がなり声とは

がなり声とは、ふつうの歌声にザラザラ・ガラガラとしたノイズ(歪み)を混ぜて、力強さや感情の高ぶりを表現する歌唱テクニックです。ボーカルの世界では「がなり」「ガナリ ヴォイス(がなりボイス)」とも呼ばれ、ロックやJ-POP、ボカロ曲の歌ってみたまで、ジャンルを問わず使われています。

ガナリ ヴォイスというと超絶技巧のように思われがちですが、基本の仕組みを押さえれば誰でも練習できるテクニックです。がなりとは歌の専門用語のように聞こえますが、音楽用語として楽譜に書かれる正式な記号があるわけではありません。ボイストレーニングの現場や歌い手の間で広まった呼び名で、歌声のなかで「ここだけ荒く、強く」聴かせる表現全般を指して使われます。

歌のがなりは「声+ノイズ」

がなり声は、声帯が作るふつうの音(音程のある声)をベースに、その上に喉の奥で生まれる雑音を薄く重ねた声です。この雑音は、声帯のすぐ上にある仮声帯などの組織が震えることで生まれると説明されることが多く、音程そのものは元の声が担っています。そのため、上手ながなりは「荒れているのに音程がはっきり聴こえる」のが特徴です。

逆に、ノイズばかりで元の声が聴こえない状態は、歌唱としてのがなりというより「ただ叫んでいる声」になります。がなりとは歌声を壊すことではなく、歌声に荒々しさという色を足すことだと考えると、練習の方向性を間違えにくくなります。

がなり声は「声帯の音+ノイズ」の足し算 声帯の音 + ノイズ = がなり声 音程は声帯の音が担い、ノイズは「色」として乗る ノイズが主役になると、ただの叫び声に聴こえる
がなり声は、音程を持つ声帯の音に、仮声帯などで生まれるノイズを薄く重ねた声

がなりを使うと何が変わるのか

がなりを入れる一番の目的は、歌詞の感情を声色で伝えることです。怒り・悔しさ・叫びたいほどの高揚感など、きれいな声だけでは表しきれない気持ちを、声の質感で聴き手に届けられます。

  • 迫力が出る:同じ音量でも、倍音とノイズが増えることで声が太く、大きく聴こえる
  • メリハリがつく:クリーンな声の中に一瞬だけ混ぜると、そのフレーズが強調される
  • 個性になる:がなり系の歌い方は歌手ごとに質感が違い、声の「らしさ」を作る

一方で、がなりは喉に力が入りやすいテクニックでもあります。正しい出し方を知らずに叫ぶように真似すると、喉を痛める原因になります。この記事では、仕組みを理解したうえで安全に身につける手順を順番に紹介していきます。

がなり声の出し方(基本の3ステップ)

がなり声の出し方は、「①土台になる声を作る → ②ノイズが生まれる場所を感じる → ③声にノイズを薄く足す」の3ステップで考えると簡単です。いきなり曲の中でがなろうとするより、この順番で分けて練習したほうが、喉に余計な力を入れずに正しいやり方を身につけられます。

ステップ1:喉を開いた地声を安定させる

がなりの土台は、ふつうの地声です。まずは話し声より少し低めの楽な高さで「あー」と5秒ほど伸ばし、声がふらつかないかを確認します。このとき大切なのは息の量です。息を強く押し出しすぎると喉が締まり、少なすぎると声が細くなります。腹式呼吸でお腹から一定の息を送り、肩や首には力を入れないのが発声の基本です。

ステップ2:ノイズが生まれる場所を感じる

次に、ザラつきが生まれる喉の奥の感覚をつかみます。身近な動作で近い感覚を作れるので、次のどれかで試してみてください。

  • うがいのやり方を真似る:水を含まずに、うがいの「ガラガラ」を低い声で小さく鳴らす
  • 咳払いの直前:「ンンッ」と軽く咳払いをする瞬間に、喉の奥がキュッと寄る感覚を確かめる
  • 重い物を持ち上げるときの声:「よいしょ」の「よ」で喉の奥に一瞬こもるような力が入る

どれも「喉ぼとけの少し上あたりで何かが震える、こもる」感覚が共通しています。ここで無理に大きな音を出す必要はありません。小さい音量で、痛みのない範囲で感覚だけを確認するのがコツです。

ステップ3:声に薄くノイズを足す

ステップ1の「あー」を出しながら、ステップ2の感覚を少しだけ混ぜます。最初は「あ゛」と語頭の一瞬だけ荒らし、すぐにきれいな声に戻すのがおすすめです。音程が保てていれば成功です。慣れてきたら「あ゛ー」と荒れた状態を1〜2秒保ち、ノイズの量を少なめ・多めと調節してみましょう。

がなり声の出し方は3ステップで分けて練習する STEP 1 地声を 安定させる STEP 2 ノイズの場所 を感じる STEP 3 声に薄く ノイズを足す 「あー」5秒 うがい・咳払い 語頭だけ「あ゛」 痛みが出たらその日は中止
がなり声は「地声の安定 → ノイズの場所をつかむ → 声に薄く足す」の順で練習すると、喉に力が入りにくい

うまくいかないときのコツ

「がなり声を出す方法がわからない」「どうやって出すのか、どう出すのが正しいのか、どうやるのか見当がつかない」「自分のがなりの仕方が合っているか自信がない」という人は、次の3点を見直してみてください(ひらがなで「だしかた」と検索される方も同じ内容です)。

  1. 音量を下げる:大声でがなろうとすると喉が締まるだけになりがち。小さい声のほうがノイズを混ぜる感覚をつかみやすい
  2. 低めの音から始める:高い音ほど喉に力が入りやすい。話し声の高さから練習する
  3. 短く区切る:1回のがなりは1〜2秒まで。長く続けるほど喉への負担が増える

がなり声の正しいやり方は「楽に出せて、終わったあとに喉がヒリヒリしない」ことが目安です。少しでも痛みやイガイガを感じたら、その日の練習はそこでやめましょう。

がなり声が聴ける曲(ボカロ・J-POP・洋楽)

がなりを身につけるには、実際にがなりのある曲を聴いて「どこで、どれくらい」荒らしているかを知るのが近道です。ここでは、がなり声の参考としてよく名前が挙がる有名曲を、ボカロ曲・女性ボーカルの曲・男性ボーカルの曲に分けて一覧にしました。どの曲も全編をがなっているわけではなく、サビの頭や語気の強い一言にだけ使っている点に注目して聴いてみてください。

ボカロ曲(歌ってみた・カラオケの定番)

かっこいい曲が多いボカロ(ぼかろ)の曲は、原曲の初音ミクや鏡音リンなどの合成音声に対して、歌ってみたやカラオケで人間の歌い手ががなりを足して歌うことが多いジャンルです。プロセカ(プロジェクトセカイ)で知った曲をがなり入りで歌いたい、という人にも定番の曲が並びます。

曲名作者がなりを入れやすいところ
ロキみきとP語気の強い早口のサビ
酔いどれ知らずKanaria低めの音域で吐き捨てるフレーズ
ブリキノダンス日向電工畳みかけるサビの語頭
ロストワンの号哭Neru叫ぶようなサビの頭
ゲキヤク柊キライ短く切るフレーズの語頭

女性ボーカルの曲

女性曲でがなりのかっこいい曲といえば、まずAdoさんの曲が挙がります。女性の声は男性より高く細いぶん、がなりを混ぜると一気に印象が変わるので、女性アーティストの曲はがなりの効果がわかりやすい題材です。

曲名歌手がなりの聴きどころ
うっせぇわAdoサビの吐き捨てるような歌い回し
ギラギラAdo低音から張り上げる盛り上がり
レディメイドAdo語頭を荒らすサビ
逆光Ado映画『ONE PIECE FILM RED』劇中歌。力強いサビ

男性ボーカルの曲

男性曲では、ロックバンドのボーカルやJ-POPのシンガーソングライターの曲にがなりが多く使われています。男性ボーカルは地声の低音に厚みがあるため、低音の曲でもがなりの存在感が出やすいのが特徴です。

曲名歌手がなりの聴きどころ
かくれんぼ優里感情が高まるサビの語頭
スターマインDa-iCEサビで声を張る箇所
KICK BACK米津玄師アニメ『チェンソーマン』OP。叫ぶようなフレーズ
完全感覚DreamerONE OK ROCKワンオクの代表曲。シャウトとがなりの混ざるサビ
できっこないを やらなくちゃサンボマスター全身で叫ぶようなサビ

優里さんの曲では「ドライフラワー」のようなバラードでも、感情が高まる箇所で声が少しかすれるように荒れる歌い方が聴けます。なお「KICK BACK」は「back kick」と覚え違えて検索されることもあります。

ジャンル別:がなりが合う曲の探し方

がなりを使う曲はロックだけではありません。自分の好きなジャンルでがなりの多い曲を探すときは、次の傾向を目安にしてください。

  • ロック・バンド系:サビやラスサビで声を張る曲。がなりを使う歌の王道
  • J-POP(jpop)・アニソン:アニソンは主題歌としてサビで一気に盛り上げる曲が多く、アニソン曲はがなりの入れどころが見つけやすい
  • ブルース・ソウルなどの洋楽:ハスキーで歪んだ声が曲の味になるジャンル。洋楽ではがなりに近い歪みが歌の基本表現になっている
  • 演歌:こぶしと一緒に、低音でうなるような荒れた声を混ぜる歌い方がある
  • アイドル:ダンス曲のラップパートや煽りのセリフで、短いがなりが使われることがある

カラオケ曲として選ぶなら、最初は自分の声域に合う曲、とくに低音でも歌える曲から始めるのがおすすめです。高音の多い曲でがなりを使うのは難易度が高いので、後半の「練習曲・出しやすい曲」の章も参考にしてください。

「がなる」「がなり立てる」の意味・語源・英語

歌のがなりという呼び名は、日本語の動詞「がなる」から来ています。がなるとは、辞書では「大声でわめく」「騒がしく大声でものを言う」といった意味で説明される言葉です。歌で使う「がなり」は、この「荒々しく声を張り上げる」イメージを歌唱テクニックの名前に当てはめたものです。

がなり立てるの意味

「がなり立てる」は、がなるに「立てる(盛んに〜する)」がついた言葉で、大声でやかましく言い続けるという意味です。意味を簡単に言えば「うるさく怒鳴り続ける」こと。「拡声器でがなり立てる」「電話口でがなり立てられた」のように、日常会話ではどちらかといえば悪い印象で使われます。

これに対して歌の「がなり」は、うるささではなく迫力や感情の表現として使うほめ言葉にもなります。同じ言葉でも、日常語と歌唱用語で印象が逆になる点は覚えておくと混乱しません。

語源・由来と漢字の書き方

がなるの語源ははっきりしていませんが、騒がしい音を表す「が」と、音が出る意味の「鳴る」が結びついた言葉だとする説があります。由来から見ても「うるさく鳴り響く声」というイメージの語だといえます。

漢字については、一般的な辞書でも仮名書きが見出しになっており、決まった漢字表記はありません。文字にするときは「がなる」「がなり」とひらがなで書くか、歌の技法名としては「ガナリ」とカタカナで書かれることも多いです。また、地域限定の方言ではなく、全国で通じる共通語です。

言い換え・類語と英語での表現

がなるの類語・言い換えには、次のような言葉があります。歌の技法としてのがなりの別名や、別の言い方もあわせて整理しました。

分類他の言い方ニュアンス
日常語の類語怒鳴る(どなり声)・わめく・まくし立てる大声で荒々しく言う
歌の別名がなりボイス・歪み声・ディストーション声にノイズを混ぜる技法
英語rasp / grit / vocal distortion / growlざらついた声・歪ませた声

がなり声を英語で説明するときは、「raspy voice(ざらついた声)」や「vocal distortion(声の歪み)」がよく使われます。「growl」はうなり声の意味で、より低く荒い声を指すことが多い言葉です。海外のボーカルレッスン動画を探すときは、これらの単語で検索すると、がなりに近いテクニックの解説が見つかります。

「がなり」は日常語・歌唱用語・舞台用語で意味が違う がなる 大声でわめく 日常語 がなり立てる うるさい印象 歌唱用語 がなり声 迫力の表現 舞台用語 がなりマイク 指示出しの道具
「がなる(大声でわめく)」から、日常語・歌唱用語・舞台用語の3つの使い方に分かれている

なお、舞台やテレビの現場では「がなり」がまったく別の道具を指すこともあります。こちらは記事の後半「舞台・テレビで使う『がなり』」の章で説明します。

がなり声の仕組み(声帯・仮声帯・倍音)

がなりを安全に出すには、喉の中で何が起きているかを知っておくことが役に立ちます。ここでは、がなり声の仕組みを「音程を作る声帯」と「ノイズを足す仮声帯」の2つに分けて説明します。

声帯が音程を作り、仮声帯がノイズを足す

ふつうの発声では、喉ぼとけの内側にある左右一対のヒダ「声帯」が、肺からの息で細かく振動して音が生まれます。この振動の速さが音程になります。声帯のすぐ上には、もう一対のヒダ「仮声帯(室ヒダ)」があります。ふだんの話し声や歌声では仮声帯は開いたままで、ほとんど振動しません。

がなり声では、この仮声帯が内側に寄って、声帯の振動につられるように不規則に震えると説明されることが一般的です。仮声帯の周辺にある披裂部(声帯の後ろ側の軟骨を覆う部分)の粘膜が震えることでノイズが生まれる、という説明もあります。いずれにしても原理は同じで、声帯のきれいな振動に、周りの組織の不規則な振動が重なることで、ザラついた音色になります。

声帯の上にある仮声帯が震えてノイズが生まれる 仮声帯 ノイズを足す 声帯 音程を作る 肺からの息 口・鼻のほうへ
声帯(下)が音程を作り、その上の仮声帯(上)が寄って震えることで、がなり特有のノイズが加わる

倍音とノイズが「太さ」を生む

がなり声が大きく太く聴こえるのは、音量そのものより、声に含まれる倍音(基本の音の上に重なる高い成分)とノイズが増えるためです。ギターのエフェクター「ディストーション」で音を歪ませると迫力が増すのと、よく似た仕組みです。泣き叫ぶ赤ちゃんの泣き声が小さな体からでもよく通り、ときにザラついて聴こえるように、人の声は感情が高ぶるとこうした荒れた成分が自然に混ざりやすくなります。がなりは、それを意図してコントロールする技術だといえます。

なお、ビートボックスで低音を鳴らす「喉ベース」も、仮声帯を使う技として紹介されることがあります。仮声帯の詳しい位置や、声帯と分けて動かす方法は仮声帯の解説記事にまとめています。

がなりを支える声帯閉鎖と共鳴

仕組みから見ると、がなりの土台は「しっかり鳴っている声帯の音」です。声帯がしっかり閉じずに息が漏れていると、ノイズだけが目立ち、音程のないかすれ声になります。つまり、がなりが上手くなるには、声帯を適度に閉じて息を効率よく音に変える声帯閉鎖の感覚が欠かせません。

もうひとつ大切なのが共鳴です。軟口蓋(上あごの奥の柔らかい部分)を軽く持ち上げて口の奥の空間を保つと、ノイズが混ざっても声の芯が響きやすくなります。鼻に響きを集める鼻腔共鳴を意識すると、がなっている最中でも音程が聴き取りやすくなります。喉だけで音を作ろうとせず、息・声帯・共鳴の全体で発声するのが、喉を守りながらがなるための考え方です。

女性・男性のがなりの出し方

がなりの仕組み自体は男女で変わりませんが、声の高さや声帯の大きさが違うため、出しやすい音域と気をつけるポイントが少し異なります。女性のがなり声の出し方と、男性のがなり声の出し方をそれぞれ見ていきましょう。

女性のがなり声の出し方

「女性でもがなりは出せるの?」という質問はよくありますが、女性でもがなりは出せます。Adoさんのように、女性ボーカルのがなりはむしろ印象に残りやすい表現です。ただし女性は声帯が短く薄い人が多く、話し声の高さも男性より高いため、男性の歌手と同じ感覚でノイズを強く混ぜると喉を締めつけやすくなります。

女性のやり方のコツは次の3つです。

  1. 話し声の高さか、それより少し低い音から始める:女性にとって出しやすいのは地声の中低音域。高い音でがなるのは慣れてから
  2. ノイズは薄めにする:女性の声は少しのノイズでも十分目立つ。「かすかにザラつく」程度で効果が出る
  3. 地声を無理に張り上げない:高くなるほど地声で押し上げず、ミックスボイス寄りの声にがなりを乗せる(次の章で解説)

男性のがなり声の出し方

男性は声帯が長く厚いため、低い地声に太いがなりを混ぜやすく、がなりを始めやすいのは男性のほうだといわれます。一方で男性に多い失敗は、出しやすさに任せてノイズを強くしすぎることです。喉を締めて力いっぱい押し出すと、音程が消えて怒鳴り声になり、喉も疲れやすくなります。

男性のやり方のコツは、「声の芯7割・ノイズ3割」くらいの配分を意識することです。まず低音で音程が聴こえるがなりを作り、それを話し声より少し高いところまで少しずつ広げていきます。男性でも、サビで高音を張る曲では喉に力が入りやすいので、女性と同じくミックスボイス寄りの発声と組み合わせるのが安全です。

がなりを始めやすいのは男女とも話し声の高さ 低い 高い 始めやすい 男性 始めやすい 女性
男女とも、自分の話し声の高さ付近(濃い部分)からがなりを始め、慣れたら上下に広げていく

男女共通のチェックポイント

  • がなったあとに、すぐきれいな声に戻れるか
  • がなっている最中も、歌詞と音程が聴き取れるか
  • 練習後に喉がヒリヒリしたり、声がかれたりしていないか

この3つが守れていれば、男性・女性どちらのがなりも正しい方向に進んでいます。録音して聴き返すと、自分では気づきにくいノイズの量の多すぎ・少なすぎがよくわかります。

高音・低音でがなる方法(ミックスボイス・裏声との関係)

がなりは音域によって難しさが大きく変わります。低い声では比較的かんたんに出せても、高い声になるほど喉に力が入り、ノイズだけが暴れたり声がひっくり返ったりしがちです。ここでは、声区(声の出し方の種類)ごとにがなりの乗せ方を整理します。

低音でのがなり

低音域は、声帯が厚く振動するチェストボイス(地声)で歌う音域です。仮声帯が寄りやすく、がなりを最も混ぜやすい場所なので、練習もここから始めます。低い声でのがなりは、ノイズを多めにしても音程が崩れにくい反面、喉の奥を押し下げるように力むと声がこもります。あごを引きすぎず、口の中の空間を保ったまま、息の流れにノイズを乗せる意識で出しましょう。

高音でのがなり

がなり声の出し方で多くの人がつまずくのが高音です。高音で地声を張り上げたまま喉を締めてがなると、声帯と仮声帯の両方に強い負担がかかります。高音でがなるときは、次の手順が安全です。

  1. まず、がなりなしでミックスボイス(地声と裏声を混ぜた声。mixとも呼ばれる)で楽に高音を出せるようにする
  2. そのミックスの声に、語頭の一瞬だけ薄いノイズを混ぜる
  3. ノイズを混ぜても高さが下がらないことを確認してから、長さを少しずつ伸ばす

ポイントは、高音ほどノイズを薄く、短くすることです。プロの歌手の高音のがなりも、よく聴くと音の頭だけにかかっていて、すぐにクリーンな声に戻っていることがほとんどです。

裏声・ヘッドボイスとがなり

声帯を薄く使うファルセット(裏声)やヘッドボイスでは、仮声帯が寄りにくいため、地声ほどはっきりしたがなりは乗りません。無理にノイズを足そうとすると、裏声が地声にひっくり返ったり、喉を締めたりする原因になります。裏声の音域では、がなりの代わりに息を多く混ぜたハスキーな声や、エッジボイスでの語頭の揺れで荒さを表現するのが一般的です。

声区が高くなるほど、がなりは薄く短くする 声区 混ぜられるノイズの目安 地声(低音) ミックス 裏声 息やエッジで荒さを出す 音域が上がるほど、ノイズは少なく短く
地声の低音はノイズを多めに混ぜられるが、ミックスボイスでは薄く、裏声ではほとんど乗らない

このように、がなりは「どの声区で歌っているか」とセットで考えるテクニックです。高音でかっこよくがなりたい人ほど、先にミックスボイスを安定させることが近道になります。

がなりが上手い歌手・歌い手

がなり声が上手い歌手は、ノイズの量と入れる場所のコントロールが抜群です。お手本にする人を決めて聴き込むと、「どこで、どれくらい」荒らすかの感覚が身につきます。ここでは、がなりの話題でよく名前が挙がる有名人・芸能人・アーティストを、日本の歌手、歌い手・VTuber、海外の歌手に分けて紹介します。

日本の歌手

歌手がなりの特徴
Ado低音の吐き捨てるようながなりから高音の叫びまで、ノイズの量を曲ごとに使い分ける。女性歌手のがなりの代表格
優里安定した地声に、サビで感情が高まる箇所だけがなりを乗せる
Taka(ONE OK ROCK)ワンオクのロックサウンドの中で、シャウトとがなりを行き来する
花村想太(Da-iCE)ハイトーンのサビで声を張る箇所に、短いがなりを混ぜる
米津玄師低く太い地声を軸に、叫ぶようなフレーズで声を荒らす
宮本浩次(エレファントカシマシ)全身で叫ぶようなロックボーカル
山口隆(サンボマスター)曲全体の熱量をがなりで表現する
桑田佳祐(サザンオールスターズ)しゃがれた質感を語尾やシャウトに混ぜる
向井秀徳(NUMBER GIRL / ZAZEN BOYS)語りと叫びの中間のような荒々しい歌い方
中島みゆきささやく声から語気を強めた声まで声色の幅が広い

Adoさんの出し方を真似したい人は多いですが、Adoさんのがなりはノイズの量が多い分、初心者がそのまま真似すると喉を痛めやすい歌い方です。まずは語頭の一瞬だけを真似するところから始めましょう。Adoさんはライブで音源と歌い回しを変えることもあるので、ライブ映像と音源を聴き比べると、がなりの入れ方の違いがよくわかります。

優里さんの歌い方は、体をしっかり使った安定した地声が土台になっていて、がなっても喉が締まった印象をあまり与えません。優里さんのような出し方を目指すなら、がなりそのものより先に、ぶれない地声を作ることが大切です。

なお、BUMP OF CHICKEN(バンプ/BUMP)の藤原基央さんのように、声質がかすれ気味(ハスキー)な歌手もがなりの話題で名前が挙がることがあります。ただ、生まれつきのハスキーな声質と、意図してノイズを混ぜるがなりは別物です。「声がかすれている=がなっている」ではない点は押さえておきましょう。

歌い手・VTuber

歌ってみたの世界では、がなりは定番のテクニックです。がなりを多用する歌い方で知られる歌い手のメガテラゼロさん(メガテラ・ゼロ)をお手本にする人も多く、がなりの出し方を解説する動画も人気があります。VTuberでは、にじさんじ所属の葛葉さん・渡会雲雀さん、ホロライブ所属の星街すいせいさんなどの歌で、がなりを使った歌唱が話題になることがあります。

海外の歌手

洋楽では、がなりに近い歪んだ声(rasp)は昔から歌の表現として定着しています。

  • クリスティーナ アギレラ(Christina Aguilera):パワフルな高音にざらつきを混ぜる女性ボーカル
  • マイケル ジャクソン(Michael Jackson):短いうなりやヒーカップを交えたリズミカルな歌唱
  • マネスキン(Måneskin):イタリアのロックバンド。ボーカルのハスキーで荒い声が特徴

日本のバンドでは、GLIM SPANKY(グリムスパンキー)の松尾レミさんのように、ハスキーな声質にロックな荒さを乗せる女性ボーカルもいます。お手本は1人に絞らず、男女・ジャンルの違う歌手を聴き比べると、がなりの幅広さが実感できます。

がなりとシャウト・エッジボイス・デスボイスの違い

がなりと似た荒い声のテクニックには、シャウト・エッジボイス・スクリーム・デスボイスなどがあります。どれも「きれいではない声」を使う点は共通していますが、ノイズの量と音程の残り方が違います。混同したまま練習すると、狙った声にならないうえ喉を痛めやすいので、違いを整理しておきましょう。

テクニック音の特徴がなりとの違い
エッジボイス「ア゛ア゛ア」とプツプツ途切れる低い音息を少なくして声帯をゆっくり鳴らす。ノイズを足すがなりとは仕組みが別
シャウト叫ぶように声を張る音量と勢いが主役。がなりを混ぜたシャウトも多い
スクリーム悲鳴のような高く激しい叫びノイズが主役で音程はほぼ残らない
デスボイス(グロウル)地の底から響くような低いうなり声ノイズが主役。メタルなどで使う
ダミ声・しゃがれ声もともと濁った・かすれた声質その人の声質そのもの。がなりは意図して出し入れする技法

エッジボイスとの違い

エッジボイスとがなりの違いは、いちばん質問が多いポイントです。エッジボイスは、息の量を極端に減らして声帯をゆっくり不規則に振動させる発声で、「ア゛ア゛ア゛」とプツプツ途切れる音になります。がなりが「声に仮声帯のノイズを足す」のに対し、エッジボイスは「声帯そのものの鳴り方を変える」点が違います。歌では、フレーズの語頭をエッジボイスで始めてからがなりにつなぐ「エッジがなり」のような使い方もされます。

シャウト・スクリーム・デスボイスとの違い

シャウトは叫ぶように声を張り上げる歌い方全般を指し、がなりを混ぜることもあれば、クリーンな声のまま叫ぶこともあります。スクリームやデスボイス(デスボ、グロウル)は、メタルやハードコアで使われる、ノイズが主役の発声です。音程はほとんど残らず、仮声帯などを強く振動させます。がなりはあくまで音程のある歌声が主役で、ノイズは脇役という点で、スクリームやグロウルとの違いがはっきりしています。

荒い声のテクニックはノイズの量で並べられる ノイズ少 ノイズ多 エッジ がなり シャウト デスボイス 音程がはっきり残る 音程が消えていく
エッジボイス・がなり・シャウト・デスボイスの順にノイズが増え、音程は聴き取りにくくなる

こぶし・しゃくり・フェイクとの違い

こぶし・しゃくり・フェイク・ビブラートは、音程の動かし方のテクニックです。こぶしは音を細かく上下に回す技法、しゃくりは低い音から目的の音へすくい上げる技法で、どちらも「音程」を操作します。これに対してがなりは「音色」を変えるテクニックなので、組み合わせて使えます。たとえば、しゃくり上げながらがなる、こぶしを回す最初の音だけがなる、といった重ね方は多くの歌手が使っています。ラップでも、語気を強めたいリリックでがなりを混ぜる表現はよく聴かれます。

がなりの練習方法

がなりは、毎日少しずつ練習するほうが、一度に長時間練習するより確実に上達します。ここでは、ボイトレの現場でも取り入れられている考え方をもとに、1回10〜15分でできる練習メニューを紹介します。がなりの練習は喉を使う時間が長くなりがちなので、1日の合計は15分程度までを目安にしてください。

準備運動(3分)

いきなりがなると、冷えた喉に負担がかかります。最初に首・肩を回して力を抜き、リップロール(唇をプルプル震わせながら声を出す練習)で低い音から高い音までをなめらかに往復します。リップロールは喉に力が入っているとうまく続かないので、脱力できているかのチェックにもなります。首や肩のこわばりが強い人は、ボーカルのストレッチを先に行うのもおすすめです。

練習1:小さい声でノイズを混ぜる(3分)

話し声より小さい声で「あー」と伸ばし、途中で1秒だけノイズを混ぜてまた戻す、を繰り返します。声量を落とすのは、大声だと喉を締めて力でノイズを作ってしまうからです。小さい声でもザラつきを出し入れできれば、仮声帯を狙って動かせている証拠です。

練習2:ロングトーンでノイズの量を調整する(3分)

楽な高さで5〜8秒のロングトーンを出し、「クリーン → 薄いがなり → クリーン」と途中で質感を切り替えます。慣れてきたら「薄い → 少し濃い → 薄い」とノイズの量を3段階に変えてみましょう。がなりの上手い歌手は、この量の調整が自在にできています。

練習3:言葉・フレーズでがなる(3〜5分)

「バカ!」「なんで!」のような短い言葉を、語頭だけがなって言ってみます。次に、好きな曲のサビの一言目だけにがなりを入れて歌います。最後に、がなりを入れた部分と入れない部分を聴き比べられるよう録音しておくと、次回の練習の目安になります。

がなりの練習は小さい声から曲へ段階的に進める 準備運動 小さい声 出し入れ ロングトーン 量を調整 言葉・曲 語頭だけ
準備運動 → 小さい声での出し入れ → ロングトーンでの量の調整 → 言葉・曲の順に、1回10〜15分で進める

練習の頻度と上達の目安

感じ方には個人差がありますが、毎日少しずつ続けると、多くの人は数週間ほどで「狙ったところだけがなる」感覚がつかめてきます。逆に、1週間以上練習しても喉が痛くなるだけで変化がない場合は、やり方が間違っている可能性があります。独学で判断が難しいときは、ボイトレの先生にがなりのボイトレをお願いして、発声を客観的に見てもらうのが確実です。

がなりの練習曲・出しやすい曲の選び方

がなりの練習曲は、「好きな曲」よりも「がなりを出しやすい曲」から選ぶのが上達の近道です。がなりの出し方が曲によって難しくなる理由は、音の高さ・テンポ・がなりを入れる回数の3つです。この3つを基準に、やさしい曲から段階的に選びましょう。

出しやすい曲の3つの条件

  1. 自分の声域の中低音でサビが歌える:高音でがなるのは難しいので、サビでも無理なく地声が出る曲を選ぶ
  2. テンポが速すぎない:早口の曲は、がなりを入れる前に歌詞で精一杯になる。まずはミドルテンポの曲
  3. がなりの入れどころが少ない:サビの頭など、入れる場所が数か所に限られている曲から始める

レベル別の練習曲の目安

レベル曲の条件練習のしかた
1:入門ミドルテンポ・中低音のバラードやJ-POPサビの一言目だけ薄くがなる
2:初級感情の起伏が大きいJ-POP(例:優里「かくれんぼ」)サビの語頭数か所にがなりを入れる
3:中級低音の語気が強い曲(例:Ado「うっせぇわ」、ボカロ曲「酔いどれ知らず」)低音部分でノイズを多めにする
4:上級高音サビで叫ぶ曲(例:ONE OK ROCK「完全感覚Dreamer」)ミックスボイスに短いがなりを重ねる
がなりの練習曲はやさしい曲から段階的に上げる 入門 初級 中級 上級 音が高く・速く・がなりが多くなる 語頭1か所 高音サビ
がなりの練習曲は、中低音・ミドルテンポ・入れどころが少ない曲から始め、高音サビの曲へ段階的に進む

男性・女性別の練習曲の選び方

男性の練習曲は、原曲キーが男性の地声の中低音に収まる曲が基本です。高音サビの多いロックを最初から選ぶと、がなりより先に喉が疲れてしまいます。キーが高い曲は、カラオケでキーを2〜3つ下げて練習しても構いません。女性は、女性ボーカルの曲だけでなく、男性曲をキーを上げて歌うのも良い練習になります。男性曲は中低音が多く、女性にとってがなりを入れやすい高さになることが多いからです。

どの曲でも、最初から原曲どおりにがなりを再現しようとせず、「自分の喉で無理なく出せる量」に減らして歌うことが、曲でのがなりの出し方を身につけるコツです。

がなりができない・恥ずかしいときの原因と対策

「何度やってもがなりができない」「がなり声が出ない(でない)」という悩みはとても多く、がなりは難易度の高いテクニックだと感じる人も少なくありません。ただ、できない人とできる人の差は、才能よりも「感覚をつかめているか」と「力の入れ方」にあることがほとんどです。原因ごとに対策を見ていきましょう。

がなりが出ない・出せない原因

原因よくある状態対策
喉を締めすぎている苦しいだけでノイズが出ない音量を下げ、うがいの感覚から探し直す
息が弱すぎる・多すぎるかすれるだけ、または何も起きない一定の息でロングトーンを安定させてから混ぜる
高い音で試しているひっくり返る・裏返る話し声の高さまで下げて練習する
地声が安定していないノイズを足すと音程が崩れるがなりの前に地声の発声を整える
がなりが出ない原因は「力」「息」「高さ」の3つ 喉を締めすぎ 息が不安定 音が高すぎる 音量を下げる ロングトーン 話し声の高さへ
がなりが出ないときは、喉の力・息の安定・音の高さのどれが原因かを切り分けて対策する

急にがなりができなくなったとき

以前はできていたのに、急にがなりができなくなった場合は注意が必要です。練習のしすぎで喉が疲れている、風邪などで喉が炎症を起こしている、といった可能性があります。数日がなりの練習を休み、ふつうの声で歌っても違和感があるなら、次の章で紹介するように耳鼻咽喉科で相談してください。歌で無理にがなろうとして、できない状態を悪化させないことが大切です。

がなり声が恥ずかしい・苦手・嫌いと感じるとき

がなりの練習中は、「がなり声を出すのが恥ずかしい」と感じる人も多いものです。練習は、カラオケの個室や車の中など、人に聴かれない場所で行えば気になりません。また、がなりは好みが分かれる表現でもあります。「Adoはがなりが多すぎる」「がなりが苦手」「がなる声が嫌い」という感想も実際にあり、下手ながなりや、やりすぎのがなりは、聴き手に「うるさい」と感じさせてしまいます。

だからこそ、がなりは「使わない勇気」も含めて表現力です。曲全体の中でがなりを入れる場所を数か所に絞れば、下手に聴こえることもなく、ここぞという場面が引き立ちます。

がなりで喉を痛めないための注意点

「がなりは喉に悪い」「がなると喉痛い」「喉痛めるのが怖い」「喉壊すのでは?」と心配する声もよく聞きます。がなりは声帯とその周りの組織を強く使うテクニックなので、やり方や量を間違えると喉を痛める原因になるのは事実です。一方で、多くのプロの歌手がライブで何曲もがなりを使っているように、正しい出し方と量を守れば、喉を痛めないで付き合っていくことはできます。

喉を痛める主な原因

  • 力で押し出している:喉を締め、強い息で無理やりノイズを作ると、声帯同士が強くぶつかる
  • 長く・多く使いすぎる:1曲の中で何度もがなる、同じ曲を何十回も練習する
  • 準備運動なしで始める:冷えた喉でいきなり強いがなりを出す
  • 喉の調子が悪いときも続ける:風邪気味・声がれ・乾燥しているときの練習

声帯に強い負担をかけ続けると、声帯ポリープや声帯結節などの原因になることがあるといわれています。がなりに限らず、声の使いすぎには注意が必要です。

こんな症状が出たらすぐ中止する

がなりの練習中や練習後に、次のような症状が出たら、その日の練習はすぐにやめましょう。

  • 喉が痛い、ヒリヒリする
  • 咳が出る、むせる
  • 痰が絡む感じが続く
  • 喉の奥が詰まって吐きそうになる
  • 声がかすれて元に戻らない

休んでも喉の痛みや声がれが続く場合は、自己判断で練習を再開せず、耳鼻咽喉科を受診してください。声の専門外来(音声外来)がある病院なら、歌う人の喉の相談にも慣れています。

喉のサインで練習を続けるか休むかを判断する 続けてOK 今日は中止 受診する すぐ元の声に 戻れる ヒリヒリ・咳 痰が絡む 休んでも痛み 声がれが続く 迷ったら休む
すぐ元の声に戻れるなら練習を続けてよいが、痛みや咳が出たら中止し、休んでも続くなら耳鼻咽喉科へ

喉を痛めないがなりのルール

  1. 練習の前に準備運動をして、喉と体を温める
  2. がなりの練習は1日15分程度まで、1回のがなりは1〜2秒まで
  3. こまめに水を飲み、喉の乾燥を防ぐ
  4. 練習後は無理に話さず、喉を休ませる
  5. 痛みを感じたら「もう少しだけ」と続けない

喉の痛めやすさには個人差があり、同じ練習量でも平気な人と疲れやすい人がいます。他人の練習量と比べず、自分の喉の声を聞きながら進めてください。

歌の中でのがなりの入れ方・カラオケでの使い方

がなりの出し方を覚えたら、次は「曲のどこに入れるか」です。がなりの歌い方で上手い・下手の差が出るのは、声そのものより入れ方です。今の流行りのJ-POPやボカロ曲でも、上手な歌手ほどがなりの入れどころを絞っています。

がなりを入れる3つの場所

  • 語頭(フレーズの最初の一音):最も基本的な使い方。一瞬だけ荒らしてすぐにクリーンな声に戻すと、言葉が強く立つ
  • サビ頭・ラスサビ:曲の盛り上がりに合わせて入れると、感情の爆発を表現できる。ラスサビだけに入れて特別感を出す使い方も効果的
  • 語尾・叫ぶ歌詞:「だ!」「ない!」など言い切る語尾や、叫ぶような歌詞に短く乗せる

反対に、静かなAメロや、ささやくように歌う部分にはがなりを入れないのが基本です。静と動のコントラストがあるからこそ、がなりが映えます。

がなりはフレーズの語頭・サビ頭・語尾に入れる Aメロ Bメロ サビ 語頭 サビ頭 語尾 橙はがなり・藍はクリーンな声。入れすぎない
がなりは語頭・サビ頭・語尾など要所だけに入れ、残りはクリーンな声で歌うとメリハリが出る

カラオケでがなりを使うときのコツ

カラオケでがなりを使うなら、まずマイクの使い方に気をつけましょう。がなると声の勢いと音量が急に上がるため、マイクを口に近づけたままだと音が割れてしまいます。がなる瞬間だけマイクを数センチ離すと、聴きやすく迫力のある声になります。

また、「がなると点数下がる?」という疑問もよく聞きます。カラオケの採点は、主に音程の正確さや安定感、抑揚などで評価されるものが多く、がなりそのものが加点されるとは限りません。ノイズで音程がぼやけると、カラオケの点数が下がる原因になることもあります。点数を狙うときはがなりを控えめにし、盛り上がり重視で歌うときに思い切り使う、と使い分けるのがおすすめです。

録音するときのエフェクトの注意

歌ってみたなどで録音する場合、がなりの部分はノイズ成分が多いため、ミックスでエフェクト(コンプレッサーやリバーブ)を強くかけると、がなりのザラつきが大きく強調されたり、逆に埋もれたりします。がなりの量は録音の段階で決めておき、エフェクトは補助として薄く使うと自然に仕上がります。

ボカロ・歌声合成ソフトでがなりを表現する方法

ボカロ曲を作る人の間でも、「合成音声にがなりを入れたい」というニーズは増えています。人間の喉のように仮声帯を震わせることはできないので、ボカロの調声ではピッチ・音量・声質のパラメータを細かく動かして「荒れた声」に聴こえる状態を作るのが基本のやり方です。

どのソフトでも使える基本のやり方

  1. ピッチを細かく揺らす:がなりたい音の頭だけ、ピッチ線を細かいジグザグに描く。揺れ幅は小さく、ごく短い時間にとどめる
  2. 声を張った質感にする:声の張り(テンション)を上げるパラメータがあれば、がなる音だけ上げる
  3. 息の成分を一瞬足す:ブレシネス(息っぽさ)を音の立ち上がりだけ上げると、ざらついた印象が出やすい
  4. エフェクトで仕上げる:ディストーションやサチュレーション系のプラグインを、がなりのトラックにだけ薄くかける
ボカロのがなりはピッチ線を細かく揺らして作る ふつうの音 がなりの音 音の頭だけ 揺れは小さく・短く。長いと音痴に聴こえる
がなりたい音の頭だけピッチ線を細かく揺らし、すぐ平らに戻すと、荒れた声に聴こえやすい

ソフト別のポイント

ソフトがなりに使える主な方法
VOCALOIDVOCALOID4で追加された「グロウル(GWL)」パラメータで声を荒らせる(対応した歌声ライブラリのみ)。VOCALOID6など新しい版で使える機能は公式マニュアルで確認
Piapro Studio(初音ミクなど)ピッチ線とボイスバンクの声色切り替えを組み合わせる
Synthesizer V専用のがなり機能は無いとされ、テンション(張り)やブレシネスを音の頭だけ動かす。Synthesizer V2(Studio 2)で追加された機能はバージョンごとに確認
UTAUピッチ線の手描きやプラグインでジグザグを作る。moresamplerなどのリサンプラーのフラグで声の張りを変える
VoiSonaピッチの手描きと声質系パラメータの調整で表現する

UTAUのやり方では、ビブラートの設定で周期をごく短く、深さを浅くして音の頭だけにかけると、荒れた揺れに近い効果を狙う方法もあります。VoiSonaのやり方も含め、どのソフトも機能の追加や仕様変更があるため、具体的なパラメータ名や操作は各ソフトの公式サイト・マニュアルで最新情報を確認してください。

ボカロのがなりを自然に聴かせるコツ

人間のがなりと同じく、入れる場所を絞ることが最大のコツです。すべての音をがならせると、ただ音痴でノイズの多い歌に聴こえてしまいます。お手本としては、人間の歌い手が同じボカロ曲をがなり入りで歌った歌ってみたを聴き、「どの音の頭を荒らしているか」を耳コピしてパラメータに落とし込むのが近道です。

楽器のがなり(サックスのグロウル奏法)

「がなり」は歌だけの言葉ではありません。管楽器の世界でも、音にザラついたうなりを加える奏法を「がなり」と呼ぶことがあります。一般には「グロウル(グロウル奏法)」という名前で知られ、とくにサックスでよく使われる奏法です。

サックスのがなりのやり方

サックスのがなりの出し方は、楽器を吹きながら、喉で同時に声を出す(うなる)のが基本です。楽器の音と自分の声がぶつかり合うことで、音に「ブォォ」というザラついたうなりが生まれます。歌のがなりが「声+喉のノイズ」なら、サックスのがなりは「楽器の音+声」の足し算だといえます。

  1. まず楽器を使わずに、低い声で「うー」とハミングする
  2. ロングトーンでふつうに音を出し、安定させる
  3. 吹きながら、1のハミングを小さく混ぜる
  4. 声の高さを楽器の音と変えたり近づけたりして、うなりの質感を調整する

テナーサックスはロックやR&Bで荒々しい音色が求められる場面が多く、がなりの効果がわかりやすい楽器です。アルトサックスでも同じやり方で出せます。

サックスのがなりは楽器の音と声を同時に鳴らす 楽器の音 喉の声 うなる音 グロウル奏法
サックスのがなり(グロウル奏法)は、楽器の音と喉で出す声を同時に鳴らして、うなりを生む

クラリネット・フルートなど他の楽器

クラリネットのやり方も基本はサックスと同じで、吹きながら声を混ぜます。ただしクラリネットはサックスより音が繊細なため、声を混ぜると音程が不安定になりやすく、少しずつ慣らすのがコツです。フルートでも声を混ぜる奏法のほか、舌を巻いて「ルルル」と震わせるフラッタータンギングで荒々しさを出すことがあります。

弦楽器では、ギターがエフェクターのディストーションで音を歪ませるのが、がなりに近い発想です。どの楽器でも「きれいな音にノイズや揺れを足して迫力を出す」という考え方は共通しており、歌のがなりを理解するヒントにもなります。管楽器のがなりも喉を使うので、歌と同じく痛みを感じたら無理をしないようにしましょう。

舞台・テレビで使う「がなり」(がなりマイク)

舞台やライブの現場で「がなり」と言った場合、声のことではなく機材を指す業界用語であることが多いので注意が必要です。音楽用語としてのがなりとは意味がまったく違います。

舞台用語の「がなり」とは

舞台用語のがなりとは、リハーサル中に演出家や舞台監督が客席から舞台上の出演者・スタッフへ指示を出すためのマイク(がなりマイク)のことです。客席側で話した声が舞台上のスピーカーから流れるので、広いホールでも大声を出さずに「もう一度そこから」「立ち位置を半歩下がって」といった指示を届けられます。大声でがなる代わりの道具、という由来がわかりやすい呼び名です。

演劇のほか、コンサートやイベントのステージでも使われ、設置や音量の調整はPA(音響)スタッフが担当するのが一般的です。本番では客席に音が聴こえないよう、リハーサル専用として扱われます。

がなりマイクは客席から舞台へ指示を届ける道具 舞台(出演者・スタッフ) スピーカー 客席(演出家・舞台監督) がなりマイク 指示が舞台に届く
舞台用語の「がなり」は、客席の演出家が舞台上のスピーカーへ指示を流すリハーサル用のマイク

テレビ・ラジオやお笑いでの「がなり」

テレビ番組やラジオの収録現場でも、スタジオへ指示を伝えるマイクやスピーカーを、舞台と同じく「がなり」と呼ぶことがあります。現場ごとに呼び方は違うので、業界用語として「そういう呼び方もある」と覚えておけば十分です。

また、お笑いの世界では、漫才やコントで芸人が大声でまくし立てるツッコミや叫ぶ芸風を「がなる」と表現することがあります。これは歌の技法ではなく、「がなり立てる」という日常語の意味で使われているものです。お笑いでいう「がなりとは」、つまり大声で勢いよく言い立てる話し方のことだと考えてください。

声優のセリフ・タイトルコールのがなり

声優の演技でも、怒鳴るセリフや作品のタイトルコールで、声にザラつきを混ぜる表現が使われます。仕組みは歌のがなりと同じで、声優も喉を守るために、短く・要所だけに入れる技術を身につけています。歌で練習したがなりは、朗読や演劇のセリフにもそのまま応用できます。

よくある質問

がなり声は才能がないと出せませんか?
才能は必要ありません。がなりは仮声帯などの動かし方を覚える技術なので、声がきれいな人でも、声が細い人でも練習で身につけられます。ただし、習得までの早さには個人差があります。うがいや咳払いの感覚から始め、小さい声で出し入れする練習を続けてみてください。
がなりは喉に悪いですか?
力で押し出す、長く使いすぎるといったやり方をすると喉を痛める原因になります。1回のがなりは1〜2秒、練習は1日15分程度までを目安にし、痛みや声がれが出たらすぐに中止してください。休んでも治らない場合は耳鼻咽喉科に相談しましょう。
女性でもがなりは出せますか?
出せます。女性は話し声の高さか少し低い音から始め、ノイズを薄めに混ぜるのがコツです。高音でがなるときは、地声で張り上げずにミックスボイスに短いがなりを重ねましょう。
がなりの練習にオススメの曲一覧はありますか?
本文の「がなり声が聴ける曲」と「練習曲・出しやすい曲の選び方」の章で、レベル別に紹介しています。最初は自分の声域の中低音で歌える、ミドルテンポの曲を選ぶのがおすすめです。声を荒らす場所がサビの頭など数か所に限られている曲から始めると、無理なく練習できます。

まとめ

がなり声とは、声帯が作る音程のある声に、仮声帯などで生まれるノイズを薄く重ねて、迫力や感情を表現する歌唱テクニックです。最後に、この記事のポイントを振り返ります。

  • がなりの主役はあくまで音程のある歌声。ノイズは「色」として薄く足す
  • 出し方は「地声の安定 → ノイズの場所をつかむ → 声に薄く足す」の3ステップ
  • 高音ほどノイズは薄く短く。高音のがなりはミックスボイスを先に安定させる
  • 入れる場所は語頭・サビ頭・語尾に絞る。入れすぎは「うるさい」の原因になる
  • 痛み・咳・声がれが出たらすぐ中止。1日15分程度までを目安にする

がなりは、独学だと「喉を締めているだけなのか、正しく出せているのか」が自分では判断しにくいテクニックです。安全に最短で身につけたいなら、ボイストレーニングの先生に直接発声を見てもらうのがいちばんの近道です。ボイトレ教室検索では、全国のボイストレーニング教室を都道府県・市区町村・駅から探せます。体験レッスンで「がなりを練習したい」と伝えて、自分の声に合った出し方を教わってみてください。