果もあります。エッジが弱いと感じる場合は、次の点を確認しましょう。
- 粒が細かすぎて聞こえないだけなら、息をほんの少しだけ減らすと粒がはっきりします。
- 音量を上げたいなら、エッジ単体ではなく「エッジ→地声」の地声側で音量を上げます。
- ザラつきを強くしたいなら、それはエッジボイスではなくがなりの領域です。
「声帯の筋トレ」という言い方もされますが、エッジボイスの練習は筋肉を太くするトレーニングではなく、声帯を閉じる動きを正確にするための練習です。回数や強さで鍛えようとせず、小さく正確に鳴らすことで閉鎖の感覚が強化されていきます。
練習時間は何分?毎日やるべき?
エッジボイスの練習時間は、1日5〜10分程度を目安にしてください。1回10秒ほどの発声を数回ずつ、合間に休憩を入れながら行います。長く続けるより、毎日少しずつ続けるほうが感覚が定着します。
歌の練習の前にこのメニューを入れると、発声練習とウォーミングアップを兼ねることができます。喉が疲れたと感じたら、時間が残っていてもその日の練習は終わりにしましょう。独学で感覚がつかめない場合は、ボイトレ教室でボイストレーニングの先生に直接聴いてもらうのが近道です。
エッジボイスができない・出ない・安定しない原因と対策
エッジボイスは生まれつき?できる人・できない人の違い
「エッジボイスは生まれつき出せる人と出せない人がいるの?」という疑問はよく聞かれます。結論として、エッジボイスは生まれつきの才能ではなく、ほとんどの人が練習で出せるようになる発声です。寝起きの声やため息の終わりには、誰でも一瞬エッジが混ざっています。
最初からすぐにできる人・得意な人は、普段から低い声で話す癖がある、喉の力が抜けやすいといった理由で、すでにエッジの感覚を知っていることが多いだけです。逆に、エッジボイスが苦手・難しいと感じる人は、高めの声で話す習慣がある、発声のときに喉に力が入りやすい、といった傾向があります。難易度で言えば、ボイトレの発声の中では比較的やさしい部類に入ります。上手い人の「すごい」エッジも、小さく正確に鳴らす練習の積み重ねでできています。
エッジボイスが出ない・出せない原因と対策
エッジボイスが出ない・出せないときの原因は、ほとんどが次の3つのどれかです。
- 息が多すぎる:息を吐きすぎると声帯が閉じる前に普通の声になってしまいます。ため息の終わり、息が残り少ないところで鳴らしてみましょう。
- 喉が力んでいる:力を込めないと出ないと感じて喉を締めると、詰まった音になって粒が出ません。音量を最小にし、あくびの口で力を抜きます。
- 音が高すぎる:話し声のままではエッジに入りにくい人もいます。話し声より低い、少しだらしないくらいの声まで下げます。
できない人がやりがちなのは、「エッジっぽい音」をまねしようとして喉で雑音を作ることです。エッジの粒は声帯の振動なので、喉を鳴らすのではなく、声を減らしていく方向で探すと見つかりやすくなります。
エッジボイスが安定しない・途切れる・続かないとき
エッジは出るけれど安定しない、粒がバラバラになる、途切れる、数秒しか続かないという場合は、息の量が一定になっていないのが原因です。対策は次の通りです。
- 口の前に手のひらをかざし、息がほとんど当たらない状態で鳴らす
- お腹を軽く張ったまま、少しずつ息を送り続ける(腹式呼吸の支え)
- 最初は3秒、慣れたら5秒、10秒と少しずつ伸ばす
また、エッジがかすれる、息漏れして「スー」という音が混ざる場合は、声帯の閉じ方がやや弱い状態です。息を減らすか、ほんの少しだけ声を足して粒をはっきりさせましょう。
エッジボイスができなくなった・出なくなったときは
以前はできていたのに急にできなくなった・出なくなったという場合、多くは喉のコンディションが原因です。風邪や乾燥で声帯がむくんでいると、閉じ方が変わって粒が出にくくなります。まずは水分をとって喉を休め、数日様子を見ましょう。
反対に、朝の寝起きはエッジが出やすいことがよく知られています。寝ている間に声帯がゆるみ、少しむくんでいるため、少ない息でも振動しやすいからです。ただし寝起きの声帯は準備ができていない状態でもあるので、朝いきなり強く歌うのは避け、軽いエッジやハミングで少しずつ声を起こすようにしましょう。症状が長引く、痛みがある場合は耳鼻咽喉科を受診してください。
話し声のエッジボイス|癖になる原因と直し方・消し方
話し声・喋り声にエッジが混ざるのはなぜ?
エッジボイスは歌だけのものではありません。普段の会話でも、文の終わりや語尾で声が低くなったとき、息が足りなくなったときに、無意識にエッジが混ざっています。特に語尾で声が低くなる話し方をする人や、疲れているとき、低い声で落ち着いて話そうとしたときに勝手になることが多いです。
英語圏では、若い世代の話し方として「vocal fry」が話題になったことがあります。語尾をエッジで落とす話し方がリラックスした印象を与える一方、聞き手によっては自信がなさそう・だらしないと受け取られる、という研究や議論もあります。日本語の会話でも同じで、エッジの混ざった話し声は、落ち着いた低い声の魅力(いわゆるイケボ)になることもあれば、聞き取りにくさの原因になることもあります。
エッジボイスが嫌い・気持ち悪いと感じる人もいる
エッジボイスの好き・嫌いは人によって大きく分かれます。歌の中で効果的に使われたエッジを好きな人は多い一方、多用されると「気持ち悪い」「汚い」「耳障り」「不快」と感じる人もいます。特に、歌のすべてのフレーズにエッジを入れたり、話し声がずっとエッジ混じりだったりすると、わざとらしく聴こえやすくなります。エッジボイスは「ここぞ」という場所で短く使うほど効果的で、使いすぎは逆効果になると覚えておきましょう。
話し声のエッジボイスの癖を直す方法(なくす方法・消し方)
普段から話し声にエッジが常に混ざってしまう、声が低くなる癖を直したい、という場合は、次の方法でエッジを抜いていきます。
- 語尾まで息を残す:文の最後まで息が残るように、一文を短く区切って話します。語尾で息が尽きることがエッジの一番の原因です。
- 話し声の高さを少し上げる:普段の声より半音〜1音ほど高いところで話すと、声帯がゆるみすぎず、エッジが混ざりにくくなります。
- 語尾を伸ばさない:「〜ですねぇ」と語尾を低く伸ばすとエッジになりやすいので、語尾をはっきり切ります。
- ハミングで声の位置を整える:話す前に「ん〜」とハミングして、鼻のあたりに響く明るい声の位置を確認してから話し始めます。
これらは歌の中でエッジが勝手に入ってしまうときのエッジの抜き方としても有効です。癖は一度には治らないので、録音して自分の話し方を聞き返しながら、少しずつ直していきましょう。なお、エッジの癖ではなく、声がかすれる・低くなる状態が続く場合は、声帯の病気が隠れていることもあります。治し方を自己判断せず、耳鼻咽喉科で相談してください。
歌でのエッジボイスの使い方|いつ・どこで使う?カラオケのコツ
エッジボイスはどこで使う?歌い出し・語頭・語尾
ボーカルでエッジボイスを使う場所は、主に次の3つです。
- 歌い出し(フレーズの一音目):いちばん使われる場所です。「あ゛いしてる」のように一音目の頭を一瞬エッジから入ると、ため息まじりの色っぽさや切なさが出ます。
- 強調したい言葉の語頭:サビのキーワードやタイトルの言葉の頭にエッジを入れると、その言葉が浮き立って聴こえます。
- 語尾・フレーズの終わり:伸ばした音の最後をエッジで落とすと、力が抜けていく余韻や、吐き捨てるようなニュアンスになります。
いつ使うかの判断基準は、歌詞の感情が大きく動く場所です。どこにでも入れるのではなく、「ここを聴かせたい」という意思を持って選んだ場所にだけ入れると、エッジが表現として生きてきます。
母音・子音とエッジの入れ方
エッジが入れやすいのは「あ・い・う・え・お」の母音で始まる言葉です。「あいしてる」「いつか」のように母音から始まる語頭では、母音の直前にエッジの粒を置くだけで自然に入ります。一方、「かなしい」「さよなら」のように子音で始まる言葉では、子音の後ろの母音にエッジを添えるか、子音を弱めに発音してエッジの粒とつなげます。無理に子音の前にエッジを置くと言葉が聞き取りにくくなるので、歌詞がはっきり伝わるかを優先しましょう。
エッジボイスと裏声・ミックスボイスを混ぜる応用
エッジボイスの応用として、裏声やミックスボイスに混ぜるテクニックがあります。
- エッジ→裏声:エッジから入ってすぐ裏声に抜けると、泣きそうなかすれ声のような表現になります。バラードのサビで多く使われます。
- エッジ→ミックスボイス:高音の語頭にエッジを一瞬入れてからミックスボイスで伸ばすと、閉鎖が保たれたまま高音に入れるので、声がひっくり返りにくくなります。ミックスボイスにエッジを混ぜる練習として、ボイトレでもよく使われる方法です。
- エッジ→ビブラート:語尾をエッジで落とす前にビブラートをかけると、揺れてから消えていく余韻がつくれます。
また、エッジを入れた後の声を鼻腔共鳴で明るく響かせると、ザラつきが強くなりすぎず、ポップスになじむ音色になります(鼻腔共鳴とは)。鼻にかけすぎるとエッジの粒が聞こえにくくなるので、バランスを確かめながら調整しましょう。
カラオケでエッジボイスを使うコツ
カラオケでエッジボイスを出すときのコツは、マイクに近い距離で、小さく入れることです。エッジは音量が小さいので、マイクから離れると聴こえません。歌い出しでマイクを口に近づけ、一瞬だけエッジを入れてから普通の声に移ります。
カラオケの採点機能には、しゃくりやこぶし、ビブラートのように加点される技法がありますが、エッジボイスは一般的に加点項目には含まれていません。採点の点数を上げるためではなく、歌の表現として使うものと考えてください。音程を外さないように、エッジの後はすぐに正しい音程の声に移ることも大切です。
楽譜や歌詞にエッジの記号・マークはある?
エッジボイスには、楽譜で決まった記号やマークはありません。ボイトレでは、歌詞カードの該当する文字の前に「e」「゙(濁点)」「∧」などの自分なりの印を書き込んで、エッジを入れる場所をメモしておく方法がよく使われます。歌詞の中で「あ゛」のように濁点付きの文字で表記されている場合は、そこでエッジやがなりを入れる指示と読める場合もあります。
ジャンル別・声優やVTuberのエッジボイス
ロック・バンド・ラップでのエッジボイス
ロックやバンドサウンドでは、エッジボイスはがなりやシャウトへの入口として使われます。歌い出しをエッジで入って、サビに向けてザラつきと音量を上げていくと、曲の盛り上がりに合わせた荒々しさを表現できます。ラップでは、低い声でエッジを混ぜながら言葉を吐き捨てるように置くと、気だるさや凄みが出ます。特にリズムの裏に入る言葉の頭にエッジを添えると、言葉の輪郭がはっきりします。
邦楽ポップス・アイドル・洋楽でのエッジボイス
邦楽のポップスやバラードでは、エッジは「泣き」や「ささやき」の表現として使われることが多く、歌い出しや語頭に短く添える使い方が主流です。アイドルグループでも、ソロパートの歌い出しにエッジを入れて印象を残すメンバーは珍しくありません。洋楽のポップスやR&Bでは、英語の母音で始まる単語が多いこともあり、語頭のエッジや、フレーズ終わりをフライ気味に落とす歌い方がよく聴かれます。
声優・キャラクターの演技でのエッジボイス
エッジボイスは、声優の演技でもよく使われる発声です。男性声優がイケボと呼ばれる低く色気のある声を演じるとき、語尾にエッジを混ぜて吐息まじりのニュアンスを出すことがあります。声優の宮野真守さん(『鬼滅の刃』の童磨役など)や諏訪部順一さんのように、低音の色気や独特の凄みがある声で知られる人の名前は、エッジボイスと一緒によく検索されています。
女性声優では、キャラクターの怒りや絶望、ホラー作品での不気味さを表現するときにエッジを使うことがあります。キャラの感情を声だけで伝える必要があるアニメやゲームでは、エッジボイスは表現の引き出しの一つとして重要です。声優を目指す人の発声練習でも、エッジボイスはよく取り入れられています。
VTuber・歌い手のエッジボイス
にじさんじなどのVTuberや歌い手の歌ってみた動画でも、エッジボイスは頻繁に使われています。マイクに近い距離で録音する配信や動画では、小さなエッジの粒もはっきり聴こえるため、ライブよりも効果が伝わりやすいのが特徴です。雑談配信の話し声にエッジが混ざる「低音の囁き」がファンに好まれることもあり、キャラクターの魅力づくりにも一役買っています。
歌声合成ソフトのエッジボイス(Synthesizer V・VOCALOID・VoiSona・UTAU)
ボカロ曲などを作る人の間でも、「歌声合成ソフトでエッジボイスを表現したい」という需要があります。人の歌声らしさを出すうえで、歌い出しのエッジは効果の大きい要素だからです。ここでは主なソフトでの考え方を紹介します。機能の名前や仕様はバージョンごとに変わるため、実際の操作は各ソフトの公式サイトやマニュアルで最新情報を確認してください。
Synthesizer V(シンセサイザーV)
Synthesizer V は、AI による自然な歌声で人気の歌声合成ソフトです。エッジボイスを表現するときは、息っぽさ(ブレシネス)や声の張り(テンション)、声の成分の量といったパラメータを歌い出しの部分だけ動かして、かすれや粒っぽさを加えるのが基本的な考え方です。ボイスバンクによっては、表情の違う歌い方(ボーカルモード)を切り替えられるものもあります。Synthesizer V 2(Synthesizer V Studio 2)では表現の機能が拡張されているので、使っているバージョンのマニュアルを確認しましょう。
VOCALOID(ボカロ)・VOCALOID6
VOCALOID(ボーカロイド)は歌声合成ソフトの代表格で、最新世代の VOCALOID6 では AI を使った歌声の表現が強化されています。エッジボイスのような声の揺らぎは、息の成分や声の歪みを調整するパラメータ、アタック部分の表情付けの機能を組み合わせて表現します。古いボカロ曲では、エッジ風の音を別録りの素材で重ねる手法が使われることもありました。
VoiSona(ボイソナ)
VoiSona も AI を使った歌声合成ソフトで、声の強弱や息づかいを細かく描き込めるのが特徴です。エッジを入れたい語頭で声の強さや息の成分を調整し、ささやくような入りを作ることで、エッジボイスに近いニュアンスを表現できます。
UTAU でエッジボイス音源を作る方法
UTAU は自分の声を録音して音源(ボイスバンク)を作れる歌声合成ソフトです。エッジボイスを使いたい場合は、普通の声とは別に、エッジで発音した母音・音節を追加音源として録音し、歌わせたい音符だけその音源に切り替える作り方がよく使われます。作り方の手順は大まかに次の通りです。
- 録音リストに沿って、エッジで入る「あ゛」「い゛」などの音を録音する
- 通常音源とは別の名前(接尾辞など)を付けて保存し、原音設定をする
- エディタ上で、エッジを入れたい音符だけ追加音源の音に置き換える
録音するときは、この記事で紹介した出し方で、小さく安定した粒を鳴らすことがきれいな音源を作るコツです。
エッジボイスを使う歌手・アーティスト一覧
ここでは、エッジボイスが上手い・エッジを印象的に使うとしてよく名前が挙がる日本人歌手やアーティスト、有名人を紹介します。エッジボイスは一瞬の表現なので、歌い出しの一音目や、サビの言葉の頭に注目して聴くと見つけやすくなります。歌い方は曲や時期によって変わるので、気になる人の曲を実際に聴き比べてみてください。
男性歌手・男性アーティスト
| 区分 | 歌手・アーティスト | 聴きどころ |
|---|---|---|
| ソロ歌手 | 平井堅、米津玄師、優里、藤井風、福山雅治、平井大、なとり | バラードの歌い出しや語尾に入る、ささやくようなエッジ |
| バンドのボーカル | Mrs. GREEN APPLE(ミセスグリーンアップル)の大森元貴、Mr.Children(ミスチル)の桜井和寿、サザンオールスターズの桑田佳祐、ONE OK ROCK(ワンオク)のTaka、L'Arc~en~Cielのhyde | 語頭のエッジから一気に声を張る入り方、ロックでのザラついた表現 |
| グループ・アイドル | BE:FIRSTのSHUNTO(シュント)、嵐の二宮和也、Hey! Say! JUMPの山田涼介、M!LKの山中柔太朗、BTSのJIMIN(ジミン) | ソロパートの歌い出しに添える、甘く色っぽいエッジ |
男性歌手のエッジボイスは、低音の色気を強調する使い方と、ロックで荒々しさを出す使い方の2つに分かれます。平井堅さんはエッジボイスの練習のお手本としてボイトレの現場でもよく名前が出る歌手で、「ノンフィクション」ではところどころにエッジが使われています。優里さんの「ドライフラワー」も、歌い出しや感情の高まる言葉にエッジが入る曲として、練習題材によく挙げられます。
女性歌手・女性アーティスト
| 区分 | 歌手・アーティスト | 聴きどころ |
|---|---|---|
| ソロ歌手 | Ado、椎名林檎 | 語頭のエッジからがなりへつなぐ激しい表現 |
| ユニットのボーカル | YOASOBIのikura、ヨルシカのsuis | 歌い出しや語尾に入るささやくような繊細なエッジ |
| K-POP | aespa(エスパ)のKARINA(カリナ) | 低めのパートで入る吐息まじりのエッジ |
女性歌手では、Adoさんがエッジの効いた歌い方をする代表的な歌い手として知られています。エッジから入ってがなりや強い地声に展開する歌い方は、女性がエッジボイスを練習するときの目標にされることが多いスタイルです。一方で、YOASOBIやヨルシカのように、エッジを小さく添えて繊細さを出す使い方もあり、同じエッジボイスでも印象がまったく違うのがわかります。
なお、エッジボイスの練習方法は、しらスタ(シアーミュージックのボイストレーナー)、東本ボイストレーニング、ひろこクラブなど、ボイトレ系の動画チャンネルでも解説されています。動画で音を確認しながら、この記事の手順で練習するのもおすすめです。
エッジボイスの練習曲・エッジを使う有名曲
エッジボイスの練習曲の選び方
エッジボイスを歌で使う練習には、次の条件に合う曲が向いています。
- テンポがゆっくりめ:バラードやミディアムテンポの曲は、歌い出しにエッジを入れる余裕があります。
- 母音で始まるフレーズが多い:「あ」「い」などで始まる歌い出しは、エッジを入れやすいです。
- 自分の音域に合っている:高すぎる曲は喉が締まりやすく、エッジも入れにくくなります。カラオケではキーを下げて構いません。
- 原曲でエッジがはっきり聴こえる:お手本の音を耳でまねできる曲が上達の近道です。
エッジボイスが聴ける有名曲
| 曲名 | 歌手 | 練習のポイント |
|---|---|---|
| ノンフィクション | 平井堅 | ところどころの言葉の頭に入る、やわらかいエッジをまねる |
| ドライフラワー | 優里 | 感情の高まる言葉の頭のエッジと、その直後のウィスパーへの切り替え |
| うっせぇわ | Ado | エッジから強い地声・がなりへ展開する入り方(女性曲の練習向き) |
平井堅さんの「ノンフィクション」と優里さんの「ドライフラワー」は、男性がエッジボイスを使う曲として練習に取り入れやすい2曲です。どちらもバラードで、歌い出しのエッジを落ち着いて練習できます。女性曲では、Adoさんの「うっせぇわ」がエッジを使ってる曲の代表として知られていますが、がなりや強い地声も多い曲なので、喉を痛めないようにエッジの部分だけを切り出して練習するのがおすすめです。
エッジが多い曲を自分で探すコツ
上の表以外にも、エッジボイスを使う曲はたくさんあります。前の章で紹介した歌手の曲、たとえばMrs. GREEN APPLE(ミセス)の曲や米津玄師さんの曲を、歌い出しの一音目に注目して聴き比べると、エッジが多い曲が見つかります。カラオケ曲として練習する場合は、原曲をイヤホンで聴いてエッジの位置を歌詞カードに書き込み、その場所だけを意識して歌ってみましょう。
ボカロ曲の場合は、原曲の合成音声ではエッジが表現されていないことも多いため、人が歌った「歌ってみた」の動画を参考にするとエッジの入れ方がわかります。同じボカロ曲でも、歌い手によってエッジを入れる場所がまったく違うので、聴き比べると表現の幅を学べます。
よくある質問
- エッジボイスとはどんな声ですか?
- 声帯をゆるく閉じたまま、ごく少ない息で鳴らす「ア゛ア゛ア゛」というブツブツした低い声です。英語では vocal fry(ボーカルフライ)と呼ばれ、ボイトレでは声帯を閉じる感覚をつかむ練習に、歌では歌い出しの表現に使われます。「エッジボイスのだし方」と表記されることもある出し方は、ため息の終わりを小さく鳴らすところから始めるのが近道です。
- エッジボイスの練習で声がガラガラ声になっても大丈夫?
- 練習中のエッジの粒がガラガラと聴こえるのは正常ですが、練習の後も声がガラガラのまま戻らない場合は、喉を締めているか練習しすぎです。その日の練習はやめて喉を休めましょう。声がれが2週間以上続くときは耳鼻咽喉科を受診してください。
- 普段喋るときにエッジボイスになるのは直したほうがいい?
- 喋るときに語尾だけ軽くエッジが混ざる程度なら、多くの人に見られる自然な話し方です。ただし、話し声が常にエッジ混じりで聞き取りにくいと言われる場合や、喉が疲れやすい場合は、語尾まで息を残す・話し声を少し高くするといった方法で癖(くせ)を直していくのがおすすめです。
- エッジボイスを使う芸能人や有名な歌手は?
- 平井堅さん、米津玄師さん、優里さん、Mrs. GREEN APPLEの大森元貴さん、Adoさんなど、多くの歌手や芸能人の名前が挙がります。声優や俳優が演技の中で使うこともあります。詳しくは本文の歌手一覧を参考にしてください。
- エッジボイスはミックスボイスの練習になる?
- なります。エッジボイスで覚えた「声帯を閉じる感覚」を高い音でも保つことが、ミックスボイスの土台になるからです。ただしエッジが出るだけではミックスボイスにはならないので、「エッジから声へつなぐ」練習を音階で行い、閉鎖を保ったまま音を上げていく練習を組み合わせましょう。
まとめ
エッジボイス(ボーカルフライ)は、声帯をゆるく閉じたまま少ない息で鳴らす、いちばん低い声区の発声です。最後に、この記事の要点を振り返ります。
- エッジボイスは「ア゛ア゛ア゛」というブツブツした粒の声で、英語では vocal fry、声帯がゆっくり振動することで粒に聴こえる
- 練習の効果は、声帯を閉じる感覚がつかめること、息漏れが減って声に芯が出ること、ミックスボイスや高音の土台になること
- がなりは大音量で歪みを足す声、ハスキーは声質、ウィスパーは息の多い声で、エッジボイスとはそれぞれ仕組みが違う
- 出し方は「脱力 → ため息 → 小さく低く粒を出す → 伸ばす → 母音につなぐ」。力みと息の出しすぎが失敗の主な原因
- 練習は1日5〜10分。喉が痛い・咳が出る・声枯れが続くときはすぐに中止し、長引く場合は耳鼻咽喉科へ
- 歌では歌い出し・語頭・語尾に一瞬だけ入れるのが基本。使いすぎると逆効果になる
エッジボイスは独学でも出せるようになりやすい発声ですが、「自分のエッジが正しい出し方になっているか」「喉を締めていないか」は、自分の耳だけでは判断しにくいものです。エッジからミックスボイスや高音につなげていきたい人は、ボイトレ教室でプロの講師に実際の声を聴いてもらうと、上達がぐっと早くなります。ボイトレ教室検索から、お住まいの地域や最寄り駅で通いやすい教室を探して、体験レッスンを受けてみてください。声区全体の関係を知りたい人は声区とはの記事もあわせて読んでみてください。

