倍音唱法とは?意味・英語での呼び方・聞こえ方

倍音唱法とは、1つの声の中に含まれている「倍音」を口の形で強調し、低い持続音と高い旋律を同時に聞かせる歌い方のことです。歌い手は1人で、声帯が出している音も1つだけですが、聞き手には「低いうなり」と「その上で動く笛のような音」の2つが重なって聞こえます。

倍音唱法の意味:1人で2つの音を聞かせる

私たちの声は、実は1つの高さの音だけでできているわけではありません。「ド」を出しているつもりでも、その声には一番低い音(基音)のほかに、2倍・3倍・4倍…と整数倍の高さの音(倍音)がたくさん含まれています。ふだんはこれらの倍音が溶け合って「声の音色」として聞こえるため、1つ1つを聞き分けることはありません。

倍音唱法では、口の中の形を細かく調整してたくさんある倍音のうち1本だけを大きく響かせます。すると、その倍音だけが音色から浮き上がり、独立した高い音として耳に届きます。さらに舌や唇を動かして強調する倍音を切り替えていくと、高い音がメロディーのように動いて聞こえます。低い基音は同じ高さで鳴らし続けるので、「持続する低音+動く高音」という2声の音楽になるわけです。

倍音唱法の英語での呼び方

倍音唱法は英語で overtone singing(オーバートーン・シンギング)と呼ばれるのが一般的です。overtone は「倍音(上音)」という意味の英語で、直訳すると「倍音の歌唱」になります。ほかにも英語では次のような呼び方があります。

  • harmonic singing(ハーモニック・シンギング):harmonic も「倍音」を指す英語で、西洋の合唱や瞑想系の実践でよく使われる
  • throat singing(スロート・シンギング):「喉歌」の意味。モンゴルやトゥバのホーミーなど、喉を強く使う伝統的な歌唱をまとめて指すことが多い
  • polyphonic overtone singing:1人で多声(ポリフォニー)を作ることを強調した言い方

日本語でも「倍音唱法」のほか「倍音発声」「喉歌(のどうた)」「オーバートーン唱法」と呼ばれることがあります。英語の throat singing には、倍音を強調しない低いうなり声の歌唱も含まれるため、厳密には倍音唱法=overtone singing と覚えておくと混乱しません。

倍音唱法の聞こえ方

初めて聞く人の多くは「口笛を吹きながら歌っているのでは?」と感じます。実際には口笛は使っておらず、高い音も声そのものに含まれている成分です。聞こえ方の特徴は次のとおりです。

  • 低い音は「ウー」「オー」のような母音で、ほぼ一定の高さで鳴り続ける
  • 高い音は金属的・笛のような澄んだ音色で、低い音よりずっと高い位置で鳴る
  • 高い音は舌や唇の動きに合わせて階段状に上下し、メロディーになる
1つの声に低い持続音と高い旋律が重なる 高い 低い 強調した倍音=笛のような旋律 基音=ずっと続く低い音
倍音唱法では、同じ高さで続く低い基音の上に、口の形で選んだ倍音が旋律として重なって聞こえる

倍音そのものは誰の声にも含まれているため、倍音唱法は特別な声帯を持つ人だけの技術ではありません。ただし、倍音を1本だけ浮き上がらせる口の形を見つけるまでには練習が必要です。次の章から、そのやり方を具体的に説明します。

倍音唱法のやり方|初心者向けの基本5ステップ

倍音唱法のやり方は、「低い声を一定に出し続ける」→「口の中の形をゆっくり変える」→「浮き上がった倍音を探して止める」という順番で覚えるのが近道です。いきなりモンゴルのホーミーのような力強い声を目指すと喉に負担がかかるので、まずは楽な声で倍音が聞こえる体験を優先しましょう。

ステップ1:楽に出せる低めの声を一定に出す

話し声より少し低いくらいの、無理なく出せる高さで「ウー」と声を出します。大切なのは高さも音量も変えずに、まっすぐ伸ばすことです。基音が揺れると、倍音も一緒に揺れて聞き取りにくくなります。息は5〜10秒ほど続く程度で十分です。声を張る必要はなく、中くらいの音量で構いません。

ステップ2:「ウ」から「イ」へゆっくり母音を変える

同じ高さのまま、母音を「ウ→イ→ウ→イ」と、1往復に4〜5秒かけてゆっくり変えます。口を大きく動かすのではなく、唇はすぼめ気味のまま、舌の位置だけが前後に動くイメージです。このとき、声の上の方で「ヒュー」「ピー」と細い音が上下に動くのが聞こえたら、それが倍音です。最初は気のせいに感じるくらい小さな音ですが、それで正解です。

ステップ3:鼻に響かせて倍音をはっきりさせる

倍音が少し聞こえてきたら、声をやや鼻にかけるように響かせます。「ング」と言うときのように舌の奥を軽く上げ、鼻の奥に響きを集めると、音色が金属的になり倍音が目立ちやすくなります。鼻に響かせる感覚がつかみにくい人は、鼻腔共鳴の練習も参考になります(鼻腔共鳴の記事)。

ステップ4:倍音が一番大きく聞こえる口の形で止める

「ウ→イ」の途中で、ある一点だけ倍音がひときわ大きく「ピー」と鳴る位置があります。そこで舌と唇の動きを止め、倍音を鳴らし続ける練習をします。この「止める」練習が、旋律を作るための土台になります。3〜5秒保てるようになったら、少しだけ舌を前後にずらして、隣の倍音に移れるか試してみましょう。

ステップ5:倍音を2〜3音行き来して旋律にする

止められる位置が2〜3か所見つかったら、それを順番に行き来して「ド・レ・ミ」のような短い旋律にします。基音は同じ高さのままで、動くのは倍音だけです。最初は3音を往復するだけで十分です。慣れてきたら、次の章以降で説明する舌の使い方を取り入れると、使える音が増えていきます。

倍音唱法を身につける基本の5ステップ 1 低めの声を一定に出す 2 「ウ→イ」とゆっくり変える 3 鼻に響かせて倍音を目立たせる 4 一番鳴る位置で止める 5 2〜3音を行き来して旋律に
基音を安定させてから母音を動かし、倍音を見つけて止め、最後に行き来して旋律にする

うまく聞こえないときのチェックポイント

  • 録音して聞く:自分の頭の中では倍音が聞こえにくいので、スマホで録音してイヤホンで聞くと気づきやすい
  • 静かな場所で練習する:エアコンや換気扇の音でも倍音はかき消される
  • 声が大きすぎないか確認する:張り上げると喉が締まり、口の形を細かく動かせなくなる
  • 母音の変化が速すぎないか確認する:倍音は口の形に敏感なので、ゆっくり動かさないと通り過ぎてしまう

倍音唱法の仕組み|倍音列と口の中の共鳴

倍音唱法で高い音が聞こえる理由は、声帯が作る「倍音の並び」と、口や喉が作る「共鳴の山」が重なるからです。仕組みを知っておくと、やり方の手順で「なぜ母音を変えると倍音が動くのか」が理解でき、練習の迷いが減ります。

基音と倍音列:声には整数倍の音が並んでいる

声帯が1秒間に130回振動すると、130Hz(ヘルツ)の基音が生まれます。このとき同時に、260Hz(2倍)、390Hz(3倍)、520Hz(4倍)…という整数倍の倍音も生まれます。この倍音の並びを倍音列と呼びます。倍音列の音程は決まっていて、基音を「ド」とすると、第2倍音は1オクターブ上のド、第3倍音はその上のソ、第4倍音は2オクターブ上のド、と続きます。

倍音の番号基音がドのときの音倍音唱法での使いやすさ
第6倍音ソ旋律の一番下に使われることが多い
第7倍音シ♭よりやや低い独特の響きになる音
第8倍音ド(3オクターブ上)旋律の中心になりやすい
第9倍音レよく使われる
第10倍音ミよく使われる
第12倍音ソ旋律の上の方で使われる

倍音唱法の旋律は、主に第6〜第12倍音あたりを使って作られます。この範囲の倍音は隣どうしの間隔が全音や半音に近く、「ド・レ・ミ・ソ」のような音階を拾えるためです。反対に、低い番号の倍音は間隔が広すぎて旋律になりにくく、もっと高い倍音は聞き取りにくくなります。

フォルマント:口と喉の形が作る共鳴の山

声帯で生まれた倍音は、喉・口・鼻を通るあいだに共鳴して、特定の高さの帯域だけが強められます。この共鳴の山をフォルマントと呼び、私たちが「ア」と「イ」を聞き分けられるのは、母音ごとにフォルマントの位置が違うからです。舌の位置や口の開き方を変えると、フォルマントの山も上下に動きます。口の中で響きを作る仕組みは口腔共鳴の記事でも詳しく解説しています。

倍音が浮き上がる理由:共鳴の山を1本の倍音に合わせる

ふだんの話し声では、フォルマントの山はなだらかで、近くの倍音をまとめて強めます。倍音唱法では、舌や唇の形を精密に調整して共鳴の山を鋭くし、倍音1本だけにぴったり合わせます。すると、その倍音だけが周りより飛び抜けて大きくなり、独立した音として聞こえるのです。やり方の手順で「ウ→イ」と母音を変えたのは、フォルマントの山を倍音列の上で滑らせ、合う位置を探すためでした。

共鳴の山が倍音1本だけを持ち上げる 基音 第8倍音 共鳴の山 低い ← 周波数 → 高い
鋭くした共鳴(フォルマント)の山を1本の倍音に合わせると、その倍音だけが飛び抜けて大きくなり旋律として聞こえる

なお、倍音が聞こえても基音の高さは変わっていません。倍音唱法は「声帯で2つの音を出す」技術ではなく、1つの声の中身を口の形で選び分ける技術だと理解しておきましょう。この理解があると、喉に力を入れて高い音を出そうとする失敗を避けられます。

舌で倍音を選ぶ2つの方法と旋律の付け方

倍音唱法のやり方には、大きく分けて「1腔法(いっこうほう)」と「2腔法(にこうほう)」の2つがあります。どちらも口の中の空間の形を変えて共鳴の山を動かす点は同じですが、舌の使い方と聞こえる倍音の強さが違います。初心者はまず1腔法で倍音を聞き取り、慣れてきたら2腔法でくっきりした音を目指すのがおすすめです。

1腔法:唇と母音で倍音を選ぶ方法

1腔法は、口の中を1つの大きな空間として使い、唇の開き具合と母音の変化で倍音を選ぶ方法です。やり方の章で紹介した「ウ→イ」の練習は、この1腔法にあたります。

  • 唇を小さくすぼめて「ウ」から始め、「オ→ア→エ→イ」と母音を順番に変えていく
  • 舌先は下の前歯の裏に軽く触れさせたまま動かさない
  • 母音が変わるたびに、少しずつ高い倍音が鳴る

1腔法は発音の延長なので覚えやすい反面、倍音の音量はやや控えめです。西洋の合唱や瞑想の場で行われる倍音唱法は、この方法に近いものが多く見られます。

2腔法:舌で口の中を前後2つに分ける方法

2腔法は、舌の中ほどを上あご(硬口蓋)に近づけて、口の中を「前の部屋」と「後ろの部屋」に分ける方法です。舌先は上の前歯の裏の歯ぐきあたりに軽く付けておき、英語の「L」や日本語の「ル」を言う直前のような形を作ります。

  1. 「ル」の形のまま、舌先を上の歯ぐきに付けて「ウー」と声を出す
  2. 舌の中ほどを上あごに近づけ、すき間を細くする
  3. 舌の盛り上がった位置を前後にゆっくりずらす
  4. 前に動かすと倍音が高く、後ろに動かすと低くなるのを確かめる

前の部屋が小さく鋭い共鳴を作るため、1腔法より倍音がはっきりと大きく聞こえます。モンゴルやトゥバの伝統的な歌い手が出す、口笛のように鋭い倍音は、主にこの2腔法の考え方で説明されます。舌の筋肉をコントロールする感覚は、歌うときの舌の使い方の練習とも共通しています。

1腔法と2腔法の舌の位置の違い 1腔法 2腔法 大きな1つの空間 前 後ろ 唇と母音で選ぶ 舌の山を前後に動かす
1腔法は口の中を1つの空間として使い、2腔法は舌の中ほどを上あごに近づけて前後2つの部屋に分ける

旋律の付け方:基音を固定して倍音だけを動かす

倍音唱法で旋律を歌うときのポイントは、基音の高さを絶対に動かさないことです。基音を変えると倍音列全体がずれてしまい、狙った音が出せなくなります。そのうえで、次の順番で練習すると旋律が作りやすくなります。

  • まず「ド・レ・ミ」(第8・9・10倍音)の3音を、舌の位置をずらして行き来する
  • 次に「ソ」(第6倍音や第12倍音)を加え、4〜5音の音階にする
  • 「ド・レ・ミ・レ・ド」「ミ・レ・ド・ソ」のような、ファを含まない短いフレーズを倍音だけでなぞってみる

倍音列には「ファ」にあたるきれいな音がないため、ファを含む曲は倍音だけでは正確に歌えません。伝統的な倍音唱法の旋律が「ド・レ・ミ・ソ」を中心とした五音音階に近い響きになるのは、この倍音列の性質によるものです。

倍音唱法とホーミーの違い|モンゴル・トゥバの喉歌

倍音唱法と一緒によく検索されるのが「ホーミー」です。結論からいうと、倍音唱法は倍音を強調する歌い方全般を指す言葉で、ホーミーはモンゴルに伝わる倍音唱法の伝統的なスタイルです。つまりホーミーは倍音唱法の一種であり、倍音唱法のすべてがホーミーというわけではありません。

ホーミーとは:モンゴルに伝わる喉歌

ホーミーは、モンゴル語で「喉」を意味する言葉に由来し、モンゴル高原の遊牧民のあいだで受け継がれてきた歌唱です。喉を強く締めた力のある低い声を持続させ、その上に口笛のような鋭い倍音で旋律を奏でます。馬頭琴などの伝統楽器と合わせて演奏されることも多く、草原を渡る風や川の流れなど、自然の音を声で描く表現として語られます。ホーミーは、モンゴルの歌唱芸術としてユネスコの無形文化遺産にも登録されています。

トゥバのホーメイとスタイルの種類

モンゴルの北西に接するロシア連邦のトゥバ共和国にも、よく似た喉歌が伝わっています。トゥバでは「ホーメイ」と呼ばれ、ホーメイは喉歌全体の総称であると同時に、そのうちの1つのスタイルの名前でもあります。代表的なスタイルは次のとおりです。

スタイル音の特徴
ホーメイ中くらいの高さの基音に、柔らかい倍音が重なる
スグット口笛のように鋭く高い倍音の旋律が目立つ
カルグラー非常に低くうなるような声。声帯に加えて仮声帯も振動させる
ボルバンナディル倍音が震えるように細かく揺れる

カルグラーのような低いスタイルでは、声帯の上にある仮声帯という部分も一緒に振動させて、基音の1オクターブ下のような低いうなりを作ります。仮声帯の位置や働きは仮声帯の記事で解説しています。

倍音唱法の中にホーミーやホーメイがある 倍音唱法(overtone singing) 中央アジアの喉歌 モンゴルのホーミー トゥバのホーメイ スグット・カルグラーなど そのほか チベットの読経 西洋の合唱 現代音楽など
倍音唱法は倍音を強調する歌い方の総称で、モンゴルのホーミーやトゥバのホーメイはその代表的な伝統スタイル

練習するときの違い:声の強さと喉の使い方

倍音唱法とホーミーの違いは、練習の場面では声の強さに表れます。この記事で紹介した基本のやり方は、楽な声で倍音を聞き取ることを優先した入門的な方法です。一方、伝統的なホーミーは喉を強く締めて密度の高い声を出し、倍音を遠くまで響かせます。そのため、見よう見まねで喉を締めつけると声がかれたり痛みが出たりしやすく、初心者がいきなり真似するのはおすすめできません。まずは楽な声での倍音唱法で倍音を操る感覚を身につけ、そのうえでホーミーに挑戦したい場合は、経験者の指導を受けながら少しずつ声の強さを上げていくのが安全です。

世界の倍音唱法と歴史

倍音唱法はモンゴルやトゥバだけのものではなく、世界各地にそれぞれ独自の形で伝わっています。もともとは各地の民族や宗教の中で受け継がれてきた伝統で、20世紀後半に西洋の音楽家が取り入れたことで世界に知られるようになりました。起源がいつなのかははっきりしていませんが、主な流れを整理すると次のようになります。

中央アジアの遊牧民に伝わる伝統

倍音唱法が最も豊かに発達したのは、モンゴル高原からトゥバ、アルタイにかけての中央アジアの草原地帯です。遊牧民の暮らしの中で、家畜を呼んだり、自然の音をまねたりする声の表現として受け継がれてきたといわれています。前の章で紹介したホーミーやホーメイは、この地域の代表的なスタイルです。

チベットの読経やそのほかの地域の倍音唱法

  • チベット仏教の読経:ギュト僧院などに伝わる読経では、非常に低い声で唱えながら、倍音を含んだ独特の響きを作る唱え方が知られています
  • イタリア・サルデーニャ島のカントゥ・ア・テノーレ:4人の男性による合唱で、低い声部が喉を使った独特の響きを出します
  • 南アフリカのコサ族の歌唱:女性が低い声と倍音を同時に響かせる歌い方が伝わっています

それぞれ声の出し方や音楽の中での役割は異なりますが、「1人の声の中の倍音を意識して響かせる」という点で共通しています。

西洋音楽と日本への広まり

20世紀後半になると、西洋の作曲家や歌手が倍音唱法に注目します。ドイツの作曲家シュトックハウゼンは1968年に、6人の歌手が倍音を響かせながら歌う作品『シュティムング』を作曲しました。1970年代にはアメリカのデヴィッド・ハイクスがハーモニック・クワイアを結成し、合唱による倍音唱法を広めました。こうした流れから、英語の overtone singing という呼び方が定着していきます。

日本では、ヒカシューのボーカリストである巻上公一さんがトゥバのホーメイを学び、1998年に日本トゥバ・ホーメイ協会を設立して、トゥバの演奏家を招く交流を続けています。現在では、ワークショップや動画を通じて倍音唱法に触れられる機会も増えています。

倍音唱法が世界に広まった流れ 起源不明〜 中央アジアの遊牧民に伝わる 1968年 シュトックハウゼン『シュティムング』 1970年代 ハイクスが合唱で倍音唱法を広める 1998年 日本トゥバ・ホーメイ協会が設立
遊牧民の伝統だった倍音唱法は、20世紀後半に西洋の音楽家が取り入れて広まり、日本でも交流が始まった

このように倍音唱法は、伝統音楽・宗教・現代音楽という異なる文脈で育ってきた歌い方です。練習するときも、どのスタイルを目指すのかを意識すると、参考にする音源や声の強さを選びやすくなります。

倍音唱法の練習方法と喉を痛めないための注意点

倍音唱法の練習方法は、1日10〜15分を目安に、「聞く→見つける→止める→動かす」の順で段階的に進めるのが効果的です。倍音を聞き取る耳と、舌を細かく動かす筋肉の両方が必要なので、長時間まとめて練習するより、短時間を毎日続けるほうが上達しやすくなります。

段階別の練習メニュー

段階練習内容目標
1週目ハミングと「ウ→イ」の母音変化倍音が動く音に気づく
2週目倍音が一番鳴る位置で止める1つの倍音を3〜5秒保つ
3週目2腔法で舌の山を前後に動かす2〜3音を行き来する
4週目以降短いフレーズを倍音でなぞるド・レ・ミ・ソの旋律を歌う

1週目のハミングは、口を閉じたまま「ンー」と声を出し、鼻や顔の響きを感じる練習です。倍音唱法の土台になる「楽に響く声」を作るのに役立ちます。やり方はハミングの記事を参考にしてください。進み方には個人差があり、1日で倍音が聞こえる人もいれば、数週間かかる人もいます。上の表の期間はあくまで目安です。

倍音唱法は4つの段階で練習する 聞く 止める 動かす 歌う 1週目 2週目 3週目 4週目〜 期間は目安。1日10〜15分を毎日続ける
倍音を聞く、止める、動かす、旋律として歌うの順に、1週間ずつ段階を上げていくのが目安

喉を痛めないための注意点

  • 声を張り上げない:倍音は音量ではなく口の形で目立たせるもの。大声を出しても倍音は大きくならない
  • 喉を締めつけない:ホーミーのような締めた声を無理に真似すると、声がかれる原因になる
  • 1回の練習は短く:喉に乾きや疲れを感じたら、その日の練習はやめて水分をとる
  • 息を安定させる:基音を一定に保つには、息を一定の量で吐き続ける力が必要。呼吸の基本は歌の呼吸の記事で確認できる

練習中や練習後に喉の痛みや声のかすれが続く場合は、練習を中止し、耳鼻咽喉科を受診してください。倍音唱法は正しく行えば楽な声でもできる技術なので、痛みを我慢して続ける必要はありません。

普段の歌への活かし方

倍音唱法の練習で身につく「口の中の形を細かく調整して響きを変える感覚」は、普段の歌にも役立ちます。たとえば、同じ高さの音でも舌の位置を少し変えるだけで声の明るさが変わることがわかるため、曲の雰囲気に合わせて音色を選べるようになります。また、自分の声の倍音に耳を向ける習慣がつくと、声がこもっているのか、明るく響いているのかを自分で判断しやすくなります。声の響きを広げる考え方は共鳴腔の記事もあわせて読むと理解が深まります。

よくある質問

倍音唱法は誰でもできるようになりますか?
倍音は誰の声にも含まれているため、口の形を調整するコツをつかめば多くの人が倍音を聞かせられるようになります。ただし、倍音が聞こえるまでの期間には個人差があり、はっきりした旋律を歌えるようになるには継続的な練習が必要です。
倍音唱法とホーミーは同じものですか?
同じではありません。倍音唱法は倍音を強調する歌い方全般の呼び方で、ホーミーはモンゴルに伝わる倍音唱法の伝統的なスタイルです。ホーミーは倍音唱法の一種と考えるとわかりやすいです。
倍音唱法は英語で何といいますか?
一般的には overtone singing(オーバートーン・シンギング)といいます。harmonic singing と呼ばれることもあり、モンゴルやトゥバの喉歌を含めて throat singing と呼ぶこともあります。
倍音唱法の練習で喉が痛くなりました。どうすればいいですか?
すぐに練習を中止して喉を休ませてください。声を張り上げたり喉を締めつけたりしていないか見直し、楽な声量で練習し直しましょう。痛みやかすれが続く場合は耳鼻咽喉科を受診してください。
カラオケでも倍音唱法は使えますか?
倍音唱法の旋律は倍音列で出せる音に限られるため、一般的な歌の旋律をそのまま歌うのには向いていません。一方で、練習で身につく「舌や口の形で響きを調整する感覚」は、カラオケで声の明るさや響きを整えるのに役立ちます。

まとめ

倍音唱法は、1つの声に含まれる倍音を口の形で強調し、低い持続音と高い旋律を同時に聞かせる歌い方です。この記事のポイントを振り返ります。

  • 倍音唱法は英語で overtone singing と呼ばれ、声帯で2つの音を出すのではなく、1つの声の中身を口の形で選び分ける技術
  • やり方は「低い声を一定に出す→ウ→イと母音を変える→鳴る位置で止める→行き来して旋律にする」の順
  • 仕組みは、共鳴(フォルマント)の山を倍音1本に合わせて浮き上がらせること
  • 唇と母音で選ぶ1腔法と、舌で口の中を前後に分ける2腔法がある
  • ホーミーはモンゴルに伝わる倍音唱法の伝統スタイルで、トゥバのホーメイもその仲間
  • 練習は1日10〜15分を毎日。声を張らず、喉の痛みが続くときは練習を中止して専門医へ

倍音唱法は独学でも始められますが、自分の声がどう響いているかを客観的に知るのは難しいものです。基音を安定させる呼吸や、舌・口の中の細かなコントロールを確実に身につけたい人は、ボイストレーナーに声を聞いてもらうのも近道です。ボイストレーニング教室の検索から、通いやすい地域の教室を探して体験レッスンを受けてみてください。