ホイッスルボイスとは?意味・定義と別名

ホイッスルボイスとは、人の声が出せる音域のうちいちばん高い帯域を受け持つ発声のことです。英語では whistle voice、または声区(レジスター)の一つとして whistle register と呼ばれます。名前のとおり、口笛や笛(ホイッスル)を吹いたような細く鋭い音色になるのが特徴で、地声や裏声とは明らかに違う「人の声とは思えない高さ」に聞こえます。

ホイッスルボイスの意味と定義

ホイッスルボイスの定義をひと言でまとめると、「裏声(ファルセット・ヘッドボイス)よりさらに上で使われる、最も高い声区」です。声の研究では、声を低い方から順に次のような声区に分けて説明するのが一般的です。

  1. チェストボイス(地声):話し声に近い、低〜中音域の声
  2. ミックスボイス:地声と裏声の中間で、両者をなめらかにつなぐ声
  3. ヘッドボイス・ファルセット(裏声):地声では届かない高音域を受け持つ声
  4. ホイッスルボイス:裏声の上限をさらに超えた、最も高い声

音の高さでいえば、女性の場合はおおむねC6(約1,047Hz)あたりから上がホイッスルボイスの帯域とされます。ピアノの鍵盤でいうと、中央のドから2オクターブ上のドより高い音です。ただし、どこから上をホイッスルと呼ぶかは文献や指導者によって幅があり、音の高さだけでなく「音色が笛のように変わったか」で判断されることも多いです。詳しい音域は後の章で説明します。

ホイッスルボイスは声区のいちばん上の帯域 低い ← 音域 → 高い チェスト ミックス ヘッド ホイッスル 地声系 混ぜる〜裏声系 C6付近〜 裏声の上限をさらに超えた最上段がホイッスル
声区は低い方からチェスト・ミックス・ヘッド・ホイッスルの順に並び、ホイッスルボイスは最も高い帯域を受け持つ

ホイッスルボイスの別名|英語・中文・韓国での呼び方

ホイッスルボイスには、いくつかの別名があります。国や分野によって呼び方が違うので、調べものをするときに知っておくと便利です。

呼び方使われる場面
ホイッスル・レジスター(whistle register)英語圏の声楽・音声学。英語版の百科事典(wiki)もこの項目名
フラジオレット(flageolet register)クラシック・音声学の古い呼び方。笛の一種に由来
海豚音(イルカの声)中文(中国語圏)での一般的な呼び方
イルカの声・イルカボイス日本のファンの間での俗称
超高音・スーパー裏声カラオケ・ボイトレでのくだけた言い方

中文で「海豚音」と呼ばれるように、ホイッスルボイスはイルカの鳴き声にたとえられることがよくあります。キーンと細く伸びる音色が、水族館で聞くイルカの「キュイー」という声に似ているためです。

ホイッスルボイスはどんな音?口笛・悲鳴・叫び声との共通点

ホイッスルボイスの音は、次のような身近な音に近いと表現されます。

  • 口笛:息の通り道が細い笛のような、倍音の少ない澄んだ音
  • 悲鳴・叫び声:驚いたときに思わず出る「キャー!」の一番高いところ
  • 赤ちゃんや子供のはしゃぎ声:小さな子供が興奮したときの「キーッ」という甲高い声

つまり、ホイッスルボイスは特別な人だけの不思議な声ではなく、多くの人が悲鳴や叫び声として無意識に出したことのある音域でもあります。違いは、それを狙った音程で、コントロールして歌に使えるかどうかです。歌手が使うホイッスルボイスは音程が正確で、伸ばしたり強弱をつけたりできる点で、ただの悲鳴とは区別されます。

ホイッスルボイスは声区の一つなので、声区全体の考え方を知っておくと理解が深まります。声区の分け方や境目については声区の解説記事で詳しく紹介しています。

ホイッスルボイスの仕組み|声帯・筋肉・息のメカニズム

ホイッスルボイスの仕組みは、実はまだ完全には解明されていません。「声帯を使わずに笛のように鳴らしている」と説明されることもありますが、近年の研究ではそう単純ではないことがわかってきました。ここでは、現在わかっていることと、まだ議論が続いていることを分けて説明します。

声の高さが決まる原理

声の高さ(周波数)は、声帯が1秒間に何回振動するかで決まります。ギターの弦と同じで、声帯が薄く・強く引き伸ばされ、振動する部分が短くなるほど高い音になります。ホイッスルボイスの帯域では、声帯は1秒間に1,000回以上も振動しています。

この「引き伸ばす」役目を担う筋肉が輪状甲状筋です。輪状甲状筋は喉仏(甲状軟骨)の下にある小さな筋肉で、甲状軟骨を前に傾けて声帯を前後に引っ張ります。裏声で高い声を出すときに主役になる筋肉で、ホイッスルボイスではこの筋肉がさらに強く働いていると考えられています。

声帯の張力・振動部分・息の圧力が音の高さを決める 声帯をより強く張る 振動する部分が小さい 息の圧力が高い 振動が速くなる =ホイッスル帯域
輪状甲状筋で声帯を強く張り、振動部分を小さくし、息の圧力を保つほど声帯の振動は速く=音は高くなる

ホイッスルボイスのときの声帯の状態

2020年代に入り、高速度カメラで声帯を撮影した研究(論文)がいくつも発表されています。そこでは、ホイッスルボイスを出している最中も声帯が接触しながら振動している様子が確認されています。つまり、ホイッスルボイスも基本的には声帯の振動で作られた声だと考えられるようになってきました。

研究で報告されている、ホイッスルボイスのときの声帯の状態は次のとおりです。

  • 声帯が強く引き伸ばされ、通常の話し声のときより大幅に長く・薄くなっている
  • 振動の幅(振幅)がとても小さい
  • 声帯の下の息の圧力(声門下圧)が高い

一方で、「声帯のどの部分が振動しているのか」や「振動を生む力の中心は何か」については、研究者のあいだでも説明が分かれています。かつては声帯の隙間を通る空気の渦が笛のように鳴っているという説もありましたが、現在は仮説のひとつという扱いです。ネット上には「声帯の前の方だけが振動する」「声帯は振動していない」と言い切る解説もありますが、定説と呼べる段階ではないと理解しておくのが正確です。

喉・喉仏・喉の形はどうなっている?

ホイッスルボイスを出すとき、喉の中では次のような変化が起きやすいとされます。

喉仏の位置
高い声を出すと喉仏は上がりやすくなります。ただし、上がりきって喉が詰まると音が出にくくなるため、上手な人ほど喉仏を上げすぎずに出しています。
喉の形(声道)
口の中や喉の空間の形で音色が変わります。口を横に引いた「イ」や、軽く開けた「ア」「ウ」など、人によって出しやすい母音が違うのはこのためです。
仮声帯
声帯のすぐ上にある仮声帯(かせいたい)が締まると、声がつぶれたり雑音が混ざったりします。ホイッスルボイスでは仮声帯は締めず、開いた状態を保つのが理想です。

息の量と呼気の使い方

ホイッスルボイスは超高音なので、たくさんの息を勢いよく吐けば出ると思われがちです。しかし実際には、吐く息の量はそれほど多くなく、圧力が高い状態で出ています。息の量が多すぎると声帯が振動を保てず、息漏れの多いかすれた音になります。

呼気(吐く息)は「強く吐き出す」より「細く一定に保つ」イメージが近いでしょう。息の流れを安定させる土台は腹式呼吸です。また、声帯の状態が悪いとき(乾燥・疲れ・風邪のあと)は声帯の表面がむくんで高い音ほど出にくくなるため、ホイッスルボイスはその日の喉のコンディションに強く左右されます。

ホイッスルボイスの種類|構音型・気流型・吸気発声

ホイッスルボイスの種類として、日本のボイトレ界隈では「構音型」と「気流型」という分け方がよく使われます。さらに、息を吸いながら出す「吸気発声」のホイッスルもあります。これらは学術用語ではなく、指導者やサイトによって説明に差がありますが、自分の出している音を整理するのに役立ちます。

ホイッスルボイスの3つの型と音色の違い ホイッスル 構音型 澄んだ楽音 歌に使いやすい 気流型 息っぽい・鋭い 入口にしやすい 吸気型 吸いながら出す 歌には使いにくい
ボイトレでは音色の違いから構音型・気流型、息の向きから吸気型に分けて説明されることが多い

構音型ホイッスルボイスとは

構音型は、音程がはっきりした澄んだ音で鳴るホイッスルボイスです。一般に「歌手が使うホイッスルボイス」としてイメージされるのはこちらで、マライアキャリーやアリアナグランデのように、メロディの一部として正確な音程で歌われるタイプが構音型の例として挙げられます。

声帯がしっかり振動して楽音になっているため、音程を動かしたり、伸ばしたりといったコントロールがしやすいのが特徴です。そのぶん、裏声(ヘッドボイス)の土台がしっかりしていないと出しにくく、習得には時間がかかります。

気流型ホイッスルボイスとは

気流型は、息の流れの音が混ざったかすれ気味、または叫び声に近い鋭い音のホイッスルボイスです。気流型の説明はサイトによってまちまちで、「柔らかい音」とするものも「金属的な音」とするものもありますが、共通しているのは「構音型ほど音程が安定せず、息の成分が多い」という点です。

気流型は、悲鳴のような感覚で偶然出せることが多いため、ホイッスルボイス習得の入口として使われます。ただし、息を強く押し出して出す癖がつくと喉を痛めやすいので、気流型で高さの感覚をつかんだら、少ない息で鳴らせる構音型を目指すのが一般的な流れです。

吸気発声のホイッスル|息を吸う・吐くの違い

ホイッスルボイスには、息を吸いながら出すやり方もあります。これを吸気発声(インヘイル)と呼びます。通常の歌声は息を吐く(呼気)ときに出しますが、息を吸い込みながら声帯を鳴らすと、普段より高い音が出やすいと感じる人が多く、吸気のほうが高音域を出しやすかったという事例研究も報告されています。

ホイッスルボイスを練習し始めた人が「吸うと出るのに、吐くと出ない」と悩むのはよくあることです。吸気と呼気の違いをまとめると次のとおりです。

項目吐く(呼気)吸う(吸気)
出しやすさ難しい偶然出やすい
歌での使いやすさ歌詞・メロディに乗せられる長く伸ばせず歌には不向き
練習での位置づけ最終目標高さの感覚をつかむ入口

吸気で出す高い声の身近な例が、お笑いタレントの明石家さんまさんの「引き笑い」です。息を吸いながら「ヒーッ」と出すあの笑い声は吸気発声で、ボイトレ系の分析ではhihiA(A5)前後の高さとされています。ホイッスルボイスの帯域(C6付近〜)よりは低いものの、吸い込みながら高い声が出る感覚をイメージするのにわかりやすい例です。吸気のホイッスルは長時間続けると喉が乾燥しやすいので、感覚をつかむ程度にとどめましょう。

舌の位置・鼻への響きと音色の関係

どの型でも、音色を左右するのが舌の位置と響かせ方です。ホイッスルボイスの舌の位置は、舌先を下の前歯の裏に軽く触れさせ、舌の奥が喉をふさがない状態が基本です。舌の奥が盛り上がって喉が狭くなると、構音型の澄んだ音が出にくくなります。舌の使い方は歌うときの舌の使い方で詳しく解説しています。

また、ホイッスルボイスを出すときに「鼻の奥」や「頭のてっぺん」に響く感覚を持つ人もいます。鼻をつまんでも音色がほとんど変わらないなら、鼻に息が抜けすぎていない証拠です。響きの感覚は人によって違うため、音色を録音して確かめながら自分に合う響かせ方を探すのが確実です。

裏声・ファルセット・ヘッドボイス・ミックスボイスとの違い

ホイッスルボイスは「すごく高い裏声」と思われがちですが、裏声・ファルセット・ヘッドボイスとは音色も出し方も違います。ここでは、よく比較される発声との違いと見分け方を整理します。

裏声・ファルセットとの違い

裏声とは、地声(チェストボイス)より上の高音域で使う、声帯を薄く引き伸ばした発声の総称です。そのうち息が多く混ざった柔らかい裏声をファルセットと呼びます。ホイッスルボイスと裏声の違い、ファルセットとの違いは次の3点です。

  1. 高さ:裏声・ファルセットの上限を超えた、さらに上の帯域がホイッスルボイス
  2. 音色:ファルセットは息っぽく柔らかい。ホイッスルボイスは倍音が少なく、笛のように細く鋭い
  3. 切り替わり:裏声からホイッスルボイスに上がるとき、声が「ひっくり返る」ような境目(喚声点)がある人が多い

ファルセットの出し方や特徴はファルセットの解説記事にまとめています。

ヘッドボイス・スーパーヘッドボイスとの違い

ヘッドボイスとは、裏声系のうち息漏れが少なく芯のある響きの高音です。ホイッスルボイスとヘッドボイスの違いは、ヘッドボイスが「人の歌声らしい響き」を保っているのに対し、ホイッスルボイスは楽器のような響きになる点です。ヘッドボイスで出せる最高音の少し上から、音色がふっと細くなって笛のような音に変わる地点が、ホイッスルボイスへの切り替えポイントです。

「スーパーヘッドボイス」という言葉も見かけますが、これは定義が一定していない言葉です。ホイッスルボイスの別名として使うサイトもあれば、ヘッドボイスを極限まで高くした声を指すこともあり、ビートボックスの技の名前として使われる例もあります。スーパーヘッドボイスとの違いを気にするより、音色が笛のように変わっているかどうかで判断するのが実用的です。ヘッドボイスについて詳しくはヘッドボイスの解説記事をご覧ください。

発声ごとに受け持つ高さの帯と重なり 低い ← 音の高さ → 高い 地声 ミックス 裏声(ヘッド等) ホイッスル 切り替え
裏声の上端とホイッスルの下端は少し重なり、その境目で音色が笛のように切り替わる

地声・ミックスボイスとの違い

地声(チェストボイス)とミックスボイスは、ホイッスルボイスとは声区が大きく離れています。地声は話し声に近い低〜中音域の声、ミックスボイスは地声と裏声の間をなめらかにつなぐ声で、どちらも「人の声らしい太さ」がある点でホイッスルボイスと対照的です。

地声やミックスボイスのままホイッスルボイスの高さまで上がることはできません。高音へ上がるほど地声系の要素を減らし、裏声系に移ってから、さらにその上でホイッスルボイスに切り替わる、という順番になります。ミックスボイスについてはミックスボイスの解説記事で詳しく説明しています。

エッジボイス・デスボイス・シャウトとの違い

高くて鋭い声という点で、エッジボイス・デスボイス・シャウトと混同されることもあります。違いを表にまとめます。

発声特徴ホイッスルとの違い
エッジボイス低く「ア゛ア゛」とプツプツ鳴る声最も低い声区で、正反対の位置にある
デスボイス仮声帯などを使ったうなるような歪んだ声歪み(雑音)が主役。ホイッスルは澄んだ音
シャウト叫ぶように張り上げる強い声地声系の張り上げが多い。高さはホイッスルに届かないことが多い

メタルやロックのハイトーンシャウトの中には、ホイッスル帯域まで届く叫び声もありますが、多くは歪みを伴う別の発声です。エッジボイスについてはエッジボイスの解説記事で紹介しています。

ホイッスルボイスの見分け方

自分の声や歌手の声がホイッスルボイスかどうかの見分け方は、次の3つのチェックが目安になります。

  • 高さ:チューナーアプリで測ってC6前後より上か(女性の場合)
  • 音色:歌声らしい響きが消え、笛・口笛・イルカの鳴き声のように聞こえるか
  • 母音:「ア」「イ」などの母音の区別がほとんどつかなくなっているか

3つがそろっていればホイッスルボイスと考えてよいでしょう。高さがC6に届いていても、まだ歌声らしい響きが残っているなら、それは高いヘッドボイスである可能性が高いです。

ホイッスルボイスの音域|どこから・どこまで出る?

ホイッスルボイスの音域は、一般にC6(hihiC・約1,047Hz)あたりから上とされます。ただし、どこから上をホイッスルと呼ぶかは文献によって幅があり、C6とするもの、D6(約1,175Hz)とするもの、F6以上とするものなどさまざまです。研究では、裏声からホイッスルボイスへの切り替わりがD#5〜D6あたりで起きたという報告もあり、個人差が大きいことがわかっています。

ホイッスルボイスはどこから?音名と周波数の対応

日本のボイトレやカラオケでは、音の高さを「hiA」「hihiC」のような表記で表します。国際式(C4=中央のド)の音名、周波数(ヘルツ)とあわせて、ホイッスルボイス周辺の音をまとめると次のとおりです。

日本式国際式周波数目安
hiCC5約523Hz女性の地声・ミックスの高音
hihiAA5約880Hz裏声の高音。引き笑いの高さ
hihiCC6約1,047Hzホイッスルボイスの入口の目安
hihiFF6約1,397Hz「夜の女王のアリア」の最高音
hihihiAA6約1,760Hzホイッスルで歌われる高さ
hihihiCC7約2,093Hzホイッスルの中でもかなり高い音

hihiA(A5)はまだ裏声の範囲で、ホイッスルボイスと呼ばれるのはおおむねhihiC(C6)から上です。さらにhihihiから始まる音域(A6〜)は、ホイッスルボイスを持つ歌手の中でも限られた人だけが歌に使う高さです。音の周波数は1オクターブ上がるごとに2倍になるため、C7はC6のちょうど2倍の約2,093Hzになります。

ホイッスルボイスはC6付近から上の帯域 ホイッスルボイス 裏声の高音 A5 C6 F6 C7 約1,047Hz 約2,093Hz
裏声の高音(A5前後)の上、C6(約1,047Hz)付近からがホイッスルボイスの帯域の目安

ホイッスルボイスの最低音と最高音

ホイッスルボイスの最低音、つまり出せる音の中で一番低いところは、裏声の上限と重なるC6前後になる人が多いです。練習を積んだ人は、裏声との重なりが広がり、少し低めの音でもホイッスルの音色で出せるようになります。

最高音はさらに個人差が大きく、C7前後まで出せる人もいれば、E6あたりが限界という人もいます。プロの歌手でも、マライアキャリーの「Emotions」のようにG7(約3,136Hz)に達するとされる例がある一方、多くの歌手はA6前後までを歌に使っています。ホイッスルボイスの高さはキー(曲の調)と同じく、無理に上限を追わず、きれいに鳴る範囲を広げていくことが大切です。

男性と女性で音域は違う?

ホイッスルボイスを出せる人は女性に多く、男性の音域のデータは多くありません。女性は声帯が短く薄いため、もともと高い声に向いており、ホイッスルボイスもC6前後から比較的出しやすいとされます。男性のホイッスルボイスは、女性と同じくらいの高さの帯域に出ますが、裏声の上限との間に大きな切れ目ができやすく、出せる人がかなり限られます。男性の出し方は後の章で詳しく扱います。

ギネス記録|世界1高い声はどこまで?

人の声の限界がどこまでかは、ギネス世界記録が一つの目安になります。

  • 男性の最高音:中国の王曉龍(ワン・シャオロン)さんがE8(約5,274Hz)を出し、ギネス世界記録に認定されています(2017年、テレビ番組で達成)。
  • 女性の最も広い声域:ブラジルのジョージア・ブラウンさんが、G2からG10までの声域でギネス世界記録に認定されています(2004年)。

E8はピアノの最高音(C8)よりも高い音で、世界1高い声の記録は人の声の限界を大きく超えているように見えます。ただし、これらは記録のための特殊な発声で、歌の中で使えるホイッスルボイスとは別物と考えてよいでしょう。ネット上では他にも「ギネス級」とされる歌手の話が多く出回っていますが、ギネスの公式記録として確認できないものも少なくありません。

ホイッスルボイスを出せる人|割合・才能・生まれつき

「ホイッスルボイスを出せる人はどれくらいいるの?」「生まれつきの才能がないと無理?」は、最も多い疑問の一つです。結論からいうと、出せる人の割合を示す信頼できる統計は無く、才能だけで決まるものでもありません。体の条件・発声の土台・練習の3つが組み合わさって、出せるかどうかが決まります。

出せる人の割合は?何人に1人?

ネット上では「何人に1人」「プロ歌手でも1%以下」といった数字を見かけますが、これらは調査にもとづく数字ではなく、書き手の推測です。ホイッスルボイスを出せる人の割合を大規模に調べた研究は、現時点では見当たりません。

ただ、傾向として次のことはいえます。

  • 女性や子供のほうが、男性より出せる人が多い
  • 悲鳴のような「気流型」のホイッスルなら、偶然出せる人は意外と多い
  • 音程をコントロールして歌に使えるレベルになると、プロ歌手の中でも限られた人だけになる

つまり、「一瞬それらしい音が出せる人」と「歌として使える人」では数が大きく違います。ホイッスルボイスができる人と聞いてイメージする「歌に使えるレベル」は、確かに少数派で難易度も高いといえます。

生まれつき・才能で決まる部分

ホイッスルボイスに向いているかどうかには、生まれつきの体の条件が関わります。声帯が短く薄い人、声帯を強く引き伸ばせる柔軟さがある人は、もともと高い声が出やすい傾向があります。女性に出せる人が多いのも、男性より声帯が短く薄いためです。

ただし、才能だけで出せるわけではありません。声帯の条件に恵まれていても、裏声がうまく使えなければホイッスルボイスには届きません。反対に、体の条件が平均的でも、裏声を鍛えることで出せるようになった例も多くあります。生まれつきの差は「出しやすさ」の差であって、「出せるかどうか」を完全に決めるものではないと考えるのが現実的です。

出せるかどうかを左右する3つの要素 体の条件 声帯の長さ・厚さ 発声の土台 裏声の安定 練習 感覚と継続 出せる・歌える
生まれつきの体の条件は出しやすさを左右するが、裏声の土台と練習がそろって初めて歌に使えるホイッスルボイスになる

誰でも出せる?練習で出せるようになる人

「ホイッスルボイスは誰でも出せる」と言い切ることはできませんが、練習によって出せるようになる人は少なくありません。特に次のような人は、練習で習得できる可能性が高いでしょう。

  • 裏声(ヘッドボイス)でhihiA(A5)前後まで楽に出せる
  • 悲鳴や叫び声で、とても高い声が出たことがある
  • 高い音を出しても喉が痛くならない

一方で、裏声自体がまだ不安定な人がいきなりホイッスルボイスを目指すと、喉を締めたり息を押しすぎたりして、声を痛める原因になります。まずは裏声とヘッドボイスを安定させ、音域の上限を少しずつ広げていくのが近道です。

子供・小学生・赤ちゃんが高い声を出せる理由

赤ちゃんの泣き声や、子供がはしゃいだときの「キーッ」という声は、驚くほど高いことがあります。子供は大人より声帯が短く小さいため、もともと高い声が出やすいのです。小学生くらいの子供がホイッスルボイスのような超高音を出して周りを驚かせることがあるのは、このためです。

実際に、小学生のうちからホイッスルボイスを歌に取り入れて話題になる子供の歌手もいます。ただし、子供の声帯はまだ成長途中で傷つきやすいため、大声で叫び続けたり、無理に高音を出し続けたりするのは避けましょう。変声期(特に男の子)には声の出し方が大きく変わるので、子供のころ出せたホイッスルボイスが大人になって出せなくなることもあります。

ホイッスルボイスの出し方|5ステップとコツ

ホイッスルボイスの出し方は、一言でいえば「裏声を細く保ったまま上へ伸ばし、音色が笛に変わる地点を探す」ことです。いきなり超高音を狙うのではなく、出しやすい裏声から少しずつ上がっていくのが安全で確実なやり方です。ここでは、初めての人がどうやって出すかを5つのステップで説明します。

ホイッスルボイスを出す5つのステップ 1 喉と体をほぐす 2 小さな裏声で高音へ上がる 3 「キュッ」と細い音を探す 4 息を細く保って1〜2秒伸ばす 5 音程を合わせて上下に動かす
ほぐす→小さな裏声で上がる→細い音を探す→伸ばす→音程をつける、の順で段階的に進める

ステップ1〜2:喉をほぐし、小さな裏声で上がる

まずは首・肩の力を抜き、リップロールやハミングで軽く声を出して喉を温めます。いきなり高音を出すと声帯に負担がかかるので、準備運動は欠かせません。

次に、裏声で「フー」「ウー」と小さな声を出し、サイレンのように低い音から高い音へゆっくり滑らせます。ポイントは音量を小さく保つことです。大きな声で上がろうとすると喉に力が入り、途中で声が詰まります。ささやきより少し大きい程度の声で、自分の裏声の一番上まで上がってみましょう。

ステップ3:音色が細く変わる地点を探す

裏声の上限付近まで来たら、そこからさらに上へ「キュッ」「ピッ」と短く突き抜けるように出してみます。子犬が甘えて鳴くような声、驚いたときの「ヒッ」という声をイメージするとつかみやすい人もいます。

うまくいくと、あるところで声の響きがふっと消え、笛や口笛のような細い音に切り替わります。これがホイッスルボイスの入口です。最初は一瞬しか鳴らなくても問題ありません。母音は「イ」や「ウ」が出しやすいという人が多いですが、「ア」で出しやすい人もいるので、いくつか試して自分に合う母音を探しましょう。

ステップ4〜5:伸ばす・音程をつける

細い音が出たら、今度はそれを1〜2秒伸ばす練習をします。息は強く押し出さず、ストローで細く吹くように一定に保つのがコツです。音量を上げようとすると音が裏声に戻ったり、かすれたりするので、はじめは小さい音量で安定させることを優先します。

伸ばせるようになったら、ピアノアプリやチューナーアプリで音を確認しながら、狙った高さに合わせる練習に進みます。ホイッスルボイスを高くする方法は、この「狙った音を出す」練習の延長です。半音ずつ上げ下げできるようになると、歌の中で使えるコントロールが身についてきます。

出すときの感覚とコツ

ホイッスルボイスが出たときの感覚は人によって表現が違いますが、よく聞かれるのは次のようなものです。

  • 喉ではなく、頭のてっぺんや眉間の奥で鳴っている感じ
  • 声を「出す」というより、細い音が勝手に「鳴っている」感じ
  • 喉はほとんど力が入っておらず、息もあまり使っていない感じ

反対に、喉が締めつけられる感覚や、痛み・イガイガ感があるときは出し方が間違っているサインです。ホイッスルボイスのやり方で最も大切なコツは、力で押し上げず、軽さを保ったまま上がることです。音量や声量はあとから少しずつついてくるので、最初は小さくてもきれいに鳴ることを目標にしましょう。

男性・女性別のホイッスルボイスの出し方

ホイッスルボイスの出し方の基本は男女共通ですが、声帯の大きさが違うため、つまずきやすいポイントが異なります。男性は「裏声からホイッスルへの切れ目」、女性は「ヘッドボイスとの区別」が課題になりやすいです。

男性がホイッスルボイスを出す方法

男性のホイッスルボイスは女性より難しく、出せる男性はかなり少ないのが実情です。男性の声帯は女性より長く厚いため、裏声の上限が低めで、ホイッスルボイスの帯域との間に距離があります。そのため、男性の出し方では次の順番が大切です。

  1. 裏声の上限を広げる:まずは裏声でhiC(C5)〜hihiC(C6)あたりまで楽に出せるようにする
  2. 裏声を細く・小さくする:声量を落とし、息漏れの少ない細い裏声で上限付近を行き来する
  3. 悲鳴の感覚を借りる:裏声の上限から「ヒッ」と短く突き抜けるように出し、笛のような音に変わる地点を探す

男の人が地声を張り上げたまま高音を目指すと、喉を締めて声を痛める原因になります。ホイッスルボイスの出し方で男性が守りたいのは、地声ではなく裏声の延長で上がるということです。

男性のホイッスルボイスの音域と海外の男性歌手

男性がホイッスルボイスを出す場合も、鳴る高さは女性とほぼ同じC6前後から上になります。男性の音域として見ると、普段の話し声より3オクターブ以上高い音です。男のホイッスルボイスは珍しいため、出せる男性歌手はそれだけで注目を集めます。

海外の男性では、ギネス世界記録で男性の最高音(E8)に認定された中国の王曉龍さんや、それ以前に男性の最高音記録を持っていたオーストラリアのアダム・ロペスさんが知られています。カザフスタンの歌手ディマシュさんも超高音で有名ですが、ネット上で語られる最高音はギネスの公式記録ではありません。日本の男性歌手については、後の歌手一覧の章で紹介します。

男性と女性の裏声とホイッスルの距離の違い 女性 裏声 ホイッスル 男性 裏声 ホイッスル 男性は裏声との間に切れ目ができやすい
女性は裏声の上端がホイッスルの帯域に接しやすいが、男性は裏声の上限との間に距離があり、切れ目を埋める練習が要る

女性がホイッスルボイスを出す方法

女性は裏声の上限がもともと高いため、ホイッスルボイスに届きやすい条件がそろっています。女性の出し方で課題になりやすいのは、高いヘッドボイスとホイッスルボイスの区別です。C6付近まで出ていても、音色がまだ歌声らしいなら、それはヘッドボイスの可能性があります。

女性がホイッスルボイスに切り替えるコツは、ヘッドボイスで上限まで上がったら、そこで声量を一段落として響きを細くすることです。音を大きく保ったまま上がろうとすると、切り替わらずに声が詰まります。「声を小さく、細く、軽く」を意識すると、笛のような音色に移りやすくなります。

また、女性は裏声との重なりが広いぶん、ホイッスルボイスを出しているつもりで喉に力が入っていることもあります。録音して音色を聞き比べ、喉が痛くならない範囲で練習を続けましょう。

ホイッスルボイスの練習方法・トレーニング

ホイッスルボイスの練習は、「出す」練習よりも土台づくりの練習が大半を占めます。裏声が安定していないうちに超高音ばかり練習しても、喉を痛めるだけで上達しません。ここでは、毎日のトレーニングメニューと、習得にかかる期間の目安を紹介します。

1回15分のトレーニングメニュー

ホイッスルボイスの練習方法として、次の順番で1回15分ほど行うのがおすすめです。

順番練習目的
1(3分)リップロール・ハミング喉を温め、息を一定に流す
2(3分)裏声のサイレン(低→高→低)裏声の上限を確認し、切れ目をなめらかにする
3(3分)小さな裏声でのロングトーン細い裏声を安定させる
4(3分)ホイッスルの短い発声「キュッ」笛の音色に切り替わる地点を探す
5(3分)ホイッスルでの音程練習狙った高さを出すコントロール

ホイッスルボイスの発声そのものは、1回の練習で合計3〜5分程度に抑えます。超高音は声帯に負担がかかるため、長時間続けるより短い時間を毎日続けるほうが効果的です。

練習は土台づくりから超高音へ順に進める ほぐす サイレン 細い裏声 キュッ 音程 左の3つが土台。超高音は合計3〜5分まで
リップロールなどでほぐし、裏声のサイレンと細い裏声で土台を作ってから、ホイッスルの発声と音程練習に進む

音域を広げるための裏声トレーニング

ホイッスルボイスに届くかどうかは、裏声の上限がどこまで伸びているかに大きく左右されます。音域を広げるには、裏声のサイレン(低い音から高い音へ滑らせる練習)が最も効果的です。「ウー」や「ヒー」で、声がひっくり返らないように上下を往復させましょう。

サイレンで大切なのは、上限に近づいても声量を上げないことです。高くなるほど小さく細い声にしていくと、声帯を引き伸ばす輪状甲状筋が働きやすくなり、少しずつ上限が伸びていきます。裏声の音域を広げる練習は、ホイッスルボイス以外の高音にも効くため、歌全体の余裕が増すメリットもあります。

習得にかかる期間の目安

ホイッスルボイスの習得期間には大きな個人差があります。もともと裏声が高く出る人なら数日で音が鳴ることもありますが、裏声の土台から作る必要がある人は数か月以上かかることも珍しくありません。目安として、次の段階で上達を確認するとよいでしょう。

  1. 一瞬だけ笛のような音が鳴る
  2. 1〜2秒安定して伸ばせる
  3. 狙った音程で出せる
  4. 歌の中で使える(メロディやフェイクに組み込める)

ボイトレ教室のレッスンと動画の活用

独学で練習する場合は、YouTubeなどの動画でホイッスルボイスの解説や実演を見るのも役立ちます。上手な人の音色や口の形を確認し、自分の録音と聞き比べることで、今の音がホイッスルボイスかどうかを判断しやすくなります。

ただ、超高音の発声は間違った出し方に気づきにくく、自己流で喉を痛める人も少なくありません。ボイトレ教室のレッスンで一度プロに出し方を見てもらうと、喉の力みや息の使いすぎをその場で指摘してもらえます。ホイッスルボイスの練習をきっかけに裏声やヘッドボイスが安定し、歌全体の音域が広がる効果も期待できます。

ホイッスルボイスが出ない・出なくなった原因と対策

ホイッスルボイスが出ない・できないときは、原因がいくつかのパターンに分かれます。やみくもに練習量を増やすより、原因を見きわめて対策するほうが早く上達します。

ホイッスルボイスが出ない・できない原因

ホイッスルボイスが出ない原因として多いのは、次の4つです。

原因よくある状態対策
裏声の土台不足裏声がA5前後まで届かない裏声のサイレンで上限を広げる
喉締め上がるほど喉が詰まる声量を落とし、あくびの喉で出す
息の押しすぎスースーとかすれる息を細く一定に保つ
切り替えの怖さ裏声の上限で止まる「キュッ」と短く突き抜ける

特に多いのが喉締めです。高い音を出そうとすると、無意識に喉や首に力が入り、声帯の周りの筋肉が声帯の動きを邪魔してしまいます。喉締めの状態では、いくら練習してもホイッスルボイスには切り替わりません。あくびをするときのように喉の奥を広げ、声量を小さくして出すことを意識しましょう。

出ない原因ごとに直す場所が違う 裏声が届かない サイレンで上限を伸ばす 喉が詰まる 声量を落とす かすれる 息を細く一定に 上限で止まる 短く突き抜ける
届かないなら裏声の上限、詰まるなら声量、かすれるなら息、止まるなら切り替えの思い切りを直す

安定しない・かすれるときの直し方

一瞬は出るのに安定しない、音がかすれるという場合は、息の量が多すぎるか、声帯の閉じ方が弱いことが考えられます。息漏れが多いと、構音型の澄んだ音にならず、スースーとしたかすれた音になります。

対策としては、ホイッスルボイスを出す直前の裏声を「息っぽいファルセット」ではなく「芯のあるヘッドボイス」にすることが効果的です。ヘッドボイスで声帯を適度に閉じたまま上がると、ホイッスルに切り替わったあとも音が安定しやすくなります。また、疲れているときや喉が乾燥しているときも声がかすれやすいので、こまめな水分補給を心がけましょう。

ホイッスルボイスが出なくなった・出せなくなったとき

以前は出せたホイッスルボイスが出なくなった場合は、次のような原因が考えられます。

  • 喉の疲れ・炎症:風邪や歌いすぎのあとは声帯がむくみ、高い音ほど出にくくなる
  • 練習不足:ホイッスルボイスは使わないと感覚が鈍りやすい
  • 体の変化:年齢や変声期、ホルモンの変化で声帯の状態が変わることがある

喉の疲れが原因なら、数日しっかり休むと戻ることが多いです。無理に出そうとすると、声帯を傷めて回復が遅れます。声がれや痛みが2週間以上続く場合は、耳鼻咽喉科(音声外来)を受診してください。

喉への負担と痛いときの注意点

ホイッスルボイスは声帯を強く引き伸ばす発声なので、喉への負担がゼロではありません。正しく出せていれば喉の痛みはほとんど出ませんが、出し方が間違っていると喉が痛い、イガイガする、声がかれるといった症状が出ます。練習中に喉が痛いと感じたら、その日はすぐに中止しましょう。

また、ホイッスルボイスはとても高く鋭い音なので、近くで聞くと「うるさい」「耳が痛い」と感じる人もいます。自宅で練習するときは音量を小さく保ち、家族や近所への配慮も忘れないようにしましょう。カラオケボックスやスタジオを練習場所にするのも一つの方法です。

ホイッスルボイスの歌での使い方|ジャンル別

ホイッスルボイスは、歌の中でずっと使い続ける声ではありません。曲のここぞという場面で一瞬使うことで、強い印象を残すのが基本的な使い方です。ここでは、曲の中で使われる場所と、ジャンルごとの使われ方を紹介します。

曲の中でホイッスルボイスを使う場所

ホイッスルボイスを使う曲では、次のような場所に入ることが多いです。

  • イントロ・アウトロ:曲の始まりや終わりに、メロディとは別の飾りとして入れる
  • サビの終わり・大サビ:最も盛り上がる場面で、メロディの頂点として使う
  • フェイク:メロディを崩して即興的に歌うフェイクの中で、一瞬だけ超高音に跳ね上がる

フェイクの中でホイッスルボイスを使うと、細かい音の動きと超高音を組み合わせた華やかな表現になります。フェイクの基本はフェイクの解説記事で紹介しています。また、ホイッスルボイスに軽いビブラートをかけるのは難易度が高い技術で、上級者の見せどころになります。

ホイッスルボイスは曲の要所で一瞬使う イントロ Aメロ Bメロ サビ終わり アウトロ ★ ★ ★ ★の位置で短く使い、印象を残す
ホイッスルボイスはイントロ・サビ終わり・アウトロなど、曲の要所で短く使われることが多い

洋楽・邦楽(R&B・ポップス)での使い方

ホイッスルボイスが最もよく使われるのは、洋楽のR&Bやポップスです。1970年代から90年代にかけてのアメリカの女性歌手が、バラードの盛り上がりやフェイクの中でホイッスルボイスを使い、広く知られるようになりました。邦楽では、R&Bの影響を受けた女性歌手が、イントロやアウトロの飾りとして使う例が多く見られます。

クラシック・オペラ・ミュージカルでの使い方

クラシックやオペラの世界では、コロラトゥーラ・ソプラノと呼ばれる高音の得意なソプラノ歌手が、非常に高い音を歌います。代表的なのがモーツァルトのオペラ「魔笛」の「夜の女王のアリア」で、最高音はF6に達します。この高さはホイッスルボイスの帯域の入口にあたりますが、オペラでは楽器のような音色ではなく、響きのある声として歌われるのが特徴です。

ミュージカルでは、ホイッスルボイスが使われる場面は多くありません。ミュージカルは歌詞を客席に届けることが重視され、母音の区別がつきにくいホイッスルボイスとは相性があまりよくないためです。

K-POP・アイドル・ボカロ・歌い手での使い方

近年はK-POPの世界で、ケーポップアイドルがホイッスルボイスを披露して話題になることが増えました。グループの中で高音を担当するメンバーが、サビの終わりやライブの見せ場で超高音を響かせる使い方が一般的です。日本のアイドルグループでも、ホイッスルボイスを持つメンバーが注目を集めることがあります。

ボカロ曲は人間の音域を超えるメロディで作られることがあり、「歌ってみた」で歌い手がホイッスルボイスを使って原曲の高さに挑む例も見られます。また、アニメの声優が悲鳴や叫び声を演じるときに、この帯域まで声が届くこともあります。

メタル・バンドでの超高音

メタルやロックバンドのボーカルは、ハイトーンのシャウトで超高音を出すことがあります。こうした叫び声は歪み(ディストーション)を含むことが多く、澄んだ音色のホイッスルボイスとは別の発声として区別されます。ただし、ボーカリストによってはシャウトの延長でホイッスル帯域まで届く人もおり、バンドのライブで超高音の悲鳴のような声が話題になることもあります。

ホイッスルボイスを使う歌手・アーティスト一覧

ホイッスルボイスを出せる歌手は、海外・日本ともに多くありません。ここでは、ホイッスルボイスの使い手として知られる有名な歌手・アーティストを、海外、日本人、K-POPの順に紹介します。なお、ネット上には「この歌手もホイッスルボイスが出せる」という情報が大量にありますが、根拠のはっきりしないものも多いため、確認できた情報とファンの間での評判を分けて紹介します。

海外の女性歌手(アメリカなど)

ホイッスルボイスを世界的に広めたのは、アメリカのR&B・ポップスの女性歌手たちです。外国人歌手の中でも、特に有名なのは次の人たちです。

歌手国ホイッスルボイスが聴ける曲
ミニーリパートンアメリカLovin' You
マライアキャリーアメリカVision of Love/Emotions
アリアナグランデアメリカImagine/Moonlight

ミニーリパートンは、ホイッスルボイスをポップスのヒット曲で広く知らしめた最初の歌手とされ、ホイッスルボイスの元祖として名前が挙がります。代表曲「Lovin' You」(日本では「ラビンユー」とも)の超高音は今も語り継がれています。

マライアキャリーは、ホイッスルボイスの代名詞といえるアメリカの歌手です。デビュー曲「Vision of Love」や「Emotions」でホイッスルボイスを使い、「Emotions」ではG7に達するとされます。マライアの声にイルカが反応したという話がネットで広まっていますが、確かな裏付けは見当たりません。ホイッスルボイスが「イルカの声」にたとえられることから生まれた話と考えられます。

アリアナグランデは、マライアキャリーの影響を受けた現代のアメリカの歌手で、「Imagine」や「Moonlight」などでホイッスルボイスを聴くことができます。アリアナの曲はホイッスルボイスを初めて聴く人にもおすすめです。

なお、ホイットニーヒューストンやビヨンセは高音の歌唱力で名高いアメリカの歌手ですが、ホイッスルボイスを代表的に使う歌手とはいえません。ビヨンセの「Love On Top」は転調を重ねて高くなる曲として有名ですが、地声や裏声で歌われており、ホイッスルボイスの曲ではありません。

日本人の女性歌手

日本人歌手でホイッスルボイスを使う人として知られるのは、次の女性歌手たちです。

歌手ホイッスルボイスが聴ける場面
MISIA「つつみ込むように…」のイントロ・アウトロ
吉田美和(DREAMS COME TRUE)ライブなどでの歌唱
清水美依紗「High Five」(最高音F6)
Ado「DIGNITY」のテレビ歌唱(F#6前後)
西田汐里(BEYOOOOONDS)グループの楽曲のホイッスルパート

MISIAは日本を代表するホイッスルボイスの使い手で、デビュー曲「つつみ込むように…」のイントロとアウトロで響く超高音は、多くの人が「日本のホイッスルボイス」と聞いて最初に思い浮かべる音です。吉田美和さんは、ドリカムのライブなどでホイッスルボイスを披露することで知られています。

清水美依紗さんは「High Five」でF6のホイッスルボイスを歌っており、Adoさんもテレビ番組での「DIGNITY」の歌唱でホイッスルボイスを披露して話題になりました。ハロー!プロジェクトのグループBEYOOOOONDSの西田汐里さんは、作曲家に直接お願いして楽曲にホイッスルボイスのパートを入れてもらったとインタビューで語っています。ほかに、ガールズグループHANAのCHIKA(チカ)さんは、デビュー曲「ROSE」でのホイッスルボイスが話題になりました(「HANAちか」と表記されることもあります)。小学生シンガーの半田なないさんは、「ランドセルシンガー」として子供のころからホイッスルボイスを披露しています。

このほか、平原綾香さんや布施明さんも、ボイトレ系の記事でホイッスルボイス(フラジオレット)の使い手として名前が挙がることがあります。

日本人の男性歌手・歌い手

男性のホイッスルボイスはとても珍しく、日本人の男性歌手で公式音源から明確に確認できる例は多くありません。次の人たちは、ファンの間でホイッスルボイスのような超高音を出すとして名前が挙がることが多い男性です。

  • 大森元貴さん(Mrs. GREEN APPLE・ミセス)
  • 赤西仁さん(元KAT-TUN)
  • 京さん(DIR EN GREY・ディルアングレイ)
  • 命様(ジグザグ)
  • まふまふさん、しゃけみーさん(歌い手)
  • 橋本将生さん(コンサートでの超高音がSNSで話題)

これらはライブ映像やファンの投稿で話題になったもので、どの曲のどこでホイッスルボイスを使っているかがはっきりしないものも含まれます。聴き比べるときは、第4章の見分け方(高さ・音色・母音)を参考にしてください。

K-POPのアイドル(韓国)

韓国のK-POPアイドルにも、ホイッスルボイスを持つメンバーがいます。

  • ソン・ハヨン(fromis_9):「DM」でA6のホイッスルボイスを歌っている
  • アヒョン(BABYMONSTER):「We Go Up」での超高音がファンの間で話題。ベビモン、ベイビーモンスターとも呼ばれるグループの高音担当
  • ニナ(NiziU):「Memories」などでの超高音がファンの間で話題(NiziUは日本人メンバーで構成されたグループ)

TWICEについては、「Rainbow」にA6の超高音パートがあり、チェヨンさんのホイッスルボイスとして紹介されることがあります。しかし、このパートを誰が歌っているかは情報が割れており、チェヨンさんと断定できる根拠は見当たりません。チェヨンさんのホイッスルボイスは、ライブ映像がSNSで話題になった程度にとどまります。

ホイッスルボイスと一緒に名前が挙がるが確認できない歌手

次の歌手は「ホイッスルボイス」と合わせて検索されることが多いものの、ホイッスルボイスを使っていると確認できる資料は見当たりませんでした。

  • 宇多田ヒカルさん、高橋洋子さん、広瀬香美さん、ちゃんみなさん
  • ジェジュンさん、歌い手のなるせさん
  • 藤原聡さん(Official髭男dism):高音はミックスボイスが中心
  • 竹中雄大さん(Novelbright):口笛(ホイッスル)の世界大会で優勝した経歴があり、「ホイッスル」つながりで混同されやすい。口笛はホイッスルボイスとは別物

いずれも高音の歌唱で評価の高い歌手ですが、「高音が出る=ホイッスルボイス」ではありません。ホイッスルボイスが上手い人を探すときは、音色が笛のように変わっているかどうかに注目して聴いてみましょう。

ホイッスルボイスが聴ける有名な曲・練習曲

ホイッスルボイスの音色をつかむには、実際に使われている曲を聴くのがいちばんの近道です。ここでは、ホイッスルボイスが聴ける有名な曲を洋楽・日本の曲・映画に分けて紹介し、最後に練習曲の選び方をまとめます。

洋楽の有名な曲(マライアキャリー、アリアナグランデなど)

曲名歌手聴きどころ
Lovin' You(ラビンユー)ミニーリパートンホイッスルボイスの元祖といわれる名曲
Vision of Loveマライアキャリーデビュー曲。終盤の超高音
EmotionsマライアキャリーG7に達するとされる高さ
Imagineアリアナグランデ終盤のホイッスルボイス
Moonlightアリアナグランデ柔らかいホイッスルの使い方

マライアキャリーの曲の中でも「Emotions」は、ホイッスルボイスを曲全体の見せ場として使った代表例です。アリアナグランデの曲は、ホイッスルボイスを強く張らずに柔らかく響かせる使い方が多く、構音型の澄んだ音色の参考になります。

日本の曲(MISIAなど)

日本の曲でホイッスルボイスが聴ける代表曲は、MISIAの「つつみ込むように…」です。「包み込むように」と表記されることもありますが、正式な曲名はひらがなの「つつみ込むように…」です。イントロとアウトロで響く超高音は、日本の音楽シーンにホイッスルボイスを印象づけました。MISIAのホイッスルボイスの高さは、最高音でA6前後(hihihiA付近)とされ、情報源によって半音ほどの差があります。

ほかにも、清水美依紗さんの「High Five」、Adoさんがテレビで披露した「DIGNITY」などで、日本人歌手のホイッスルボイスを聴くことができます。MISIAの曲を中心に、日本の曲を聴き比べてみると、洋楽とは違う使い方の工夫も見えてきます。

K-POPの曲|TWICE「Rainbow」とチェヨンの曲名

K-POPでは、fromis_9の「DM」でソン・ハヨンさんのA6のホイッスルボイスが聴けます。TWICEの「Rainbow」にもA6の超高音パートがあり、「TWICEのチェヨンのホイッスルボイスの曲名は?」という形で検索されることが多い曲です。ただし前の章で触れたとおり、このパートの担当メンバーは情報が割れており、チェヨンさんの曲と断定できる資料は見当たりません。

映画・オペラで聴けるホイッスルボイス

映画では、「天使にラブソングを2」(原題:Sister Act 2)の「Oh Happy Day」で、当時10代だったライアン・トビーさんが歌う超高音が、ホイッスルボイスの例としてよく挙げられます。また、映画「タイタニック」の主題歌「My Heart Will Go On」は原曲にホイッスルボイスはありませんが、ホイッスルボイスで歌ってみた動画が多く投稿されている定番曲です。

オペラでは、先に紹介した「魔笛」の「夜の女王のアリア」が、F6に達する超高音のアリアとして有名です。エアロスミスの「Dream On(ドリームオン)」は終盤の叫ぶような超高音で知られていますが、これはシャウトであり、ホイッスルボイスの曲として挙げる根拠は見当たりません。

ホイッスルボイスの練習曲の選び方

練習曲は、いきなり難しい曲を選ぶより、ホイッスルボイスを使う部分が短く、前後に休みがある曲がおすすめです。

練習曲難易度練習のポイント
つつみ込むように…(MISIA)中イントロの超高音だけを真似する
Lovin' You(ミニーリパートン)中柔らかく短いホイッスルを合わせる
Moonlight(アリアナグランデ)中〜高小さな音量で澄んだ音色を保つ
Emotions(マライアキャリー)高上級者向け。音程の正確さに挑戦

練習曲ではホイッスルボイスの部分だけを取り出して、キーを下げたり、ゆっくり再生したりしながら合わせると効率的です。ホイッスルボイスを使う曲を歌うときは、他の部分で喉を疲れさせないよう、サビ以外は力を抜いて歌うことも大切です。

よくある質問

ホイッスルボイスが出せるのはすごいこと?
音程をコントロールして歌に使えるレベルなら、プロ歌手の中でも限られた人だけの技術なので、すごいことだといえます。一方、悲鳴のような一瞬の超高音なら出せる人は意外と多く、有名人や歌手でなくても練習で近づける技術です。
ホイッスルボイスの歌い方は普通の高音と何が違う?
普通の高音は地声やミックスボイス、裏声で歌いますが、ホイッスルボイスはその上の声区で、音色が笛のように細く変わります。歌い方としては、声量を落として軽く細く出すことが最大の違いです。力で押し上げる高音の歌い方とは逆の発想になります。
練習して喉痛いときは続けてもいい?
続けてはいけません。喉が痛いのは出し方に無理があるサインなので、その日の練習は中止して休みましょう。痛みや声がれが2週間以上続く場合は、耳鼻咽喉科を受診してください。
ホイッスルボイスの練習で音域広げることはできる?
できます。ホイッスルボイスの練習の中心は裏声のサイレンなど裏声の上限を伸ばすトレーニングなので、ホイッスルボイスが出るようになる前から、裏声やヘッドボイスの音域が広がる効果が期待できます。
何歳からでも習得できる?
年齢に上限があるわけではありませんが、声帯の柔軟さは年齢とともに変わるため、若いほど習得しやすい傾向はあります。大人になってから練習を始めて出せるようになった人もいるので、まずは裏声の安定から始めてみましょう。

まとめ

ホイッスルボイスは、人の声区の中で最も高い帯域を受け持つ、笛のような音色の声です。この記事の要点をまとめます。

  • ホイッスルボイスは裏声よりさらに上の声区で、おおむねC6(約1,047Hz)あたりから上が目安
  • 仕組みはまだ研究途中だが、声帯を強く引き伸ばし、小さな振幅で振動させていると考えられている
  • 澄んだ音の構音型、息っぽい気流型、吸いながら出す吸気型などの種類がある
  • 出せる人の割合の統計は無く、生まれつきの条件だけでなく裏声の土台と練習で決まる
  • 出し方のコツは、声量を落として軽く細く上がり、笛の音色に切り替わる地点を探すこと
  • 喉が痛いときは中止し、痛みが続くなら耳鼻咽喉科へ

ホイッスルボイスは独学でも練習できますが、超高音は間違った出し方に自分では気づきにくい発声です。喉を痛めずに裏声の土台から積み上げたいなら、ボイストレーニングの教室でプロに一度声を聞いてもらうのが確実です。ONE MORE SINGのボイトレ教室検索では、都道府県・市区町村・駅から近くの教室を探せます。体験レッスンで、今の裏声がホイッスルボイスに届くかどうかを相談してみてはいかがでしょうか。